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闇に光る目

 まずい事になりました。

 闇色のオーラに包まれたカロリーナは自我を失っています。

 このままでは……


「腹巻、とってよぉおお!」


 うわ… なんてスピードなのよ!


 今の突進は避けるのが精一杯でした。

 私の身体能力はスキンスーツ無しでも人類を軽く超えるレベルなのに。

 気を抜くとカロリーナに何かされそうです。


「とれぇえええ!」

「嫌なこった!」


 一瞬で立ち位置を入れ替えた私は、ユーディを横抱きにすると部屋を飛び出しました。勢いのまま雨戸を蹴飛ばすと庭に出ます。

 ユーディは何が起こったか分かっていないようですね。


「な、ナギ?」

「カロリーナが暴れ出しました。とりあえず逃げますよ?」

「は、はい……」


 キョトンとした顔をしたユーディを抱え直すと、後ろを振り向きました。

 部屋の明かりを背景に、闇色のオーラがゆっくりと近づいてきます。

 安全地帯に逃げ出すにしても、時間稼ぎが必要ですね。


「灯篭よ!」


 仕方がありませんね。石灯籠を起動しましょう。

 石灯籠に攻撃能力はありません。出来るのは相手の移動を妨げる程度です。

 起動するのも一定の条件があります。専守防衛は大切なワードです。

 淡い光を放つ石灯籠は、ふよふよと浮かび上がりました。


「山菜おこわぉお、食べたいのよぉぉぉ」


 カロリーナの突進を石灯籠が阻みますが……


「ふんっ!」


 むんずと掴んで地面に叩きつけられた石灯篭はあっさり機能を止めました。

 くっ…… 残りも全部投入しましょう。

 簡単なものとは言え、制御用の魔晶石を作るのは手間がかかるのですが…


「今のうちに逃げますよ」

「でもカロリーナが……」

「不用意に近づくと、どうかなりますよ」

「っつ、早くこの場を離れましょう」


 ゆらぁ…… と、ねばっこい動きで近寄ってくるカロリーナの前に、石灯籠が立ちふさがった。その数は7基。これがナギの手持ちの全てである。

 石灯籠はカロリーナを取り囲むと、彼女を中心にゆっくりと回り始めた。

 複数の石灯籠は連携して動き回る事が出来るから、多少の時間は稼げるはず。


「行きますよ!」


 石灯籠が動き始めたのを見た私はユーディの耳元にささやいた。


 空を見上げると、身を細くした月が浮かんでいる。

 わずかな光量だが、無いよりはまし。

 それだけを確認すると、私は母屋とは反対側の方向に走り始めた。


 まっすぐ走っていたら、追い付かれる可能性もあったので、色々と不規則な走り方をしてみました。かなりジグザグに走りましたし、地上ばかりではなく、木の枝を飛び移る事もした結果……

 ようやくたどり着いたのが、ここ… というわけですが……


「……ふう、ここまで来れば大丈夫でしょう」

「あの……」

「どうしましたか?」

「降ろしていただいても?」


 森の中を走り回っている間に、過激な走り方をしてしまったかも知れません。

 振り落とさないように、ユーディを抱きしめていたのでしょう。

 それももう、がっちりと。


「あ、ごめんなさいね」

「い、いえ……」


 とっさの事だったので、彼女は素足のままです。

 ええと、履物は… ストレージに入っていますね。

 フェルトで作ったローファーです。サイズが合えばいいのですが。


「とりあえず、これを()いてください。裸足のままではちょっと、ね」

「……ありがとうございます」


 あら?

 ユーディの様子がちょっと変ですね。

ナギの作った石灯籠。

ただのエクステリアではありませんでしたね。

ちなみに耐魔法コーティング(笑)を施してあります。


だから魔法攻撃にも耐えられる、はず……

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