彼女の考え……
「え? いやバンド!?」
橋川が突然言い出した言葉を、俺は理解することが出来なかった。
本当に何言ってんだコイツ……?
「うん、まず最初っから間違ってたんだよ!」
いや間違ってるのはお前の発言だろ……。
そう思うが、取りあえず俺は橋川の話を聞くことにする。
「とりあえず最初から説明してくれ……」
橋川に説明を求めると、橋川は待ってましたと言わんばかりに、ぐいっと前のめりになった。
「つまりね、矢木澤を助けるとかそういう考えが間違いだったんだよ」
自信満々にそういってくるが、俺はいまだにピンと来ていない。
まだ橋川の言いたいことが、よくわからない……。
「うーんとなんて言えばいいかな……。まあまずこの問題は矢木澤が自分で解決しないと何の意味もないんだよ! 私たちがいくら阿澄達を説得しようと、クラスメイトたちになんて言おうと、結局意味ないんだよ」
「うーん……」
俺は頭の中で、橋川が言っていることを整理して、もう一度橋川に問う。
「お前の言いたいことはなんとなーくわかった。でもそんなことは俺も知ってる。花が自分でなんとかしないと、根本的には解決しないことなんて最初から分かっていた……。でも花は自分で解決しようとしないから、俺たちが助けてやらないといけないわけで……」
そうだ……。
中学二年の時だって、花なら自分で何とか出来るだけの力を持っていた。
でもあいつは何にもしなかった。
ただやられるがままだった……。
今だってそうだ……。
だから俺たちが、手を貸してやらないといけないわけで……。
俺の発言を聞いた橋川は、さっきよりも自身気になってもっと前のめりになってきた。
「そうだよ! あいつが今この現状を変えようと思ってない以上どうしようもない……。私たちだけやる気があって、当の本人はやる気がないなんて、そんなの現状を変えられるわけがない! つまり……」
「つまり……」
俺はごくりと唾を飲み込んで、橋川に続きの言葉を促す。
「つまり、強制的にあいつ自身にやらせてやればいい! あいつが自分から阿澄に好かれる行動をとるように促してやるんだよ! それで最初に言ったバンドってわけ」
途中までいい感じのことを言っていた気がするのだが、最後の言葉でまた意味が分からなくなった。
今の発言とバンドになんの関係性があるのだろうか……?
「まあ優太は何もしなくていいから、とりあえずこれ矢木澤に渡しといて」
そう言って橋川は俺に、バンドで使う楽譜を渡すと、そのまま立ち上がり帰ろうとした。
俺はそれを急いで止める。
「ちょ、ちょっと待てって……。結局なんも分かんねぇよ。バンドのこともよくわからないし、もっとちゃんと説明してくれよ……」
すると橋川はくるりとこっちを向いて。
「別に優太は何もしなくて大丈夫。だから、それを矢木澤に渡しといてくれれば大丈夫だから……」
っと優しく微笑んだ。
そうして橋川は会計を済ませようとする。
何故か俺にちゃんと説明をしようとせず、すぐに帰ろうとする橋川に俺は戸惑っていた。
さっきまで意気揚々と説明していた癖に、急にこの態度……。
そうこうしているうちに、橋川は会計を済ませてサイゼを出ていってしまった。
本当にどうしたんだ?
俺が何か気に障ることを言ってしまったのだろうか……?
意味も分からず取り残された俺は、橋川から預かった楽譜を鞄にしまい、サイゼを後にした。
このまま橋川一人に任せてしまって大丈夫なのだろうか……?
何故俺に内容の詳細を教えてくれないのだろうか……?
俺はこの先の文化祭で、橋川が何をやろうとしているのか分からずとても不安になった……。




