私が思い出したわけ
私の名前はジル。
私の家族は母さんに弟のルイス、三人で暮らしている。
父さんは弟が生まれる前に死んでしまっていない。商人をしていた父さんは、なんでも魔物に襲われてしまっただとか。仕事の帰りの仲間の人がそう話していた。
家にいることが少なくも、帰ってくるたびに他国の話や珍しいものを見せてくれた父さんが死んだとき、とても悲しかった。
母さんは特に悲しんでいた。けれども、臨月で自分が家庭を支えていかなければと立ち直り、二日後に弟を生んだ。
私はめそめそしながらも、弟が生まれたことを喜んだ。
父さんはいなくなっちゃったけど、新しい家族が増えた。私には父さんとの思い出がある。けれども、この子にはない。父さんがあげられなかった分の愛情を、弟にあげよう。そう思った。
家族の話はここまで。私の話に戻る。
家族には話していないけれど、私はいわゆる転生者だ。
村の人からおとなしいとか、肝が据わっていると、子供を褒めるのか曖昧な褒められ方をされてきた。けど生まれた時から記憶があったわけじゃない。思い出したのも、だって今なのだから。
「姉さん、俺、冒険者になりたい」
この回想シーンを知ってる。弟よ、このままいけばお前…当て馬になるぞっ!!