表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
君だけの理解者になりたい  作者: ラリックマ
新しい生活とこれから……
8/80

自分と他人……

 一週間……。

 高校生活を始めて、一週間がたった……。

 俺はいつも通りに渡り廊下を歩いて、国語研究室に向かおうとすると……。


「それで、話って何ですか?」


「そ、それは……」


 国語研究室の前で、矢木澤とクラスメイトの男子が話をしている……。

 深刻な雰囲気だったので、近くで聞き耳を立てる……。

 

「じ、実はさ……最初から見た時から、好きだったんだよね……。俺と付き合ってくれないかな?」


 クラスの男子が矢木澤に告白している……。

 というかよく見たら、いつも休み時間俺の席によく座って矢木澤に話しかけてる、針谷君じゃありませんか……。

 毎回邪魔なんだよ!

 心の中で愚痴をこぼす。

 そして、この告白の結果は、多分振られる……。

 

「ごめんなさい……。気持ちはありがたいのですが、わたしはあなたのことをよく知りませんし……」


「それじゃあこれから知っていけばいいよ! 俺もうクラスでは割と中心人物だし、俺と付き合えば矢木澤さんの株も上がるよ!」


 そう返答された矢木澤の顔は、とても相手を見下したような表情になっていた……。


「いえ、本当にごめんなさい……。それに私、他にやることがあるから付き合うとかそんな余裕ないんです……」


 そうして矢木澤は、教室に入っていく。

 針谷もそれ以上は追わずに、どこかへ行ってしまった。


「いいのか?」


「あら? 今の聞いてたの? 盗み聞きなんて趣味が悪いわね」


「相手はクラスの中心人物……付き合えばお前の株も上がるんだぞ?」


 さっき針谷が言っていたことを、矢木澤に言うと、酷く不機嫌になった。


「そういうの、本当に嫌いだわ……。なんで私が他人の評価を上げるために、わざわざあんな自己中心的な奴と付き合わなければいけなの……」


「でも嬉しくないのか? 他人から好かれるって……?」


「別に、いくら他人から好かれようとも何にも思わないわ……。他人は他人よ……」


 他人……ね……。


「じゃあ誰からも好かれたくないのか?」


「別にそういうことじゃ……」


「でも他人から好かれても何にも思わないって言ったじゃねぇか……」


「他人とはまた――別の人よ……」


 他人とは別の人……?

 

「なんだよそれ……? 他人は他人だろ……。読んで字のごとく他の人……。自分以外のすべての人間を他人というなら、家族だって例外なく他人だろ……。お前は家族からも好かれなくていいっていうのか……?」


 何で俺はこんな話をしているんだ……。

 多分針谷の言葉に、俺も怒りを感じたからだろう……。

 そしてそのことを矢木澤に言うのは、”他人から好かれようとも何にも思わない”と言う言葉が、強がりに見えたからだ……。


「なんかしらけちゃったわね……。今日は解散にしましょう」


 そうして矢木澤は教室を出ていく。 

 俺もちょっとおかしかったな……。

 何であんな話をしたのか……。

 矢木澤の過去を知っているからだ……。

 他人から好かれなくてもいいなんて虚勢を張って、強がっている彼女を見るのが、とてもつらいからだ……。

 そして、彼女がそうやって虚勢を張ってしまうのは……俺が原因だからだ……。

 


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ