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泥酔

陰と陽VSムラマサ

妖忌やムラマサが戦った庭に今度は、陰と陽、ムラマサが向かい合っていた。

それぞれの手には木刀。

2人の主人であるユイは巨大な盃を片手に縁側に座っている。

高みの見物を決め込んだらしい。

「始めてもいいか?」

「どうぞ。」

ムラマサはユイから許可をもらうと、静かに木刀を構える。

「うらぁ!!」

始めに斬りかかってきたのは陽だ。

(速い!)

ムラマサは素早く身を躱すと、陽へ反撃を仕掛けようとする。

しかし、後ろに気配を感じ膝を曲げる。

見ると陰が背後からムラマサへ斬りかかろうとしていた。

これも落ち着いて躱すとムラマサは陰に向かって鋭い斬撃を放つ。

しかし、陰はこれを簡単に流すと一旦後ろに退く。

ムラマサが背を見せてしまった陽を思い出して振り向きざまに陽の脇腹へ攻撃を叩き込もうとする。

しかし陽はこれを防いで鎬の削りあいに持っていった。

もちろんそれを陰が背後から斬りかかる。

(なんて連携だ…めんどくせえ。どちらかを攻撃しようとするともう片方がそれを守る。なるほど、対を成し共に助け合う存在か…)

ムラマサはため息を吐くと陰の木刀を躱し、ちょうど正三角形の形になるように後ろへ跳び退く。

2人を正面に集める作戦だ。

作戦自体は上手くいった。

しかし、いかんせん相手の連携力があまりにも良すぎた。

攻撃しても陰が斬撃を全て防ぎ、防御しても陽が木刀を破壊する勢いで攻撃をしてくる。

(なるほど、陰陽性質表に上手くあった戦法を取っているのか。)

陰陽性質表で見れば陽は攻撃、陰は防御を司っている。

正攻法で行くとこうなるのだろう。

しかし、先ほどの様子から察するにあくまで司っているだけで、陰も攻撃は出来るし、陽も防御が出来る。

その連携力には隙がない。

(なら…)

ムラマサは陰に攻撃を集中する。

もちろん陰はそれら全てを躱し、流し、弾くことでムラマサの剣戟を凌いでみせた。

陽が陰を守るようにムラマサに攻撃を入れる。

しかし、ムラマサが少し移動するとその斬撃は全て陰に向かう事となった。

「「なっ…!」」

2人とも驚きの声を上げるがお互いに攻撃を引くことで斬り合う事は無かった。

(失敗か…)

再び先ほどと同じような状態になる。

ムラマサの案はひとつだけとなった。

いわゆるごり押しである。

「らぁ!」

力任せに木刀を横に振るう。

ユイを切った事で増えた力によって陽の木刀が弾き飛ばされる。

木刀が宙を舞う間にムラマサは陽へ攻撃を仕掛けた。

しかし、陽は意外な行動に出る。

木刀を体術で流すと陰の横に並ぶ。

次の瞬間そこには中性的な何かがいた。

人の形はしている。

しかし体が男とも女とも取れ、顔立ちもまたどちらともつかない顔をしているのだ。

(太極、か。)

ムラマサはすぐに分かった。

まだ木刀は宙を舞っている。

太極が掴む前に攻撃を入れればこちらの勝ちだ。

ムラマサは素早く間を詰めると太極へ一閃する。

しかし太極は慌てる様子もなくそれを躱すとムラマサの木刀を足場に木刀を掴むとそれをムラマサの頭におもむろに振り下ろしてきた。

ムラマサは素早く身を屈める。

(情報判断能力が速いのか?)

そのとき太極が口を開く。

「万能。」

それだけ言うと太極は攻撃を開始する。

(手の内は全て読まれているという事か…)

飛んでくる斬撃を全て斬りながらムラマサは考える。

(手の内を全て読まれているなら…事故的な決着になりそうだ。)

ムラマサ自身、そういった偶然の勝負はあまり好きじゃない。

己の実力を使って物事を成し遂げる。

それがムラマサのやり方だからだ。

しかし、今回の相手は相手が相手だ。

全ての面で自分より秀でているのは確かだろう。

(いや、ひとつ突破口があった。)

ムラマサはそれに気付くとニヤリと笑う。

太極は無表情で攻撃を続けている。

しかもこちらが攻撃するときっちり防御もするので余計にタチが悪い。

そこでムラマサは一度、攻撃を防ぐことにした。

ガッ!

凄まじい音と共に木刀がぶつかり合う。

そこでムラマサは太極のもう1本の木刀を蹴り上げる。

その瞬間ムラマサは宙に飛び上がると宙に舞った太極の木刀のかしらを太極に向かって蹴った。

弾丸のような速さで木刀が太極へ向かっていく。

太極は落ち着いてそれを流すが次の瞬間目を見開いた。

ムラマサが喉元目がけて木刀を空中で突きの動作をしていた。

「…お見事。」

その言葉を最後に太極は喉元を抑えられ負けを認めた。

「いやはや驚いた。恐ろしく強いな、ムラマサ殿。」

陰がムラマサに話しかける。

「奥の木刀をこちらから見て一切見えないようにする技量には恐れ入ったぜ。」

陽も驚きを隠せない様子でいう。

「…お前ら、酒で泥酔してたんじゃないのか?」

「「そんな訳なかろう。」」

2人の声がぴったりと揃う。

「…は?」

ムラマサが驚いたように目を開く。

「あれくらいで酔ってたらアイツの晩酌なんて付き合えねぇよ。」

陽が言う。

「全てはムラマサ殿と戦うためのきっかけ作りに過ぎない。」

それを聞いて縁側で酒を呑んでいたユイがお腹を抱えて笑い出す。

「いや〜、酔っていたのはどっちかね、ムラマサ? 己の強さに泥酔しない様に気を付けろよ。」

ムラマサがユイに近づく。

「あんた…知ってたのか?」

「当たり前さ。900年の付き合いなんだから。」

ムラマサが拳を構える。

「そういう、事は、先に言え!」

ユイの頭にゲンコツが落ちる。

頭蓋骨が鳴る音が白玉楼に響き渡った。

酒に酔っているといったな。

あれは嘘だ。

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