夢と希望を奪われた
「さて…どーせならお前の中の能力も見てやろうか?」
「能力?何ですかそれ?」
「能力ってのはその人その人が持ってる力のことだよ。凄く強ければ、弱い場合もある。人それぞれだな。」
街へと足を進めてる最中に男の1人がこんなことを言い出した。
能力とかやっぱりあるんだなぁ〜。楽しみだ!
ん?でもどうやって能力を見るんだ?
「あぁ、能力はこの魔道具を使って奪…見る事ができる。すげぇ便利な道具なんだぜ…?貴族とかも高く買ってくれる」
と、男はニヤニヤしながら風呂敷からスマホのような四角い板を取り出した。
これを対象者の体にくっつけて能力を見るらしい。
高く買ってくれるってどゆこと?希少てこと?
御託はいらんから金をくれ。
嘘です。そんなに睨まないで。
「ふむふむ…ん?ほぉぉ…こりゃすげぇや…高く売れるぜ…。」
「やったな兄貴。これで一生楽して暮らせるぜ…へへへ。」
スゥゥゥゥ…
!?
なんか四角魔導具が体に触れた瞬間に何かが体から抜けたような気がする。気のせいだろうか…?
とりあえずはよ能力教えたまへ。
「あ、あの〜?俺の能力って何だったのでしょか?」
「え?ん、あぁ、えっと……そう!【剣術】だ!」
え?剣術?え?そ、そりゃぁ剣を華麗に振れたらカッコイイなとは思うけど…。異界に来たのに剣振れって言うんですか神さまァ!?
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「で…、どうするよ?あの迷い人?」
今、俺達は村へとつながる道沿いで野宿をしている。眠くなってきたのでとっとと寝ようと横になっていたのだが、どこからか話し声が聞こえてきた。どうやら俺を助けてくれた男2人組が話しているようだった。なので俺は寝たふりをしながら男たちに耳を傾けていた。
聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥ってね。
…あれ?なんか違うような?
「あぁ、あの迷い人か。あいつは帝都まで連れてって奴隷商人にでも売るつもりだよ。迷い人は例外なく身体能力に優れてるって話だからなぁ…。能力も奪ったし、もうあいつは用済みだよ。」
「さすがあにきぃ!あの迷い人、身寄りもいないから心細いんだろうなぁ…?俺達が保護してくれていると思ってやがる。健気だねぇ…ヒッヒッヒッ…」
え?能力を奪った?奴隷商に売る?こいつら何言ってんの?
正直今の男たちの発言で異界なんだなぁとしみじみ思えるほど俺は図太い精神は持ち合わせていない。
しかし…少なくともこの覆面男たちが何か良からぬ事を喋っているのはわかった。
どうする?今男たちに問い詰めに行く?
駄目だ、今出ても、
『聞かれたからには生かしておけぬ!』
ナイフグサッ
。゜(゜^ω^゜)゜。プギャー
の流れしか読めないぞ!
ならどうする?答えは1つ
逃げるぞ!
俺は村へ行く道とは逆方向に全速力で走り出した。