面倒ごとがやってきた
季節は巡り、桃の花も盛りを過ぎました。
いつものように水神様と碁を打っていると、外が賑やかになってきました。
エルフの御一行様が、水神様の祠に到着したようです。
護衛の武士は100人くらいですが、今回は歩兵部隊を引き連れています。
「ほほほ。これだけの軍勢を見るのも久々でおじゃる」
「まるで戦争ですね」
水神様は呑気に笑っているけど、彼らにしてみれば、思い切った派兵です。
里の人口は数百人… でしたよね。
「無頭鬼を相手にするは、不安が残るのでおじゃろうな」
「……そうなのですか?」
「そういうものなのでおじゃる」
おや、馬車から誰か出てきました。
「ふむ、あれは妹姫でおじゃるぞ」
「あれが正式の巫女装束ですか。なかなか重そうですね」
白い上着に緋色のロングスカート。いわゆる「今風」というやつですか。
カラーリングは昔から決まっているらしいのですが、使っている生地はずいぶんと厚手ですね。そこに鎧とは……
ガントレットと胸当ては金属製のものですね、ロングブーツもですか。
肩を守るショルダーキャップには… 大きなスパイクが付いていますね。
「かなりヒャッハーな装備ですこと」
「……祠に入る前には外すであろ。麿は巫女と話をしてくるのでおじゃる」
話が終わるまでは自由時間ですね。
時間は…… そうですか、じゃあ、家に帰ってお昼ご飯を食べてきます。
と、いうわけで。
「ただいま、アーロイス」
「お帰りなさいまセ」
亜空間要塞に転移すると、エントランスにある青い宝玉に声をかけます。
これは、洞窟の中に置かれていたものですが、台座ごと持ってきました。
結果としては、それが正しい判断だったようです。
「どう、様子は?」
昨夜からエルフ族の若者が、歩き回っています。
何かを探しているようなのですが……
「捕獲したイノブタを解体していた場所に集まったようでス」
「ああ、あそこね」
狩ったイノブタを洞窟まで運んでから解体するのは面倒です。
どこか場所を決めて、解体作業をすれば、色々と手間が省けます。
結局、必要なのはお肉だけですからね。
「最終目的地は、この洞窟だとしたら、目的は何だと思う?」
「…はやく遊びに来て欲しいでス」
「何事も無いのが一番だけなんだけどね」
こうなったら偵察ロボを使いますか。
手のひらに乗るくらいの小さなものですが、イノブタの毛皮をかぶせてあるのであまり目立たないでしょう。8本の足でもしゃもしゃと歩き回る姿は、見ていて可愛いものがあります。
「そう言えば地下要塞の工事はどんな感じ?」
「6層目の工事の最中でス」
要塞と言いますが、通路と部屋を組み合わせただけの単純なものです。
ただし壁の厚さは1メートルはありますし、基本的に魔法は使えない仕様です。
「……こうしてみると、要塞というのもおかしいわね」
「ダンジョンにしましょウ」
この青い球体は、洞窟に転送された時に見つけたものです。
なんと、正体はダンジョンコアでした。
何となく興味をひかれたので、エントランスに飾っておいたのですが、いつの間にか覚醒していて、私をダンジョンマスターとして認識しちゃったんですね。
もちろん、ダンジョンから出られないという呪いは無効化されています。
呪いをかけるのは、ダンジョンコアの独占欲ゆえです。
ダンジョンマスターと、いつでも一緒に居たいという本能的な欲求ですね。
最初に見た者をマスターにした事などは……
まるでヒヨコですね。
ふう、伏線をひとつ回収できました。
読者の皆様は察していたと思いますけど。




