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ひとときの宴会

前回のあとがきの伏線回収。

というより、陰猫さんの執筆スピードが速すぎる…(ムラマサ編完結させてました。)

「え〜、では別世界からいらっしゃった魂魄 妖忌殿と妖刀ムラマサ殿を歓迎して。そして、妖刀ムラマサが俺を斬って強くなったことを祝って乾杯!」

そういってユイは手に持っていた大きな盃を上に挙げた。

「…乾杯。」

妖忌達がしばらく躊躇った後同じ様に盃を挙げるとそのまま口まで持っていき、酒を一気に煽る。

「流石に俺がお前を斬った事は言わなくていいんじゃないか? 宴会が血みどろになる気がするんだが。」

ムラマサがため息を吐くとユイに言う。

「気がするだけだろ。実際に血みどろになる訳じゃないんだから。」

ユイに取り消すつもりは無いようだ。

「もういい。」

そういうとムラマサは、またため息を吐いた。

「なんだ? 呑まないのか?」

ユイがムラマサに絡む。

「呑まないんじゃない。呑めないんだよ。刀がどうやって酒を呑むってんだ。」

そういうとムラマサは本体をユイの前に見せる。

「呑んでる連中いるけど。」

そういうとユイは陰と陽を指す。

確かに陰と陽が盃から人の分身体の方で酒を呑んでいる。

「どうやって呑んでるんだよ…」

ムラマサは信じられない物を見るような目で2人を見る。

実際ムラマサにとってはありえない光景だろう。

「まぁ、呑まないってんなら無理強いはせんよ。」

そういうとユイは魔法陣の中から一升瓶を取り出す。

ラベルを見てみると「鬼ころし」の名が書いてあった。

「『鬼龍』なのに『鬼ころし』を呑むのか?」

ムラマサは笑いながら言う。

ちょっとした言葉遊びだ。

「『鬼龍』だからこそ『鬼ころし』を呑むのさ。鬼を殺す数少ない物を克服すればそれだけ無敵に近付くだろ? 吸血鬼ももう少し日光に挑戦すればいいのにな。そうすれば日中でも動ける。ほら、弱点は銀とニンニクの2つだけだ。」

そういってユイは笑うと一升瓶に口をつけて直接呑む。

吸血鬼を出したのは恐らくムラマサの能力の事や「鬼龍」の2つ名を上手く取ったものだろう。

ムラマサは感心してユイが一升を飲み干すのを見守った。

「うぃ〜。」

ユイはさして酔った様子もなくまた魔法陣から酒を取り出す。

「お前、酔わない人間か。」

「竜人だっての。その気になりゃあ鬼を呑み潰して朝まで呑めるぜ。」

ムラマサは地底の鬼達を思い出した。

かつて山を納めていた鬼の四天王を呑み潰している様子がありありと想像できる。

そんな事を考えている間にユイはもう1本も飲み干すと、またまた魔法陣から一升瓶を取り出す。

今度は見たことの無い銘柄が書いてある。

「『砕月』?」

「幻想郷特産の銘柄さ。その酒の濃さには月をも砕く。そこから取って『砕月』だ。」

ユイは説明すると、盃に一升瓶を丸々空けると「砕月」を煽る。

その行動にようやくムラマサはユイが言わんとしていることが分かった。

「分かったよ…呑む。呑めばいいんだろ。」

そういうとムラマサはユイから盃を取り上げると恐る恐る口をつける。

(なるほど…血程ではないが不思議な充実感がある。仮にここでだけ飲み食いが出来たしても忘れられなそうだ。)

気付くとムラマサは「砕月」を全て飲み干していた。

「おぉ、いい呑みっぷりだな!」

そういうとユイは更に一升瓶を取り出してムラマサの盃に注ぐ。

「大丈夫なんですかね…」

離れた所で呑んで話し込んでいた妖夢は幽々子と妖忌に向かって言う。

「大丈夫じゃろう。」

「ユイは呑んでも酔わないから引き際は心得ていると思うわ。」

師匠と主人に言われては妖夢が言うことは無い。

「しかし、こちらの西行寺はあまり食べないのだな。我々の世界では中々の大食らいなのだが。」

妖忌が肴を行儀良く食べながら幽々子に話しかける。

「たまには私も小食になりたくなるわよ。」

そういうと微笑みながら盃を妖忌に差し出す。

妖忌は黙って、酒を注いだ。

その時、ムラマサ達の方で大きな音が聞こえる。

「私だって私なりに苦労してるんですぅ。アイツの扱いには本当に苦労してるんですよぉ。」

酒ですっかり口調が変わった陰がムラマサに絡む。

その側には陽がおり同じ様にムラマサに絡む。

「そうだぞてめぇ。別にお前の仕事が楽だなんて言ってるつもりはねぇんだよぉ。暗殺者なりに大変なことはあったかもしれんなぁ。だが、アイツの気まぐれがどれだけ面倒なのかをてめぇが知ってるかって言ったらそういう訳でもねえだろうにぃ。」

相当酔っているのか、まるで三下の様な台詞だ。

「そうだな。お前らの苦労なんぞ俺は知らん。だが、お前らも俺の苦労を知っているかといえばそうではないだろう。」

しかし、ムラマサは落ち着いて返す。

彼はユイと同じく呑んでも酔わない性質らしい。

2人の主人は素知らぬ振りで酒を呑んでいる。

「んだと!?」

「そんなに絡みたいならやるか?」

ムラマサは静かに刀を2人に見せる。

「おうよ、やってやろう!」

陽が答える。

「…そうか。ユイ、斬ってもいいか?」

「木刀で頼む。こいつらの悪酔いはいつもの事だ。」

ユイは片手をヒラヒラと振った。

もう片方の手には盃が乗っている。

援助する気は無いという事だろう。

「見物ぐらいならしておくかな。」

そういうとゆっくりと立ち上がり襖を開けてどこかへ歩いて行く。

恐らく先程まで戦っていたあの庭へ向かっただろう。

「やれやれ…」

ムラマサのため息が静かに響いた。

陰と陽が悪酔いしました。

ムラマサ、ご愁傷様…

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