学生とテスト……
テスト……。
学生である以上は、避けては通れない道……。
もちろん俺たちの高校にも当然のようにあり、かくいう俺も覚悟を決めていた……。
「よし! かえってゲームしよ」
「待ちなさい、どこへ行く気?」
「いや、テスト期間だから部活もないし、帰ろうかなって……」
俺はこの、テスト前の準備期間という名の執行猶予を、ゲームをして過ごすことに決めていた……。
「何言ってるの? あなたどうせ帰っても勉強なんてしないじゃない? それに私たちが入ってるのは同窓会よ? だから今日もあるわよ」
「えぇ、テスト前部活まで部活動とかどんなブラック部活? しかも別に俺たちいつも何もしてないからいいだろ」
「あなたに拒否権はないのよ。いいから早く来なさい」
言われるがままに、矢木澤の三歩後を歩く……。
「で、来たけど何すんだよ?」
「あなた馬鹿なの? 一週間後にテストがあるんだから、テスト勉強をするに決まってるじゃない」
何と、急に部室に連れて来た矢木澤は、『テスト勉強をする』と言い出した……。
「うん、頑張ってください……」
俺はすぐさま部屋を出ようとするが、矢木澤にえ後ろ襟をつかまれてしまった。
「待ちなさい、あなたも一緒にやるのよ?」
「いやいいよ、別に大学行く気ないし……」
「何言ってるの? 学年最下位の馬鹿を雇ってくれるとこなんて、ブラックしかないわよ」
もう最下位取ることは確定してるのかよ……。
でも確かに、中学の頃はたいして勉強してないから、割と下の方の順位だったしな……。
「でも友達とやると集中できないだろ? だからやっぱ俺帰るわ」
「大丈夫よ、あなたは友達じゃなくて召使だから」
何も大丈夫じゃないんだけど……。
てか前は奴隷とか言ってなかった?
役職変わっちゃってるよ!
「いや本当に、俺のことは心配しないでいいから」
「誰もあなたの心配なんてしてないわよ。あなたに悪い成績をとられると、部の評価が下がるから……」
「いや多分誰も気にしてないと思うぞ?」
まず誰もこの部活が活動してることすら知らないと思う……。
もう一回部屋を出ようとすると……。
「いいから!」
俺は、無理やり後ろ襟を引っ張られて、椅子にぶん投げられた。
「いたた……。分かったよ、ここにいてやるからやってていいぞ」
倒れた椅子を立ち上げて、携帯を出す。
「俺は携帯いじってるから、終わったら言ってくれ」
「何言ってるの? あなたも勉強するのよ。分かったらまず問題集をやりなさい」
「いや別にいいよ、問題集とか一問目から分からなくて、結局一時間ぐらい問題とにらめっこしてやめるタイプなんだよ……」
そう、問題集はまず、問題の解き方が分からない……。
解説見ろとか言われても、その解説が分からない……。
まずあの解説作ってる奴、ちょっと勉強分かるやつ前提で作るのやめてくれない?
小学一年生が見ても理解できる解説を作るようにしてほしい……。
「まあだから、俺のことは気にしないでくれ……」
俺が携帯を取り出そうとすると……。
「じゃあ私が教えてあげるわ」
「え!?」
あれ?
幻聴?
いきなりどうしたんだコイツ……?
いつもの矢木澤らしくない発言に、俺は戸惑った。