出会い頭
ちょっと怒られそう…
いや、だいぶ怒られそう…
コツ、コツ、コツ。
白玉楼の長い階段を上ると妖刀、「ムラマサ」と魂魄 妖忌は慣れたように門を潜る。
門の奥には同じように見慣れた白玉楼が広がっている。
唯一違うのはそこが別の幻想郷であるという事だろうか。
だからと言ってムラマサ達のいる幻想郷が偽物という訳でもない。
いわゆる、並行世界だ。
「いやに静かだな。」
「そうだな。まるで敵対勢力の本陣に向かう気分だ。」
その時、白玉楼の庭師、魂魄 妖夢が出てきた。
側には見慣れない男の姿もある。
緑のミリタリーキャップに灰色のパーカー、黒い隙間模様が施されたデニムパンツに厚底のハイカットスニーカー、パーカーの下には黒い長袖を着ている。
妖忌が妖夢達に声をかけた。
「妖夢か?」
「…師匠ですか?」
「そうだ。」
しかし、妖夢の反応は妖忌の予想を覆した。
「どこか雰囲気が違う…」
「雰囲気?」
そう聞くのは隣にいた男だ。
「どう違うんだ?」
「師匠の魂の色がわずかに違うと言いますか…」
その言葉にムラマサが答える。
「確かに妖忌はお前の知っている奴とは少し違う。」
「どういう事だ? というよりまずお前さん誰? ちなみに俺は竜人のユイって奴だ。」
「変なところだけ常識人だな…まあいいさ。俺はムラマサ。見ての通り付喪神だ。」
ムラマサの挨拶にユイは驚いたように目を開いた。
と思ったらとんでもない奇行に走る。
腰に下げた2振りの剣に話しかけたのだ。
「おい陰、陽。本物の付喪神だぞ。ハル姐に強制に近い形で生み出されたんじゃなくて長い年月で本当に付喪神化した奴だ。」
からかうような表情をして剣に語る。
「おい。大丈夫か?」
ムラマサが心配そうに声をかける。
どこからか声が聞こえムラマサに答えた。
「失礼な。少々おかしい所はあるが我が主人は一応正常だ。」
ユイから見て右の青い剣から声が聞こえる。
「本当に生きてるのか…」
「そんなことより!」
いつまでも続きそうな会話に妖夢が一旦打ち止めをかける。
「魂の色が違っても師匠は師匠。これはどういう事ですか? 偽物なんて次元ではありませんよね。」
妖忌が頷く。
「我々は別世界から者ら、というのが一番馴染むだろう。」
「別世界?」
「あぁ、我々の世界の紫に言われてな。『陰猫が寝起きのねこって人とコラボするみたいだから向こうの方の世界で少し遊んで来なさい。』だそうだ。全く、訳がわからん。」
そういうと妖忌はため息を吐く。
「そりゃあ、大変だなぁ。どこの世界でも紫さんは『割と困ったちゃん』なんだな。」
そういうとユイはカラカラと笑う。
「ところで…ユイとやら、妖夢とはどういった関係だ? いくら別世界といえど孫は孫。返答次第では…斬らせてもらうぞ。」
妖忌が若干威圧するようにユイに聞く。
しかし、ユイはそれに怯える様子もなくすらすらと答える。
「一応、師弟。少し前には恋仲も加わった。そんなところかな。」
妖忌が静かに太刀に手を掛ける。
「おいおい、そんなに怖い目で睨むなよ。」
相変わらず飄々とした態度でユイは言葉を続ける。
「妖忌、やめとけ。こいつを斬ることの難しさはお前でも分かるだろう。」
妖忌の右手をムラマサは抑える。
妖忌はしばらくの間ユイを睨んでいたがやがて太刀から手を離した。
「分かっておる。」
<妖忌>
このユイとかいう男、かなりの手練れだ。
今の実力でも一太刀浴びせることが出来るか否かと言われるとなんとも言い難い。
飄々とした態度の中にあるのは静かに隙を見せるのを待つ剣士の目だ。
久しく、若かりし頃の気持ちが蘇る。
挑戦心。
あまり好戦的な方ではないが今回ばかりはこの者と本気で手合わせをしてみたい。
多くの者を斬ってきたこの腕がどこまで届くのか…
<ムラマサ>
こいつは危険すぎる。
おそらく俺たちを殺すことは赤子の手を捻るより簡単かもしれない。
しかし、この「殺戮者」の言葉が合いそうな殺気を必死に押し殺しているこいつの血を得たらどうなるのか…
妖忌も似たような事を考えているだろう。
恐ろしく強く俺たちでも敵うか分からない。
だからこそ、その見返りが大きい。
うまくいけば何年も耕す必要のない畑になり、失敗すれば一切の生き物がいない砂漠になる。
こいつの血が欲しい。
<ユイ>
こいつら、そんじょそこらの連中とは訳が違いすぎる。
殺したい訳ではない。
むしろ、まだ伸びる。
命を散らすその瞬間まで。
特に妖忌。
なるほど、手首の柔らかさとその威圧感ではかつての妖夢の剣術を使うはずだ。
自然と笑いそうになる。
柔と剛。
両方を兼ね備えるこいつは油断ならない。
ムラマサという付喪神も中々のものだ。
俺と同じ、「殺戮者」の匂いがする。
大量のものを斬った。
その真実を自覚して向き合ってなお、力を求め続ける。
さながら餓鬼のようだ。
こんな強者を連れてきた紫さんには感謝しなくちゃな。
<妖夢>
皆さんの考えていることがなんとなく分かります。
「戦いたい」
まるで腹を空かせた虎達の真っ只中にいる気分です。
1人は竜ですが。
火花を散らし合っているのが今にも見えてきそうです。
沈黙が気まずいです。
なんとか私が会話を作らないといけない流れでしょうか…
<陰>
強い。
私が1番に感じた彼らへの感想がこれだ。
力量の差を自覚していながらも挑戦心を滾らせる爺にどこまでも強さを求める付喪神。
腕の立つ証拠だ。
アイツでも勝つ見込みがあるかというと少し怪しい。
自然と武者震いが起こる。
ユイの剣としてでもだが、陰と陽としても戦ってみたい。
特にムラマサ。
あの付喪神がどんな戦い方をしてくるのかが気になる。
<陽>
どれほどの実力者か。
ちょっとでも武術をかじっていれば阿呆でも分かる。
鬼の集会の様だ。
もっとも、鬼達は自分の考えを隠す様な真似はしないが。
ムラマサか…
如何なものか。
ユイは知らないかもしれないが、日本でもっとも有名な妖刀と言っても過言じゃないだろう。
こちらの世界ではないとはいえ、幻想入りしていたとは。
<side out>
「えっと…ここでは体も冷えてしまうので部屋の中に移動しましょう!」
妖夢が提案する。
「そうだな。さすがに春間近とはいえ冷えては(戦うことが)かなわん。」
何か言葉を隠した様な気がしたが妖夢は聞かなかったことにして楼内へ向かった。
「あら妖夢。妖忌を見つけたのかしら? でもその様子だとどこかあの妖忌とは違うわね…」
「御察しの通りだ、西行寺。別世界から来た魂魄 妖忌だ。こちらはムラマサ。付喪神だ。」
「えぇ、よく知ってるわ。闇に生き、光に奉仕した守護者ですもの。」
「…そうか。こちらの世界は俺達の住んでいる世界より、少し先に居るのか。」
ムラマサが呟く。
幽々子は聞こえなかったふりをして妖夢に言う。
「妖夢、宴会にしましょう。別世界とはいえ、妖忌が帰って来たんですもの。」
「はい、今から作って来ますね。」
そういうと妖夢は台所へと駆けていった。
「俺も手伝うかな。」
そういってユイも妖夢の後を追おうとする。
「ユイには別の事をしてもらおうかしら?」
そういって幽々子は扇子を広げて微笑んだ。
「はいはい、白玉楼の主様は俺に何をせよと申し付けられるのですか?」
ユイが皮肉気味に言う。
「そうねぇ。妖忌達と手合わせなんてのはどうかしら? あなたがやられるのを見てみたいわ。なんてったって妖忌の剣術は幻想郷でも上位にいるんだもの。」
幽々子がしれっと本音を暴露しながらもユイに命令する。
「それもまた一興。仰せのままに。」
ユイはさも面倒臭そうに言う。
「あなたも雅が身について来たじゃないの。」
幽々子はそう言うとユイに向かって惹き込まれそうな笑みを浮かべた。
寝猫「今回はコラボありがとうございます!」
陰猫(改)氏(以下陰猫)「いや、あらすじでも言ったけどちゃんぽーーーーー」
寝猫「いや〜まさかお誘いが来るとは思いませんでしたよ。」
陰猫「誠に遺憾である。」
寝猫「して、どんな風にユイくんはそちらに登場するんですか? 彼は身体能力に関してはかなり御都合主義だった気がするんですが。」
陰猫「そこに関しては私のコラボの方を読んでください。」
寝猫「なるほど。ありがとうございました。陰猫さんの方のコラボもぜひ見てくださいね。と言うか、そっちの方から見ときなさい。」
陰猫「ところでねこさん。あなたの小説はちゃんぽnーーーーー」
寝猫「最後まで読んでくれてありがとうございました!」
陰猫「おうちょっと裏来いや。(怒)」
*あくまでもねこさんの想像です。陰猫さんはもっと紳士的な方なので誤解のなきよう。ねこさんが野蛮過ぎるだけです。