彼と彼との差……
そして朝を迎える……。
小鳥のさえずりなんてものは聞けなく、聞こえるのは母親の声だけだった。
「優太―! 昨日といい今日といい、もう学校始まってんのよ! 気持ち切り替えなさい!」
そうして母親から、布団を取られる。
「分かったから後20分寝かせて……」
「何言ってんのよ、もうそろそろ7時30になるわよ!」
「え?」
時計を見ると、もう25分だった……。
「何で起こしてくれないんだよ!」
「さっきから起こしてるわよ!」
俺はベッドから出るなり、すぐさま着替えて家を出る。
「くそー、前なら後30分は寝てたのに……」
そんな愚痴を垂れながら、学校に向かう。
「よ、よう……」
「あら、おはようございます」
え? 敬語?
そんな些細な疑問を覚えながらも、席に着く。
そういえば今日からもう授業か……。
「なぁ矢木澤、一限目の授業って何?」
授業の時間割を見るのが面倒なので、矢木澤に聞くと……。
「前の掲示板に貼ってある、時間割表を見れば分かるじゃないですか? いちいちそんなくだらないことで、話しかけないでください」
うん……。
まあコイツが素直に教えてくれないことぐらい、わかっていた……。
仕方なく時間割表を見に行く……。
「一時間目は国語か……」
でも一回目の授業だぞ?
こういう場合は、担当の先生が自己紹介とかをして、授業は次の時間というのが普通だ!
俺は教科書をロッカーに入れっぱなしにして、席に戻る。
『ガラガラ』っと扉をあけて入ってきたのは、40代ぐらいのおじさんだった。
おじさんは黒板に名前を書き始める。
「えー今日から現代文の科目を受け持つことになった、篠原だ」
そういうと教師は、持ってきたカバンから教科書を取り出す。
「まあ一回目の授業だが、特にやることもないので授業を始める」
まじかよ……。
この親父、一回目の授業は授業をしないという、暗黙のルールをいとも簡単に破りやがったー!
俺の教科書はロッカーだし……。
いや、でも『教科書取りに行ってもいいですか』なんて、クラス全員の前でいいたくないし……。
仕方ない……見せてもらおう……。
俺は隣の矢木澤に、教科書を見せてもらおうとしたら……。
「すぴー、すぴー」
コイツ……一回目の授業から寝てやがる!
なんて度胸だ……。
って関心してる場合じゃない!
コイツが寝てるとなると、俺はこの授業を教科書なしで受けなければならない……。
でもほかの生徒に『見せてくれ』なんて、俺のコミュ力じゃ言えないし……。
俺は考えることを放棄した。
別にコイツも寝てるし、俺も寝よ。
そして俺は机に突っ伏した。
結局50分丸まる寝ていた……。
授業間の10分休憩の時間に、俺はロッカーから次の科目の教科書を取り出す。
戻って席に座ろうとすると、クラスの男子が俺の席に座っていた……。
(うぜぇ)
邪魔だから早くどけ!
そういってやりたいが、俺は平穏を好むから、俺は何も言わないでやる。
決して俺が話しかけられないとか、そういう理由じゃない……。
というかあの男子、さっきから矢木澤と喋ってんな……。
矢木澤が俺以外の奴と、どんな会話をしているのか気になった俺は、近くで立ったまま聞き耳を立てる。
「いやー矢木澤さん本当にかわいいね! 部活動とかは決まったの?」
「いえ、まだ決まってないんですよ。えーと名前は何て言うんですか?」
「あ、俺針谷 俊。よろしく!」
「はい、一年間よろしくお願いします。針谷さんはもう部活動とか、決まったのですか?」
「うん、俺は小学校からバスケやってるからな。バスケ部に入ろうと思ってる」
「まあ、小学校からなんて随分とキャリアが長いですね! さぞかしお上手なんでしょう」
「いや、まあレギュラーになれるぐらいの実力はあるけど、そこまでだよ……」
「いえいえ、そんな謙遜することないですよ。十分誇っていいと思いますよ!」
「そうかなー。あ、もう時間だから行くね」
「はい」
何だこの対応の差!
コイツ誰だよ……。
あからさまな俺との態度の差に、驚きを隠せない……。
「おい、なんだあの会話!」
「なんだといわれましても……。普通の日常会話ですけど……? まあ家族意外と喋ったことのないあなたには、少し難しいことかもしれないですけど」
これだよこれ!
「なんだこの態度の差は!?」
「あの、もう時間ですので静かにしてください。うるさいのは目覚まし時計で間に合ってますので……」
このくそアマ……。
さすがにここまで対応が違うと、最初は困惑したが、だんだんイラついてきた。