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君だけの理解者になりたい  作者: ラリックマ
彼女の心境……
16/80

妥協と成長……

ようやく待ちに待ってないテストが、明日始まろうとしていた……。


「もう今日はこれぐらいでいいんじゃないか? 多分平均点は取れるぐらい勉強しただろ……」


「あなた、平均点で満足してるの? 目指すは満点よ」

 

 満点!?

 今まで下から二番目とかだった俺に、何を言ってんだコイツは……。


「いやさすがに無理だろ……。最悪赤点を回避できればいいし……」


「そんな赤点以上なんかで妥協してるから、あなたは成長しないのよ」


「いやいや、俺前に比べて身長とかめっちゃ伸びてるぞ?」


「外見の話じゃなくて、内面の話よ。人って自分より下の人間を見下して、『俺はこの人よりは出来る』って自分を妥協するか、自分より上の人間を見て、『俺もこの人みたいになろう』って憧れて努力するかで、成長出来るか出来ないか代わってくると思うの……。


 ……。


「なんか深いな……」


 俺は矢木澤の言葉に少し感動した……。


「あなたが浅いだけよ。まあもっとも、あなたより下の人間なんていないから、あなたは妥協のしようがないのだけど……」


「いや、探せば俺より下の奴が……多分一人ぐらいはいるはずだ!」


 いやでも実際どうなんだ?

 俺より低スペックとかもうそれ人間じゃねぇだろ……。


「はぁ……。自分より下の人間を探している人間ほど、滑稽(こっけい)なものは無いわね」


 クスクスと矢木澤は、笑みを浮かべていた。


「まあそんないもしない人間を探すより、目の前の勉強に集中しなさい」


 そうして俺は、強制下校の時間まで、矢木澤に勉強を教わっていた。


「今日はありがとな……」


 俺は、矢木澤に勉強に付き合ってもらったお礼をする。


「お礼がしたいならテストでいい点を取りなさい。私が教えてあげたのに、低い点数なんか取ったら許さないわよ?」


「おう、任せとけ!」


 俺は自信に満ち溢れていた。

 彼女がここまで付き添ってくれたのだから、その期待にこたえなくてはと思った……。

 俺は急いで家に帰る。

 俺は家に着くなり、自室にこもって勉強をした。

 自分の成績のためではなく、彼女が一生懸命に教えてくれたのだから、無様な点数を取るわけにはいかないからだ……。

 そして当日……。


「あら? あなた、目の下にクマができてるわよ? いつから飼われたの?」


 クマってそっちじゃないし、何故飼われる側!?


「いや、今日ほとんど寝てないんだよ……」


「じゃあその夜更かしの成果、見せて頂戴ね」


「おう!」

 

 もうすぐテストが始まる……。

 

「全員席に就け。そろそろだぞ」


 担任がチャイムが鳴ると同時に、問題と解答用紙を配り始める。

 この配られている間が、とても緊張する……。

 いつもはどうでもいいと思っていたテストなのに、今はリレーの順番待ちをしている気分に近い……。

 

「キーンコーンカーンコーン」


 始まりのチャイムが鳴り、全員が一斉に問題用紙を開く。

 最初の科目は数学……。

 一番勉強した科目でもあり、一番自信がある科目だ。

 俺は一問目を解いて、二問目三問目と順調にやっていく。


(何だこれは! テストがごみのようだ!)


 自分でも怖いぐらいに解けた。

 ワンチャン満点があるのではないかと思うぐらいに解けていた……。

 その後もテストは順調に終わり、一日目が終わった。


「テスト……どうだった?」


「いや、自分でも怖いぐらいできたぜ」


「そう……それならよかったのだけど……」


「本当にありがとな! これも花が教えてくれたおかげだよ!」


「花って……」


「あ、ごめん」


 テンションが上がりすぎたのか、ついつい矢木澤を下の名前で呼んでしまった……。


「いいのよ、それよりも今日は部活動なしね」


「あぁ、分かった」


 そうしてすぐに矢木澤は帰ってしまった……。

 

「少し元気がなかったか……?」


 今の矢木澤は、とても落ち込んでるように見えた……。

 もしかして、俺に教えていたせいでテストの出来が良くなかったとか……。

 俺はそんな心配をして、罪悪感に苛まれていた……。




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