食料が尽きた。
カムイに弟子入りしてからざっと2年は経った。
そりゃ色々な事があったよ?
森にヤバい魔物現れるし?森を焼こうとかいう業者くるし?挙句の果てには森のデカキノコが暴れる始末。あれが動くとは思わなかったね。
後ろから突然カムイに襲いかかるキノコ…絵になっ…何でもないよ?
でもなんやかんやでカムイの会得している魔法は全て使えるようになった。【火炎球】を【水刃】で相殺したら首を締められたけどね。
本日も快晴。契約じゃぁ家事の手伝いってなってたけど、最近は獣を獲ってこいやらなんやら言われる。
え〜と?本日の獣は?タンドリ?チキンにされてえのか?
「あ、いたいた、あれかな?」
そこには、茶色の肉付きのいい鳥がいた。あれって殆どニワト…やめとこう。夢が壊れる気がする。
とっとと終わらせよう。
「食卓の騎士タンドリ!貴様はここで私が倒すっ!喰らえっ!【雷撃】!」
バリバリ…ドォォォン!!
フッ、我ながら惚れ惚れする。さて、【雷焼きタンドリ焦げ目を添えて】はとっとと持ち帰る…か?
…ん?なんか後ろから視線?
後ろを振り返るとカムイがちょうど家に戻るところだった。
思いっきり見られてたぁ!?あっちょっ、カムイの姉御そんな目で見ないでくだせぇ!
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ノルマを終えておずおず家に帰ると、カムイが出迎えてくれた。
「まぁ、お主もそうなるよな。わらわも最初そんな感じじゃったから安心せよ。な?」
と同情の目で見られた。
なんか腹立つ。今度食卓にカムイの嫌いなピーマンのっけたろか。
と、復讐に燃えてたらカムイが突然神妙な面持ちになった。
こういう時は大体マトモな話だから…なんだろうか?
「突然じゃが…緊急事態じゃ。」
こう言うんだ。よっぽどのことに違いな
「食料が…尽きてしもうた…。」
…。
寝るかな。
「ちょっ、待て!これは割と重要な案件なのじゃぞ!?」
「いや買いに行けばいいんじゃないか?貯蓄もあるんだろ?なんなら俺が盗賊を撃退したときの金も沢山あるじゃん?」
と、言うとカムイは苦虫を噛み潰したような顔になった。
「いや…貯蓄はあるんじゃが…、わらわ…あまり他人とは話さぬゆえ…少しキツいものがあるんじゃよ…。」
気にくわなかったら火炎球飛ばしてくる人が何言ってんだ。甘えてんじゃねぇよ。
「いやいやいやいや!?簡単に言うなよ人間!」
いやカムイも人間やないかい。ていうかカムイ涙目になってんじゃん。
コミュ障かな?
………。仕方ないか…。
「わぁかったよ!買い物行けばいいんだろ?メモでもくれたら全部買ってきてやるよ!」
「おお!行ってくれるのか!…いや…ちょっと待ってくれ…。」
突然カムイが考え事をしだした。どうしたのだろうか?
「やはりわらわも街へ付いていこう。買い物はやめじゃ。」
え?どしたの突然?
「いや…もうお主も17くらいじゃろ?そろそろ…独り立ちすべきでは…と、思ってな?これから行ってもらう村にはギルドがある。そこでの依頼を…師匠としての…最初で最後の試練じゃ。それでどうかの?」
突然の師弟最後の試練!?不意打ちすぎるわ。
まぁでも最近他人との関わりが少なすぎる気もしていた。
このままじゃニートまっしぐらなんじゃ…?まずいですよ!
「…わかった。その課された依頼を終わらせれば師弟関係は終わり、か。どーせなら最後くらい師匠にいいとこ見せないとな?」
「これが【師弟】としての最後のお出かけじゃな〜。師弟としての、な?」
実際カムイには恩を受けてばかりだった。少しはカムイのおかげで成長できたことを見せてやらないとな。しっかし、これでお別れとは寂しくなるな…。思えば2年も一緒だったのか〜。
俺はこの時カムイが師弟関係を強調しまくってる事には気づかなかった。
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「わらわの秘密も…そろそろあやつに話そうかと思っておるが…幻滅などされんだろうか…師匠よ?わらわは…どうすれば良いのかの…?」
カムイは師匠の墓に祈りながらそう呟いた。
村へ行くよ!
てかちょいシリアスになっちゃったかな〜?
次回から村へ行きますぜ親分!