表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/20

ウイレム号とゴウセン号

 1850年、虎之助たちを乗せたオランダ船ウイレム号は長崎を出航した。光の源は適当に作った鼻歌でも歌った。

 

  おぉれのー 故郷はー うぅみぃのー なーかさー

  みんなー 一緒さー イヤえーろー 寒かろー

  空はー 青くー うぅみぃはー 広いー

  みんなー 一緒さー イヤえーろー 寒かろー

  カースーテーラーは やっちゃ美味かばい やっちゃ美味かばい やっちゃ美味かばい

  行ってー みよーぉでー よーそーのー 国へー

  みんなー 一緒さー イヤえーろー サブかろー

  今日もー まーた酒ば注ぐとばい 酒ば注ぐとばい 酒ば注ぐとばい

 

 黒酢の三太たちも一緒に歌った。

「何の歌だい」

「光様の光輝く潜水船さ」

「何だいそりゃ。沈没船か?」

「浦島だって船で竜宮城までいっただろ」

「そりゃ亀だ」

「でも何で太郎丸までついてくるんだ」

 出島では東南アジア系の人も働いていた。太郎丸もその一人だった。他の人たちは普通に働いていたが、太郎丸は少し手癖が悪かった。光の源たちとは知りあいで、源たちは黒潮の太郎丸と呼んでいた。

 太郎丸は時々、出島の倉庫でクスネた物を源たちに持っていって小銭に替えていた。

「ワタシいたから船のれたんでしょ」

 オランダ船の周りには大勢の役人がいた、そこで太郎丸たちの服を借り、炭を塗って、太郎丸より濃くなってしまったが、出島の者に化けて船に乗り込んだ。

「源さんたち、あっちでひと儲けするでしょ。仲間よ仲間」

「だから何度も言ってるだろ。オレたちゃ見物に行くだけだって。知らない所で仕事出来るわけねーだろよ」

 

 窮屈な船の中、倉場は毎夜悪夢に魘された。

 やっとオランダに近づいていた ある日暴風雨が襲った。海は荒れ雷鳴が轟き、眠りについていた人たちを起こした。倉場は魘され続けた。虎之助は声をかけたが声に反応する様子はない。

 船は更に大揺れ、轟音と共に強烈な稲光が船を襲った。倉場は雄叫びを上げ、皆は気絶した。

 でんでらの調べにのり、オランダ船は ゆっくりと反時計回りに一回転し始めた。

 夜が明けると嵐は収まっていた。船に大きな損傷はなかった。小夜は海を見ながら言った。

「昨夜の嵐が嘘のような、穏やかな海だね。……ありゃ船かい」

 遠くから船が近づいてきた。オランダ地方の船でゴウセン号と書かれていた。ゴウセン号の船長テオはウイレム号の船長ヘンドリックと挨拶した。船の違いに双方驚いていた。船長ヘンドリックは聞いた。

「我々は極東から十年振りにこちらへ戻ってきました。今の君主はどなたですか?」

「何十年も前からフランドル育ちのカール5世が君臨されておりましたが、このほどマルガリータ公妃が総督となられるようです」

「オレンジ公ではないのですか?」

「オレンジ公? はてオレンジ公領の領主のことですか? 大変有能な方とは聞いておりますが……」

 テオの話からは、今いるのは1500年代のオランダ地方のようだった。ヘンドリックはテオに事情を話したが、双方とも信じられらい事だった。話を聞いていた倉場は言った。

「私も信じられない事ばかり見てきました。或いは、夢の中の事ではないかとも思います。でもどうか、今は双方の言う事を信じて、双方の為になるよう考えませんか?」

 取り合えず、その頃の船と異なるウイレム号をテオが密かに使用していた無人島に隠す事にした。

 そして虎之助たちはゴウセン号でテオと共に英国へ、他の乗員は別の船でオランダ地方へ向かう事にした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ