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腹巻とカロリーナ

 あの後は、おかず談議に花が咲き、お粥もなくなりました。

 ゆっくり食べたのですが、保温用の魔道具のお陰で、最後まで熱々のままです。

 この魔道具も魔晶石を使っていますからね。


「ごちそうさまでした」


 食器は台所に置いておけば良いでしょう。

 もちろん下洗いはしますよ。

 持ってきた水では、その程度しか出来ませんけれど。


「ねえ、ナギ?」

「何でしょう」


 食後のお茶を飲みながらまったりしていると、カロリーナが話しかけてきました。


「これの事なんだけど?」

「まあ、はしたないですね。急に服をはだけるなんて」


 腹巻のぶたさんは淡いピンク色の毛糸を使ったはずなのですけれど。

 色がかなり鮮やかになっているという事はほとんど満タンですね。


「ちがうのっ! この腹巻のことよっ!」

「いつ見ても可愛いですね。よく似合っているじゃないですか」

「そうねぇ。すごく可愛いじゃない」

「ぐぬぬ…… 姉様まで言いやがりますか」


 腹巻と言っても胸から腰までカバーする優れものですよ。

 着ている間は暖くて風呂要らず。理想的な体型になるように補正までしてくれるのです。食事量の制限や必要以上に栄養を吸収させない機能も付いています。

 それなのに、何が不満なのでしょう。


「妹の体重が米俵2俵を超えるなんて… 世間様に顔向けが出来ませんわ」

「今はそんなにない… はず!」

「じゃあ、確かめてみましょう」


 隣の部屋には、体重計も備えてあります。とても頑丈に作りましたから、自動車の重さだって量る事が出来る仕様になっています。

 これなら米俵2俵分の重量なんか余裕で測定出来ますよ。

 そして、彼女の身長や種族の特性から割り出した標準的な体重は……


「わかったわよぅ… 乗ればいいんでしょ?」


 がちゃ… ぎぎぎぎぎ……


 素直に体重計に乗ってくれたのは良いのですが……

 大きく揺れていたゲージの針が落ち着いたところが彼女の体重です。


「これでいいでしょ?」

「どうなの? ナギ」


 数値を見た私に出来る事は、首を静かに横に振ることだけでした。

 はっきり言って1か月で標準体重に戻すのは無理です。


「たしかに体重は減っていますけれど、1俵分も痩せていませんね」

「どこまで落とせばいいの?」

「この線のあたりまでですね」


 体重計のゲージには目標体重のところに印がついています。

 おおむね元の体重の3割強ですね。


「これじゃ駄目ね。このペースでいくと…… 6月くらいまでかかりそうよ」

「もっとかかりますね。だいたいお盆の前くらいでしょう」

「ええええ?」


 体重を落とすのは簡単な事ではないのです。

 栄養の収支バランスを考え、必要な栄養は摂らなければなりません。

 それを無視した無理な減量は命を落としかねませんから。


「ようやく色々食べられると思っていたのにぃ!」

「なにも涙目になって訴えなくても……」

「そっ、そうよ… 減量が終わればいくらでも……」


「……わたし…… 果物のためにねぇ……」


 カロリーナの様子が変ですね。

 うつむいたまま、なにかぶつぶつと呟いています。


「木登りをしたり……」


 彼女の背後に陽炎のようなものが湧き出しました。

 それは段々と色が濃くなると、生き物のように揺らぎ始めたではありませんか。

 なんか嫌な予感がしてきましたよ。


「枝から枝へ飛び移ったり……」


 カロリ-ナが完全に表情の抜けた顔をこちらに向けて……

お、おなかがすくと、おこりっぽくなるんだな。

そういうときはコンニャクを食べると……

たぶん半分は嘘…… だと思います。(笑)

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