最悪の偶然……
「ねぇ矢木澤さん、別に私何もしてないじゃん? 何か文句あるの?」
「何もしてないから文句をいっているのよ。何も手伝わないでただ喋っているだけなら邪魔だから早く部活動の方に行ってくれる?」
「は? わざわざ部活休んでまでこっちに来てあげたのに何その言い方?」
「誰も来てくれなんて頼んでないわ。大方部活動の方でも喋ってて追い出されたから、仕方なく教室に来たというところでしょ?」
「はぁ? 何なのあんた? だいたい前から気に入らなかったんだよね……。一人でスカしてるっていうかさ」
二人の言い合いは徐々にヒートアップしていき、囲んでいたクラスメイト達もざわざわし始めた。
二人の話から察するに、文化祭の準備をサボっていた阿澄を花が注意して揉めたというところだろうか……?
二人ともだいぶ気が立っているようで、阿澄に至っては半泣き状態だった。
花の方もどんどん口調が強くなっていき、いつもクラスメイトには敬語なのに、今は荒々しく素の口調で喋っている。
最悪の事態だ……。
よりによって一番揉めてほしくない奴と揉めてしまった……。
どうする……?
俺が無理やり止めに行くか?
いや、それじゃあ火に油だ……。
いきなり知らないクラスメイトに乱入されれば、阿澄はよけいに怒り狂うだろう……。
しかしこのまま言い合いをさせてしまっていいのか……?
でもどうすることも出来ないし……。
俺がこの状況をどうしようかと悩んでいると、担任が二人の間に割って入った。
「まあまあお前たち、楽しい文化祭の準備期間じゃないか。そう喧嘩することもないだろう。君たちはもう大人なんだから、どちらかが謝れば丸く収まるだろう」
担任の模範解答のような仲裁で、この争いも収まると思ったのだが……。
「分かりました。でも私は悪くないので、阿澄さんの方から謝罪するというならこの場は収めましょう」
これは……。
「は? 何で私が謝る必要があるの? てかその上からな言い方もむかつくし……。私から謝るなんてこと絶対ないから!」
まあそうなるよな……。
担任も困ったのか、額に手を当ててため息をつく。
結局言い争いは花が勝ったのか、正論を言われまくった阿澄は走って教室を出ていってしまった……。
この状況は非常によくない。
阿澄のことはよく知らないが、多分クラスメイトを仲間にして花に復讐しようとするだろう……。
そしてそうなった場合、クラスメイトと大して仲良くがない花の状況は最悪だ。
人の印象なんて、他人によって簡単に変えられる。
阿澄が花を悪く仕立てるように悪い噂を流せば、その噂は本当のように扱われる……。
そして一度与えられた印象というのは、簡単には覆らない……。
どんなに弁解したところで言い訳に聞こえてしまう……。
最悪だ……。
俺はこの先どうしようか悩みすぎて、自分の作業に戻れずにいた。




