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物体に付喪神・神霊を降ろす程度の能力

ムラマサに殴られてたんこぶをこしらえた後、居間に戻ったユイはまだ盃を手から離さず酒を呑んでいた。

隣ではムラマサがまだ睨んでいる。

「そんなに暑く見つめるなよ。俺には妖夢っていう彼女が居るんだぜ? 残念ながら変態趣味(マニア)は持っていなくてな。」

ゆっくりとムラマサが刀を鞘から引き抜く。

「まてまて、悪かったって。」

「今度は斬る。」

「宣言しちゃったよ。」

ユイは苦笑しながらも盃を傾ける。

ユイがそこまで慌てた様子を見せないのも一重に実力を持っているからだろう。

「冗談も言えないなんてなかなか手厳しい事で。」

そういうとユイは盃をグイッと傾け中身を飲み干す。

「美味いんだけど…やっぱり味がねぇ…薄い。」

それを聞いて妖夢がやってくる。

「それならこれはどうですか? 幽々子様が呑んでいるお酒なんですが、白玉楼ではこれが一番辛いお酒だと思いますよ。」

そういって妖夢は小さな盃をユイに渡すと、酒を注ぐ。

それをユイはゆっくりと呑む。

「どうですか?」

「…薄いです。」

ユイが渋い顔で答える。

「これ以上はもうありませんよ…」

妖夢が呆れた顔で言う。

「お主の酒の耐性は化物じみてるな。」

いつの間にか妖忌がムラマサの後ろに立つ。

「まあ、傭兵っぽいことをやっていた事はあったからな。近隣から強奪する時に奪ってきた酒で鍛えられたんだろ。」

「…強奪?」

妖忌が警戒した様に言う。

「随分昔のことだ。今はもうやってない。何か持ってこないと平気で顎の骨を砕かれる様な環境で育ったもんであまり育ちは良くないのさ。」

「…そうか。無礼な質問だったな。」

そう言うと妖忌は頭を下げる。

「いいって。他の奴らに褒められる竜人生は送ってないからな。」

そう言うとユイは妖忌の頭をあげさせた。

そんなこんなで、夜が開けるまで宴会は続いた。

とはいっても、残っていたのはユイだけだったが。

他は全員酔い潰れていた。

陽が昇ると、紫が白玉楼にやってきた。

「…ユイ。これはどう言う状況かしら?」

居間の惨状を見て紫が絶句する。

「俺以外は全員潰れた。」

「そんなに、昨日の宴会は凄まじいものだったのかしら?」

「知らねぇ。」

ユイの頭上に隙間が現れ、広辞苑(辞書)が落ちてくる。

「痛って!」

広辞苑の角がユイの頭にクリーンヒットし、ユイはその場に悶絶する。

「あなたがちゃんと見張っていればこういった状況にならなかったと思うわ。」

珍しく声を荒げた紫に周りが何事かと目を覚ます。

その後、妖夢と妖忌が宴会の後始末を終え、ユイと紫を除いた全員が朝食を食べ終わるまで紫の説教は続いた。

ポンっと紫の肩に手を置かれる。

振り返ると、いつの間にかやって来たハルヴィアが紫の後ろに立っていた。

「その辺にしとき。」

その言葉に紫はため息をついてユイへの説教を終えた。

「と言うよりなんでハル姐がここにいるんだ?」

「半霊が『紫様の説教が止まらないからなんとかしてくれ』って助けを求めて来てね。それで面白がって来たわけだ。」

ハルヴィアがさも面白いものを見たと言わんばかりに朗らかな表樹を見せる。

「ご期待に添えた様で何より…」

ユイが皮肉気味に答えた。

「ムラマサ、妖忌。隙間が開いたわよ。」

紫が別世界の住人に声をかける。

庭に出てみると紫が隙間を開いていた。

「そろそろ帰る時間か…」

妖忌が寂しそうに呟く。

「また遊ぼうぜ。」

ユイがムラマサの肩を叩きながら笑いかける。

「あんな遊びはもうこりごりだ。」

ムラマサが言う。

いよいよ2人が隙間に入ると言う時、ハルヴィアがムラマサに声をかけた。

「ムラマサとかいったかい? よかったら、お前さんの分身した刀を一振り。私にくれないか?」

ハルヴィアが柄にも無く申し訳なさそうな表情を見せる。

「いいけど、俺みたいに動いたりはしないぞ。」

「構わないさ。」

それを聞くと、ムラマサはどこからか刀を取り出すとハルヴィアに渡す。

「ありがとね。」

そう言うとハルヴィアは刀を受け取った。

「他に用のある人は?」

紫が確認するが、誰もいない。

「じゃあ、閉めるわよ。」

そういって紫は、隙間を閉めた。

「じゃあ、私はこれで。」

そう言うと紫はまた隙間を開きそこに潜ってしまった。

「こうして、いなくなってみると何か寂しいものを感じますね…」

その言葉を聞くとハルヴィアとユイは大声で笑いだした。

「何が面白いんですか?」

妖夢が困惑した様に聞く。

2人は答えずに笑い続ける。

やがて、幽々子も笑いだした。

状況がわかっていないのは妖夢だけだ。

ひとしきり笑うと、ハルヴィアが説明する。

「あ〜お腹痛い。あはは。私の能力を妖夢ちゃんは知ってる?」

「はい、『 物体に付喪神・神霊を降ろす程度の能力』…あっ。」

やがて妖夢も笑いだした。

「そう言うことですか! あははは!」

白玉楼に笑い声が響き渡る。

しばらくしたのち、ようやく笑いが収まったところでハルヴィアが刀を握って集中する様子を見せる。

すぐに、ムラマサは復活した。

「おかえり、ムラマサ。」

ユイが話しかける。

「俺は確か向こうの世界に帰ったはずじゃ…」

ムラマサはなんとか思い出そうとしている。

しばらくして分かったのかムラマサは驚きに目を見開く。

「こりゃ一本取られたな。」

そう言うとため息を吐いた。

「これからよろしくな、ムラマサ。」

ユイの声にムラマサは渋々頷いた。

「分かったよ。」

してやったり。

なお、今後の「東方竜人卿」の予定がちょくちょく狂うので、投稿は送れる様子。

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