頭が良かろうが
お待たせしました!
ちょっと今後の展開の構想をまとめているので、ゆっくり更新になりそうです
すいません
僕達は【グラフィレオラ】の首都【グリモダロ】に辿り着いた。
「でっかい塔みたいな建物が多いねぇ」
「あれは賢者達の研究施設ですよ」
「あれ全部がですか?」
「この国には30名以上の【賢者】がいますからね。彼ら全員の研究室があると考えれば、あれくらいは必要なのでしょう」
なるほどね。
っていうか、本当によく【賢者】だけで国が運営出来るね。
「【賢者】達は確かに自分の好奇心メインです。だからこそ、自分達の研究がしやすいように国を運営することにも全力になるそうです」
「あ~……なるほど」
「権力闘争する気にもならないんだねぇ」
「そういうことです」
それはそれで一般人達に被害がいかない?
よく暴動起きないね?
「この首都に住むほとんどの方は研究者です。または、その研究のための素材や機材を扱う商店ばかりです。なので、賢者達もここの人達を苦しめるような政策は出せないんです」
「なるほど。【賢者】として活動するためには、市民達を疎かに出来ないという構図が出来ているのですか」
「その通りです」
ここの住民に見捨てられたら研究が滞る。研究が滞れば、住民達も商品や素材が売れない。
持ちつ持たれつが見事に形成されているのか。
しかもここには各国の機密もあるみたいだから、他国も下手に手を出せない。
この国が滅びれば機密がどこに行くか分からないからね。
「さて、どう動こうかね?」
「流石に今から行って禁書がある図書館に入れるわけないですしね」
「まずは議員の【賢者】の1人に接触するのが第一目標ですね」
「じゃ、宿を取ったらあの塔を目指すとしよう」
「「「はい」」」
「は~い」
宿を取って、デビュを部屋に待機させて塔を目指す。
思ったよりこの塔、結構デカイねぇ。
サグラダファミリアみたいな塔が10棟もある。
それを囲むように大きな柵が立っている。
「……もしかして、一般人立ち入り禁止かね?」
「そのようですね」
「これじゃあ【賢者】に近づくどころじゃないねぇ」
柵に沿って歩くと、門が見えてきた。
ふむ?思ったより人の出入り多いね?それに若い。……学生?
「ここって学校も併設されてるの?」
「あ。確かそのはずです」
「あんまり有名じゃない?」
「ここの学園に通う者は、卒業してもそのままこの塔の研究室に入るらしいんです」
「だから他国にまで学園の名前が広まらないのか」
「はい。有名になった時は【賢者】になっている者が多いので」
なるほどねぇ。
……そこから攻めるか!
「学生ならまだガードは甘いよね」
「そうですね。まだ可能性はありますね」
「じゃ、2人程捕まえようか」
敷地から外に出る学生達の記憶を読んで、学生3人で一緒に住んでいる生徒達を見つけた。
シフラ以外は待機してもらって、2人で学生達の後を追う。
そして学生達が家に着いた瞬間を狙って、声を掛けて催眠状態にして、中にお邪魔する。
「「「……」」」
女子学生3人は椅子に座ってボーっとしている。
「これからどうするんだい?」
「もうちょっと記憶から情報を貰うつもりだよ。ついでにちょっと利用させてもらうつもり」
深青ショートに眼鏡のクール系女子の頭に手を添える。
記憶を読み取り、その後【記憶操作】と【操命】を発動する。
生まれたときから僕の従者で人形であるという記憶に入れ替えて、スパイとしてこの学園に潜入したことにする。
ついでに【変質】を発動して、この子の眼を【催眠】の魔眼に変える。
ふむ。これでそこそこ使える手駒になるでしょ。
残りの2人、茶髪ロングパーマのほわほわ系女子と黒髪ショートの無表情系女子にも同じ処置を行う。
「調子はどうだい?」
「「「はっ。異常ありません。ご主人様」」」
「じゃあ、言った通りに生徒やら教師やらを操って、禁書が管理されている場所や入る方法を集めてこい。行けるなら【賢者】にも接触していいよ」
「「「分かりました」」」
僕の言葉を一切疑うことなく、頷き学園に戻る3人。
さて、僕も行こうか。
「シフラは僕の分身と一緒にルティ達と合流して遊ぶなり、観光するなりしてて。僕は中に入って、探ってくるからさ」
「1人でいいのかい?」
「駄目だったら分身増やすさ」
「そりゃそうだねぇ。了解だよ」
シフラと別れて、僕は3人の記憶にあった男子の制服を作り出して、着替える。
そして、偽学生証も作り出して学園に向かう。
もちろんすんなりと入り込むことに成功。
「ふむ。拍子抜けだなぁ」
【賢者】で講師をしているのは、まだ自分の研究所を持てない若手らしい。
議員、または議員に立候補できるほどの【賢者】は塔の上の方にいるらしく、学生ではそこに入る事は出来ないようだ。
つまり、禁書があるなら上の階、または地下だな。
【探査】を使用して、中を探る。
ヒット!地下にデッカイ空間があり、封印されている場所がある。
「……本当に【賢者】がいるのか?随分とセキュリティが適当だな。警備の騎士や冒険者っぽいのもいない。まさか【賢者】だからって自衛にも自信を持ってるのか?」
「当たり前じゃないか」
「ん?」
訝しむように周りを見渡していると、男が声を掛けてきた。
輝くロングストレートの金髪を靡かせた白いコートを着た伊達男。白い手袋を身に着けており、不敵な笑みを浮かべている。
ふむ。このタイミングと今の返し方からすると。
「【探査】かな?」
「その通り。ここの秘密を探るなら探知系のスキルか、隅々まで歩き回るかのどちらかだ。探知系スキルを感知する魔道具を設置して、他にも一定の場所を短時間で歩き回った者を追跡する魔道具を敷地内に設置しているのさ」
「ふむ。なるほど」
「これが君を探し当てたことへの答え。そして何故、警備がいないかと言えば……」
パチン!と伊達男が指を鳴らすと、僕の周囲を伊達男と同じコートを着た男女の集団が囲む。他にもガーゴイルやミノタウロスを模した石像が数体現れる。
気づけば他の学生や職員はいなくなっていた。
「……【結界】か」
「よく気づいたね。そう!魔道具に感知された者は【裏グリモダロ】に閉じ込められ、我々に対処されるのさ。外では君がいなくなったことに気づいてる者はいない」
そう言えば、【グリモダロ】と言う名前は首都だけでなく、この塔と学園がある敷地のことでもある。
ふむ。なるほどね。わざと隙だらけに見せて、ここに連れ込んで確保するのか。
「【賢者】と言えば研究者をイメージするだろう?だけど、その研究テーマまでは気にしてないだろう?君は」
「そうだね」
「ならば、教えてあげよう。僕、【疾風の賢者】ゼッフェルの研究テーマは……『防衛』だよ」
ゴォウ!!と風を巻き上げて、ナオを見据えるゼッフェル。
囲んでいる者達も炎や氷を生み出したり、武器を構える。
ナオはポケットに両手を突っ込んだまま、周りを見渡す。
「……ふむ」
「大人しくして……いや、出来れば抵抗してほしいな。実証データを集めないといけないからね」
ニヤっと笑うゼッフェルに、ナオは特に反応することなく突っ立っている。
その様子にゼッフェルは訝しむ。
「何をしてるんだい?早く降参するのか抵抗するのか決めてくれないか?」
「ふむ。なら、こういうのはどうだ?やれ、お前ら」
「!!!」
ナオが命令を出した瞬間、ナオを囲んでいた者達が一斉にゼッフェルに向かってスキルで攻撃し、突撃する。
それに目を見開きながら風で攻撃を防ぐゼッフェル。
「君達!?何をしているんだ!?」
「黙れ!侵入者め!死ねぇ!」
「な!?」
「ほら、味方が裏切ったらどうするんだ?【賢者】殿。お前の研究成果と頭脳を見せてくれ」
「くっ!」
ゼッフェルはナオの言葉に歯軋りをして、攻撃を防ぎ続ける。裏切った部下達を傷つけないようにしているようだった。
ナオは変わらずポケットに両手を突っ込んだまま立っている。
「彼らに何をした!?」
「ん?記憶と魂を作り変えて、僕に服従させた」
「な!?ば、馬鹿な!全くそんな素振りは……!」
「時間を止めたからね。」
「……ありえん……そんな馬鹿なことがあるか!!」
「現実に君に襲い掛かってるじゃないか。そうだね……そこの剣を持ってる男」
「はい!」
ゼッフェルはナオの言葉を受け入れられなかった。
それにナオは考える素振りをして、ゼッフェルの目の前で剣を構えていた男に声を掛ける。
「胸を刺して自害しろ」
「はっ!」
ナオが命令した瞬間、男は剣を逆手に持ち、自身の胸に深く突き刺した。
「ごぶっ!」
「な!?何をしてるんだ!?」
「何って、お前が疑うから証明してやってるんじゃないか」
「っ!?」
血を吐き出して、剣も抜かずに倒れる男。
それにゼッフェルは声を荒げるが、ナオの言葉に再び目を見開いて絶句する。
「さて、議員でもないお前にもう用はないし、ここの構造も理論も分かった。終わらせようか」
「……何者なんだ……お前は……?」
「教えるのめんどいからヤダ」
ナオが右手をゼッフェルに向けた瞬間、ゼッフェルは声も出せずに燃えて塵になる。
「禁書庫は議員の【賢者】がいないとダメなのか。……そうだなぁ。もう一気にやっちゃうか」
ナオは洗脳した連中を封印して、持ち運ぶことにする。
そして、結界から抜け出す。
周囲は穏やかの雰囲気のままだった。
「じゃあ、やりますか」
ナオは魔力を一気に解き放って、行動を開始した。
シフラ達は分身したナオと、市場を見て回って宿の部屋に戻っていた。
コーリジェアとラクミルがナオとおっぱじめようとした時に、学園にいるナオから【念話】が届く。
『こっちは終わったよ。悪いけど一度、こっちに来てくれない?』
「ナオ様?」
「終わったって……もう?」
「とりあえず行くよ。僕に捕まって」
「「「はい」」」
「は~い」
ルティエラとシフラが首を傾げるが、ナオに促されてナオの体に捕まる。
5人は学園に転移すると、目に入った光景にコーリジェア、ルティエラ、シフラは目を見開いて固まる。
「ナ、ナオさん?」
「ん?どうしたの?」
「こ、これは……」
転移したのは巨大な講堂だった。
その講堂の席を人が埋め尽くしており、さらに20人ほどの老若男女が1人に戻ったナオの前に跪いていた。
「めんどくさかったからね。全員【操命】して洗脳したんだよ」
「ぜ、全員!?」
「そ。ありがたいことに【賢者】全員いたからさ。これでこの国は僕達のもの。禁書に研究成果、他国の機密もね」
「……流石【大魔王】……」
「だねぇ」
「すご~い!」
「素晴らしいです!」
ルティエラとシフラは壮大さに圧倒され、ラクミルとコーリジェアは興奮気味にナオを称える。
「しばらく面向きは普段通りに運営してもらうけどね」
「ということは……」
「うん。周囲の土地をもらって、国を作っていこうか。そろそろ他の魔王達も帰る場所を作ってやらないとね」
ナオの言葉にいよいよかとコーリジェア、ルティエラ、シフラは高揚する。
【大魔王】が遂に世界に大々的に牙を剥くことを決めたのだ。
「まずは下地を作って、その後にグラフィレオラを堂々と取り込んで、世界を慌てさせる」
「慌てさせる?」
「この国が魔王の手に落ちたなんて、最悪だよね。国の機密を奪われたんだから」
「なるほど」
「間違いなく僕達に従う国が出る。従わなくても、そう簡単に連合なんて組めないだろうね。魔王と裏で手を組んでる可能性がある限り」
「そうですね」
「そうやって手をこまねいている間に【クルダソス】を落とす。大国が崩れれば、さらに各国は慌てるよね。その間に僕達は国を大きくしていけばいい」
ナオの言葉に頷くコーリジェア達。
普通ならばここまで大胆な作戦は考えられないが、ナオがいる限り大胆どころか簡単な作戦にまでランクが下がる。
「まぁ、しばらくは禁書を漁るさ。コーリジェアはなんだったら機密を見てもいいよ」
「はい」
「ルティエラ達もしばらくはゆっくりしてて、冒険者稼業してもいいし、研究してもいいよ」
「難しいですねぇ」
「だねぇ」
「ひま~!」
ルティエラとシフラは悩ましそうに腕を組む。
正直、そこら辺の魔物相手では相手にならない。研究と言ってもやったことないので、意欲が湧かない。
ラクミルも興味沸かないのか、正直に言った。
それにナオは苦笑する。
「だよね。じゃ、分身するからさ。周りの国を攻め落としに行こうか」
ナオの言葉に頷くルティエラ達。
コーリジェアはここで調べ物や研究を見ることになった。
「さぁ、勇者を出迎える準備を始めようか」
ニヤァと笑いながらナオは世界を侵食する準備に取り掛かるのだった。