彼の気持ち……
時刻は午前12時……。
予行練習ということもあり、基本どの競技もすぐ終わってしまうので、次で最後だ……。
「次のプログラムは、学年別選抜リレーです」
そのアナウンスにあったように、この体育祭の締めを飾るのは、選抜リレーだった。
しかも、他の競技は予行練習だからと割愛してたくせに、何故か選抜リレーだけ全員走ることになっている……。
まあ別に練習だし、本気で走らない人もいると思うけど……。
なんて思いながら、選抜リレーに出場する生徒が出てきた。
まあ当然のごとく、矢木澤以外誰も分からないわけで、正直早く終わって欲しかった……。
「ではまず一学年女子からのスタートです」
そうして合図を出す先生が、ピストルを掲げる。
「よーい」
その言葉とともに、一走目の女子がクラウチングスタートの姿勢をとった。
「パン!」
銃声とともに、並んでいた三人の女子が一斉に走り出す……。
そしてニ走目、三走目とバトンがつながっていき、アンカーの矢木澤のもとへバトンが渡ろうとしていた……。
矢木澤がバトンを受け取るときには、最下位で渡ってきたので、一位との差がかなりあり、おい抜かすのは難しいと思う……。
だが矢木澤はバトンを貰うと、ものすごいスピードで少し前にいた白組の女子を抜かした。
「矢木澤さんはや!」
「すごーい」
近くにいた女子や男子までもが、矢木澤に目を奪われていた……。
そしてかなり先を走っていた青組の女子を抜かして、一位になった……。
「すげーな」
思わず声が出た。
その走りをみて、やはり矢木澤は完璧超人だと思った……。
その後も他の学年や男子が走り終えて、選抜リレーは終わった。
「よ、随分と速かったな」
俺は戻ってきた矢木澤に声をかける。
「それはそうよ、でもさすがに疲れたわ……」
「大丈夫か? そこに椅子あるから腰かけたらどうだ?」
俺は疲れた矢木澤に気を使って、近くに置いてあった椅子を持ってくるが……。
「何急に? まさか今の私の走り姿を見て惚れたの? でも足が速いだけで相手に好意を持つのは小学生までよ? って、あなたの脳みそは幼稚園児以下だったわね……」
「そこは小学生にしてくれよ……」
気を使ったのにこの言われよう……。
俺は手に持っている椅子を元の場所に戻し、教室に戻ろうとすると……。
「矢木澤さん、さっきの走りカッコよかったよ!」
「いやー今回の体育祭は矢木澤さんがいるから、優勝間違いなしだね!」
わらわらと矢木澤の周りに人が集まって来る……。
じゃあ俺は帰るか……。
話しかけられてる矢木澤を後にして、教室に戻る。
今日は帰りのホームルームは無しとのことなので、教室で着替えを終わらせて、帰る支度をする……。
別に今日は……というか、夏休みが明けてから一度も部活に行っていない……。
別に行かなくても矢木澤は何も言ってこないし、そもそも行く必要のない……。
そもそも何で俺は、あんな部活とも呼べないところに、毎日のように顔を出していたんだ……?
そんなどうでもいいことを思いながら、教室を後にした……。




