ゆるりと流れる時間
それから水神様と話をする事になりました。
長くなりそうなので、ストレージから敷物を出してのお茶会の準備をします。
「ほほほ、麗しいめのこでおじゃったか」
礼儀として、マスクは外しています。
見た目については…… 背中までのさらさら黒髪で、瞳の色はとび色です。
水神様はこの容貌を褒めてくれましたが、ベースはヘルマのものです。
実は創造神様に、少しだけ見た目を変更してもらいましたけど。
遺伝情報は、一本の糸のように見えますけれど、端から順番に読み出すだけの単純なデータベースではないのです。遺伝子として折りたたまれていく過程で、3次元的な分子回路が造られ、初めて情報として機能するのです。
だから、遺伝情報の大きな変更には、リスクがあります。
最悪の場合、キマイラを通り越してクリーチャーになるそうです。
ヘルマの色違いというのも業腹ですが、リスクは背負いたくありません。
つか、クリーチャーは嫌です。
しゃかしゃかしゃかしゃか……
抹茶は美味しく飲もうとすれば、とても手間がかかりますね。
特にお湯の温度は、とても大切な要素です。
味もそうですが、この手のものは香気を楽しむものですからね。
ふと外を見れば、梅の花が満開です。
「粗茶ですが……」
「ほほほ。茶を嗜むとはの」
水神様は、時間をかけて茶を味わっています。
「……迷いのない、素直な茶であるの」
「なにぶん初めての事ですから、稚拙なものですが」
「なんのなんの。これはこれで良きものでおじゃる」
何かを人に振る舞うのは、これが初めてです。
それがまさか現地神にお茶を出す事になるとは夢にも思ってもいませんでした。
しかし、運が良い事に、それなりに評価してもらえたようです。
再び静かな時が流れます。
ふと、水神様が口を開きました。
「……そなたが麿の治める地に現れたのでの。相手をする事にしたのである」
「そうなのですか」
やっぱり空間転移は探知されていましたか。
これが神々が仕掛けたゲームだったら、今頃はこうしていませんでしたね。
創造神の好意というのは本当の事だったのでしょう。
「その後に痕跡なく界渡りをしたのであろ? 転移であれば、どこに行ったのかは追いかける事が出来るゆえにの」
「界渡りは追えない、ですか?」
「渡ってきた者がどこに「出入りした」程度はわかるのでおじゃる。少なくとも麿には、の?」
水神様は想像していた以上にハイスペックですね。
これで狭い地域を守護するだけの神様なのですよね。
それにしても呑気なことで。
「もしも私が邪悪な存在だったらどーするつもりだったんですか」
「ほほほほほ。そうであれば刺し違えてでも滅するのでおじゃる」
「またまた過激な事を…」
「それがこの地を守護する麿の役目であるからの」
再び、時はゆるり、と流れていきます。
さらさらと吹き渡る風が、春の気配を運び。
うららかな陽ざしは、あまりにも心地よく。
水神様の口調はうざい。
「そうそう。今更でおじゃるが」
「なんでしょう」
「そなたを何と呼べばよいかのう」
……たしかに。
ちゃんとした自己紹介はまだでしたね。
「トト=ナギ・カザマ。そう名乗るつもりです」
「ほほ、あれだけの戦働きをして、賢者とは。奇特な事でおじゃる」
「いけませんか?」
「いやいや、それはそれで善きことでおじゃるよ」
水神様は相好をくずした。
こうしてみると、なかなかのイケメンなんだけど。
あまりにもおじゃる言葉が古風過ぎて。
「カザマ家は旧い系図。血脈も絶えて久しいの。あとは… ふむ… トトの名は伏せよ。
この辺りでの名乗りは、その程度で良いのでおじゃる」
ナギ・カザマ…… こちら風にすれば風間… 凪、ですか。
悪くないですね。
これを投稿したのは12月25日。
というわけで、神様が出てくるお話にしてみたのですが……
やっぱり、なんか、こう……




