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平凡なピピルと氷雪の王子の四年間  作者: 碧りいな
追話 そして季節は巡る
83/84

平凡なピピルと氷雪の王子と二人を取り巻く人々の五年目以降 その一


 これが私と殿下、そしてエリィの四年間の物語だ。平凡に穏やかにと願った人生とはかけ離れてしまったが、あの四年間があったからこそ今の私達がいるのだと思う。

 そんな私達の五年目以降の様子をお伝えしたいと思うが、人生は素敵な事ばかりではない。推していたあの人がどうなっていても決して幻滅などしない、という強い意志の元、どうか読み進めて頂きたい。

 



 *国王陛下とエルーシア様


 ご懐妊中だった王子様に続き、王子、王子、王女、王女と子宝に恵まれセティルストリア王家歴代一位の子沢山となった。エルーシア様は現在執務室で末っ子王女様の授乳をしつつ精力的に政務に取り組まれている。




 *ケネスお義兄様、ロザリアお義姉様


 お義兄様は程なくして宰相に就任し仕事に忙殺されダンスのレッスンが受けられないのが目下の悩み。

 ルシーは嫁にはやらない、と涙ながらに言った寝言を聞いてから、いつかその日が来たら二代に渡る親子二人揃っての大号泣になるに違いないとお義姉様は戦々恐々としている。




 *セシル坊や


 私達の結婚式に参列し、遂にさんちゃいから繰り返してきた私へのプロポーズを止めると宣言した。しかし筋金入りの歳上好きだったようでシャーロット王女に告白するも玉砕。可愛らしい金髪碧眼幼児から麗しの金髪碧眼青年に成長し、見上げるほどに背が高くなったけれど、いつまでも私の可愛い『セシル坊や』でいてくれるそうで嬉しい限りだ。

 




 *ファルシス坊やとチェルシーちゃん


 何時間でもピアノの前に座っているファルシス坊やは近頃は作曲もするという。

 一方のルシーちゃんはアル叔父ちゃまから『新お転婆娘もしくは毛色の薄い二匹目の栗鼠』と呼ばれるようになったが、私はあそこまでではない!と主張したい。





 *セドリック王子


 12歳で立太子し王太子殿下になられた。女の子なら誰もが憧れる白馬に乗った王子様が実在した!という素敵っぷりなのに、陛下やケネスお義兄様とそっくりなお気楽さが大変に残念だ。その為今のところこれといった悩み事は無く、私は名ばかりの相談役のままである。





 *シャーロット王女、ジュリエット王女、アリエラ王女


 まるで三体のビスクドールかのような美しい王女様になられたが、性格は揃いも揃ってお母様譲りの女傑。日々お父様をやり込めて困らせているらしい。





 *カーティスさん


 殿下のご成婚を機に侍従長を引退。悠々自適の老後を夢見ていたが、温泉で骨休めでもと拐かされて連れて来られた我が領主館で執事長として日々忙しく働いている。


 



 *ラーナ


 私の専属侍女と同時に若くて可愛らしいメイドさん達を束ねるメイド長としても活躍中。右膝には私が記憶を頼りに開発した『膝すごーく楽ベルト』を愛用。絶賛するので商会に持ち込んでみたら、王都でも大ヒットした。

 

 



 *お義父様、お義母様


 一人息子だったお義兄様に思わぬ形で我々二人の養子が加わり賑やかな大家族になった我がアシュレイド侯爵家。


 お義父様は甘い物の食べ過ぎですっかりご立派なお腹回りになってしまったので、お義母様に書斎の秘密を密告したところ、ガサ入れがあり全て没収となったそうだ。

 お義母様は孫が一人いるだけでも驚く若さと美貌だったが、孫が七人になっても変わらずにその美しさをキープしている。秘訣は規則正しい生活とシルセウスローズの化粧品、そして夫からの称賛の言葉……なのだそうだ。

 




 *執事長


 貰い泣き癖は今も健在。義父母の四人の孫娘達の結婚で咽び泣くのは間違いないと私は予想している。





 *パートリッジ氏


 シルセウスに来た時、実はバツ2になったばかりでブロークンハートだったというパートリッジ氏。数年後、ドレッセンから戻って来たら一回り以上も年下の可愛らしい奥様と元気一杯のヤンチャな男の子との三人家族になっていた。





 *カイル・ロードソン


 離婚して国外にいた元夫人が騒動を知って心配して駆けつけてきたが、どういう訳か何時までも居るなと不思議に思っていたらいつの間にかまた夫人に戻っていた。

 眉間の皺が薄くなったので、再構築した夫婦仲はどうやら良好である模様。





 *バージル殿下


 恋に恋する31歳はあの変わった趣味趣向に適う相手が見つからず未だに独身だという。


 



 *アル


 アシュレイド領でニアト国からお嫁に来たフロリナさんと仲睦まじく暮らし、一男三女、計四人のお父さんになっている。

 長男のアルフォンス、通称『ちびアル』くんはパパそっくりのポメラニアン系男子。ただし『ルゥかあさま』と呼ばれる度に胸がキュンキュンし烈しく動悸息切れがするので、残念ながらパパのような癒やし効果は無い。





 *オフィーリア王女 ファビアン殿下


 お二人のご婚儀では私が制作したウエディングベールを使われた。デレッデレに照れながらベールアップする元氷雪の王子の様子に参列者は騒然、お陰様でウエディングベールは大評判、以降挙式には欠かせぬアイテムとなり、今や我が工房を代表する商品となった。

 オフィーリア様とはお手紙のやり取りをさせて頂くようになった。お手紙……と言えるのかは疑問だけれど。だって時候の挨拶も何もなく、いきなり『人参のグラッセの作り方を教えて頂戴』みたいな感じで始まるんだもの。あの効率第一主義なところは全く変わられていない。

 ファビアン殿下はセドリック王子の立太子を機にロートレッセ公爵になられた。今や元気な二人の男の子の良きお父様だ。坊や達に揉みくちゃにされながらお相手をするロートレッセ閣下。公爵家のメイドさんは毎日のように閣下のお洋服のボタン付けをしなければならないそうだ。年子の二人は双子ちゃんかな?って思うくらいよく似ていて、しかもお母様そっくり。そしてどうも既視感を覚えると思ったら……例のあの伯父様でした。恋に恋する31歳にならぬように願うばかりである。

 春になったら三人目のお子様がお生まれになるそうだ。丁度エクラの花が咲く頃になるだろうと、閣下は幸せそうに顔を綻ばせていらした。




 

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