ラジコンロボットがいっぱい
ザーラックとソルナックが居なくなってしばらく経ちました。
あたりに人影はなし。
念のために各種センサーであたりをサーチ。
「武士団の皆さんは、街道に出たようですね」
『なぎ、なぎ、確かめるの、終わったノ?』
あれだけの大物が護衛も無しに、こんな所まで来るはずがありません。
かならず護衛を付けてくると思っていましたよ。
このあたりにいる生き物はヨツメドリくらいのものです。
ようやく20羽を超えましたね。餌付けの成果が出てきたようです。
「もう大丈夫のようですね。今のうちに多脚戦車を片付けてしまいましょう」
『そうしましょウ!』
背後の岩壁が、かすかな機械音と共に地面の中に吸い込まれていきます。
呼び戻した輸送機を使って、多脚戦車を洞窟の中に運び込めば、自動装置が格納庫まで運び込んでくれます。
ここはすでにダンジョンの一部なのです。
だから、侵入者に対する備えはありますよ。
たとえば、この洞窟と格納庫をつなぐ通路を気密区画にした事でしょうか。
あとは通路をいくつかの装甲扉で仕切った事ですね。
『格納庫に着いたヨ』
「はい、ご苦労様でした」
気密区画にしたのは、空気の成分を変える事が出来るようにしたからです。
ダンジョンのトラップには毒ガスや酸を放出するものや、油をまいて火を付けるようなものがありますからね。
それらをコントロールする機能を利用したのです。
「じゃあ、空気の成分を変更してちょうだい」
『はーイ』
この星に暮らす生物は酸素なしで生きてはいられません。
たとえドラゴンでも、この宿命からは逃れる事は出来ないのです。
だから、大気中に含まれている酸素を、別のものに変更してしまったら?
『たんすぅわぁあぁぁん、ギャ~ス!』
アーロイスのする事は、なんとなく微笑ましいですね。
まあ、いいでしょう。
つまりは、こういう事です。
地上に住んでいる生物はすべて酸素呼吸生物なのです。
空気から酸素を取り除く、もしくは別のものに作り替えてしまったら?
ダンジョンの機能を使えば、こんな事も出来るのです。
「じゃあ、帰りましょうか」
空気を作り替えたら、亜空間要塞に帰るだけです。
ああ、その前にダンジョンに寄っていきますか。
ダンジョンマスターの権能を使えば、移動は簡単です。
「……どうしてこうなった?」
この半月というもの、小屋の改築やら多脚戦車の試運転で行くことも出来なかったラジコン部屋に行ってみたのですが。
かなり様子が変わっていました。
「多脚戦車がたくさんありますね」
『なぎ、なぎ、ラジコンロボットも面白いヨ』
ロボットは、だいたい私の肩くらいの大きさですかね。
よくもまあと思うくらいに細かい所まで作り込まれています。
それにしても…… どうやったら3台同時に動かせるんでしょう。
それも、別々の動きをしているのです。
『なぎ、なぎ、可愛いでしョ?』
別々に動いていたロボットが行進を始めましたよ。
今度は横一列に並んで…… ラジヲ体操ですか。それも第4体操を?
あの究極の運動能力を必要とするやつです。
「……いつの間に出来るようになったのよ」
『なぎ、なぎ、いっぱい練習したんだヨ。じょうずでしョ?』
いや…… うん。
上手と言えば上手ですよ。とっても良く出来ていますとも。
ダンジョンコアは、決して眠りません。
暇な時間はすべて練習に費やしたのでしょう。
多脚戦車の運転が上手だったのも頷けます。
小さなトライポッドの群れがマスゲームをしている風景。
なんかカワイイというか……
やっぱりシュールですね。(笑)




