お出かけは中止です
大量の魔晶石をダンジョンに運び込んでから数日が過ぎました。
数日前に川が氾濫したせいで、コジマの森のあたりが大変なことになりました。
「うわ…… こりゃ、ダメですね」
思わぬところで弱点が見つかったものです。今の多脚戦車では湿地や泥沼のような場所で動き回ることはできません。
多脚戦車の弱点を見抜かれてしまいましたか。
そして、もうひとつ。
街道からそう遠くないあたりに無数の監視哨が作られています。
前に街道沿いに監視哨を作った人物が作り上げたものと考えて良さそうです。
間違いなく多脚戦車を警戒しての事でしょう。
湿地帯を突破しても、攻撃を受ければひとたまりもありません。
自由に動き回れない多脚戦車など射的の的でしかありません。
残念ですが、コジマの森で魔物狩りをするどころではなくなりました。
「むう、魔石は諦めましょう。撤退しますよ」
『なぎ、なぎ、お出かけ終わり?』
この様子では、モダテの里には、しばらく行かない方がいいかも。
里の皆さんに迷惑がかかりそうですからね。
それにしても、王国の上層部は何を考えているのでしょう。
たった1両の多脚戦車に御大層な防衛線を構築したものです。
「当分はモダテの里には行かない方が良いですね。そうなると……」
『なぎ、なぎ、別のところにお出かけするノ?』
「それなのですが……」
水神様の祠にはこの前行ってきましたし。あそこは頻繁に出入りするような場所でもありません。行けば行ったで水神様が舞い上がるだけです。
爬虫人類の皆さんは、多脚戦車の美しさを理解してくれません。
私には、わざわざ人を不快にさせる趣味はありませんからね。
「……どこに行きましょうかね」
『なぎ、なぎ、山のぼりをしよウ!』
「あの山を越えてヤスト平原に、ですか?」
『だめかナ?』
ヤスト平原に進出するにはまだまだ力不足です。
主力として考えていた多脚戦車が使えないのです。
あせらず、急がず、ダンジョンを伸ばしていきましょう。
幸いな事に時間だけは充分にあるのですから。
「……とりあえずダンジョンに帰りますね」
『はぁい。お風呂の準備をしておくヨ』
亜空間要塞も、内部地図を見ながら少しづつ探検をしています。
どうやら原型となったものは、星間空間で運用する機動要塞のようですね。
全長2000メートルクラスの宇宙船を整備することが出来るドックがいくつか見つかりました。
工場区画の高い生産能力を考えると、なんとなく納得できるものがあります。
と、まあ、要塞の探検もいいですが……
とりあえずお風呂に入りましょう。あとはアーロイスを相手にのんべんだらりと駄目人間ごっこをするのも良いかもしれません。
とりとめのない事を考えながら、お風呂でゆだって……
この前のクッションに寝転んでいます。
「なんか、やる事が溜まってきましたねぇ……」
モダテの里と水神様の祠の防衛力を上げるための埴輪と石灯籠の量産。
多脚戦車の改良と、ヤスト平原までのトンネル作り。
当然の事ですがトンネルはダンジョン化しますよ。
そして……
「もう少しで潜水艦も完成するのでした」
ダンジョンの最深部、地下500メートルの空間には地底湖があります。
その隣に潜水艦の建造用のドックがあります。
船体はほとんど出来上がって、今は中の機械を取り付けている最中です。
完成させたら…… しっ、しまったあ!
「……潜水艦を作ることばかり考えて、どこから出すか考えていませんでした」
『なぎ、なぎ、おふねは輸送機で運ぶんでしョ?』
「あの洞窟から出せるサイズではないのよ」
さすがに大きすぎて空間転移は無理です。
手持ちの輸送機では船体が重すぎて持ち上げる事すら出来ません。
組み立ても終わろうとしているのに、分解するのも嫌ですね。
はてさて、どうしたものやら。
ううう、つい勢いで潜水艦を登場させてしまいました。
名前だけは決まっているのですけれど……




