姉に勝てる弟はいな、い?
「ルイ、あなたには魔物を倒す実力は充分にあるわ。自信を持って言えるわ、絶対よ!」
そう、素直になるっ!
だってー、ルイが強いのは、本当のことだし…
私の返事に安心したのか、沈んでいた顔は輝き、澄み切った瞳を見せる。
「じゃあ俺、冒険者に、」
「でも!まだ早いの!!」
ルイの言いかけた言葉にかぶせるようにして、話す。
胸の前で、手を組み、すごく心配そうな表情を作るのだ…
「ギルドの養成所は、王都にあるでしょ?ルイはここの人たちしか知らないわ、みんないい人ばかりで…悪意を持った人とルイは関わったことが無いでしょ?魔物を倒す力があっても、この職業は、人間関係が重要よ!だから、もし、ルイが悪い人たちに捕まったら、私心配だわ…」
だから、もう少し私の傍にいて、そう続けようとしたが、レイの手が私の手を掴み、驚いて口を閉ざした。大きくて、剣だこのある、固くて暖かい、ルイらしい手だ。
…ほんと、いつの間にかこんなに大きくなっちゃったな。
「姉さん、俺のこと心配してくれるのはすごくうれしいよ。けれど、その話は、もしもの話だろ?」
「いや、ルイはそうなっちゃうの!」
「そんな断言しなくてもいいだろ…」
「確かにそうだけどさ!もしもがあるでしょ!」
あ、あかん!ルイのペースに飲み込まれそう…やばい!!
必死に抵抗しようと、同じ問答の繰り返しが起こる。
そして、ルイがため息をつき、私に困った顔を向け、話し出す。
「俺、今できることがあるのなら、やりたい。実力があるのなら、行くのは問題ないだろ?」
「でも、私、心配だよ…」
すごく今の私は情緒不安定だ、だって、ゲームではルイ、ひどい目に遭うんだよ。そうなる可能性もあるのに、このまま見送るなんて、私…
ルイの夢を応援したいのは、あの頃から変わらないの、それは本当なの。
ルイが酷い目に遭うことを考えたら、涙が出てくる。
私が泣く姿なんて、ルイに見せたくなくて、外にでる。猛ダッシュで出る。
後ろからルイの驚く声が聞こえたけれども、姉の秩序を守るため…
そして、弟に負けた姉は森に逃げた。