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ナギと神々の邂逅

 板前さんも、同じ献立が続き過ぎるのはヤバいと思ったのでしょうか。

 朝御飯は普通に炊いたご飯とお味噌汁。そしてからからに炒めた納豆!

 ちなみにお昼ご飯はチャーハンだそうです。


「……これが続くわけですか」

「そうね。毎年の事とはいえ、この時期はこんなものよ」


 こうしてクラウゼルさん達の食事風景を見ていると、穀物を主食に出来る事の幸せというのは、私だけのささやかなもの… なのかも知れませんね。

 ちょっと雰囲気を変えましょうか。


「そう言えば… 大門の近くに、新しいお店が出来たようですね」

「白い丸猫の看板がかかっているとこ?」

「ええ、前に来た時にはお菓子屋さんだったような気がしたのですけど」


 さすがはカロリーナ。

 情報収集は欠かしていませんね。


「三両屋のことでしょ? けっこう可愛い小物を売っているわよ、あそこ」

「そうですか、じゃあ行ってみましょうかね」

「可愛い小物がいっぱいあるわよ。けっこう安いし」


 午後からクラウゼルさんと南の森にある水産加工場の視察に行く事になっていますから、その前に髪飾りのひとつも買おうかと思ったのです。


 ……というわけで、さっそく来てしまいました。

 いつもの通りに、カロリーナが一緒です。


「……なるほど、これは目移りしますね」

「でしょでしょ? これなんかどう?」


 たかが髪飾り。されど髪飾り、ですね。

 エルフの皆さん、実に高度な木工技術を持っているのですね。

 どれもこれも実に細かな細工がされています。


「ここまでくると、身につけるのが勿体ないですよ」

「大した細工ではありませんよ。これなんか、ほら……」


 おぉおお? 

 店員さんが勧めてくれたものには、小指ほどの幅の中にヨツメドリ(キョロン)が3羽も彫られていますよ?

 ヨツメドリ(キョロン)は腰くらいの大きさの鳥なのですが、目が4つもある飛ばない鳥です。人懐っこい生き物なのですが、意外と獰猛です。


「さすがに、お値段が高そうですね」

「いいえぇ、1分銀貨を1枚でのご紹介です」

「むうぅ…… お安いですが、ちょっと悩みますね」

「みめ様、お楽しみのところ申し訳ありませんが……」


 ひとりの武士が店の中に入ると、私に声をかけてきた。

 ええ? 猫神が来た?


「ナギ?」

「非常に、まずいですね」


 やはり諦めてはいませんでしたか。

 いくらなんでも街中で仕掛けてくるとは思いませんが……


「ナギ、基本計画その1で行くわよ」


 カロリーナは私を逃がす事に決めたみたい。

 こうなる事は予想していたので、前々からどう対処したらいいかを考えていたのですが、計画その1の場合は誰かが囮になるという事です。


「匂い袋をお貸しくだされ。あとは私めが」

「与作さん…… 怪我だけは、絶対に駄目ですからね」

「なぁに、うまくやりますよ」

「カロリーナ、あとはお願いするわね」


 残念ながら悩むのはお終いです。

 髪飾りを店員に返して、身につけていた匂い袋は与作さんに渡しました。

 彼は、これを持って町はずれから南の林に移動するでしょう。

 そして私は洞窟まで一気に転移する事になっています。


「ふぅ、無事に戻れましたか……」


 スキンスーツの胸元についた宝玉の色が黄緑色になっています。

 咄嗟のことだったので、転移には宝玉に蓄えられたエネルギーを使ったのです。

 それも空間振動ダンパーの全力で動かした上での転移でしたからね。


 洞窟に着くと、そのまま亜空間要塞に戻りました。

 ……さすがにお店の中からの転移には気を使います。


 あとは…

 ちょっと不謹慎ですが、匂い袋が無事だと良いのですが……


 あれはディノイドが苦労して届けてくれたものなのです。


猫神が追い付いたようですね。

里の皆さんは、水神様の思惑通りにナギをかくまう事に決めたようです。

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