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閑話 勇者その4

よろしくお願いします。

 【ゼウバドル聖国】にいる間藤達は、迷宮の奥にある聖剣を手に入れるために突入を開始した。


「いよいよだな」

「はい。何としてでも手に入れないといけません」

「分かってるさ」


 気合を入れている間藤に、フェンネナは念を押すように声を掛ける。

 今回の突入は神殿騎士団精鋭を20人。そして、間藤達【界使】9人全員を投入している。これで駄目ならもはや術はないと考えられている。

 間藤は神殿から与えられた白銀の鎧を身に着けている。腰には同じく白銀の鞘に納められた剣を差している。

 他の【界使】達も同じく白銀の装備を与えられており、気合を入れている。


「少なくとも1週間は確実か」

「はい。安全を期するを致し方ありません」

「分かっているさ。せっかく聖剣を手に入れたのに皆が倒れたら意味がない」


 間藤の言葉に周りのクラスメイト達は嬉しそうに笑う。

 それをフェンネナは微笑んで見つめているが、内心では少し冷めた目で見ていた。


(悪いことではないのですが、戦いに対して少し理想が入り込み過ぎているのが、やはり不安材料ですね)


 誰も倒れない戦いなんてありえない。それを理解し、覚悟しているようには見えなかった。

 時折魔物が間藤達を襲うが、神殿騎士を主体に問題なく倒して行く。

 間藤達も訓練は積んできているので、特に異常にパニックを起こすことなく、魔物を倒して行く。

 それにフェンネナは少し安心した。


「初めての魔物討伐になりますが、皆様問題なさそうで何よりです」

「ありがとう。そうだね。もう少し命を奪うのに抵抗が出るかと思ったけど」

「今は出ないのはいいことだろ。もっと頑張ろうぜ!」


 親友の太田黒はニカッ!と笑いながら、拳を握る。

 それに間藤も笑って頷く。

 そうして進み続け、初日は5階層ほど下りて休むことになった。

 この迷宮は5階層ごとにセーフティーエリアが設定されている。


「いい感じに進めてますな。少なくとも判明している所までは4日と掛からないでしょう」

「そうですか。それは良かった」


 フェンネナに話しかけているのは神殿騎士団副団長のスタルカという男性だ。

 純白の鎧を着ている金髪を丸刈りにした30代の男性だ。今回の迷宮攻略における騎士団のリーダーだ。騎士団長は地上で警備に努めている。


「問題はこの迷宮が何階層あるのかということですね」

「そうですな。分かっているだけで28階層。伝承では40階層は無いだろうと言われてますが」

「迷宮ですからね。何が起きるかは分かりません」

「はい」


 フェンネナは立ち上がり、右手を掲げる。


「【紙の防壁】」


 バラバラと紙が飛び交い、壁を覆っていく。通路を塞ぎ、少しばかりの空気穴を開けて、シェルターのようにする。


「これは?」

「簡単ですが結界のようなものです。ここも必ず安全だとは限りませんので」

「凄いな。それがフェンネナ姫のスキルですか?」

「えぇ。【紙の聖女】ですから」


 フェンネナの【紙の聖女】は紙を操る。魔力を紙に変えることもできる。紙に文字を刻んだり、折り紙で形を作ると、その内容の効果も発言できる事も出来る。


「少しばかりは火にも耐性を付与しています。いきなり燃え散ることはないでしょう」

「本当に凄いな」

「私が出来るのはこれくらいですからね」


 間藤の誉め言葉に少し微笑んで謙遜するフェンネナ。それに間藤の後ろに控えていた城戸は、嫌そうな顔をする。他の女子達もフェンネナの事を間藤に媚を売る売女のように見ている。

 しかし、役に立っているのも事実なので、言葉にして文句は言わない。


 ややギスギスしながらも仮眠と食事を摂る一同。

 

 そして2日目に突入した。

 疲れを見せずに進む一同。


「やっぱりこの世界に来てから体力とか身体能力の上がり具合は凄いな」

「そうだな。本の虫だった忠見も普通に付いてきてるもんな」

「う、うん。自分でもびっくりだよ」


 忠見 菊乃(ただみ きくの)。黒髪姫カットに眼鏡のザ・文系女子だ。実際に図書委員で本をずっと読んで過ごしていた。

 もちろん運動なんて大の苦手。それが普通に早歩きかつ戦闘もして、野宿までして疲れてない。忠見でこれなのだから他の者も当然それ以上の状態だ。


「忠見さん。辛いなら言ってくれ。忠見さんのスキルは欠かせないものだからね」

「うん。大丈夫だよ。間藤君」


 忠見のスキルは【魔物事典】と【弱点看破】。一度見た魔物の情報を事典のように登録し、いつでも引き出せる。全く知られていない魔物でも生態や弱点が記されるため、かなり重要だ。

 そして初見の魔物や人でも一瞬で弱点を見抜くことが出来るため、戦いでは欠かせない存在になっている。

 

「魔物だ!」

「行くぞ!ライト・レーザー!」


 魔物出現を聞いて、間藤は閃光を放つ。

 それに狼のような魔物は頭が吹き飛んで倒れる。


「おらぁ!」


 太田黒は両腕を突き出すと、巨大な両手が通路全体に現れ、魔物達を押し飛ばす。


「えぇい!!」


 続いて城戸が風を巻き起こして、魔物達を斬り刻む。

 太田黒のスキルは【空掌】と【炎】。城戸は【風】と【光】だ。

 他のクラスメイト達もスキルで倒して行く。

 程なくして魔物達は全滅した。


「よし!」


 間藤は満足して頷いている。


「お見事です」


 フェンネナも微笑んで称賛する。


(問題は守護者とされる魔物達ですわね。長い間倒されていない。どれだけの力を持っているのかが分からない)


 下に行けば行く程、もちろん魔物は強くなっていく。その中には門番の役割を持つ強力な魔物がいる。普通の迷宮なら冒険者たちが倒しているのだが、この迷宮は神殿が管理しているのでかなりの期間誰も入っていない。

 フェンネナは不安を抱えながらも、10階層に到着した。


「ここに門番がいるんだね?」

「はい。そのはずです」

「どんなのがいるんだ?」

「今までの伝承では【アダマンタイト・ゴーレム】です。魔法・物理両方に耐性が強いと言われています」

「……最初がそれか」


 フェンネナの説明に間藤は顔を顰める。


「とりあえず開けてみるしかないか。もしかしたら違うかもしれない」

「その通りです」

「よし!行くぞ!」


 間藤は勇気を出して、扉を開ける。

 中に入ると、扉が閉じる。

 大きな部屋の中にいたのは、


「あれが?」


 部屋の真ん中には鈍い灰色をした鉱石を纏った全長4m程の人形がいた。


「いえ……あれは……」

「ただの【アイアン・ゴーレム】です!」


 フェンネナは眉間を顰めて首を傾げると、忠見が叫ぶ。


「アイアン・ゴーレムって……下から数えた方が早いよな?」

「そうだったような……」 

「……何故?誰も入っていないはずなのに」


 フェンネナや神殿騎士団の面々は唖然としている。

 そんな疑問を考えさせまいとゴーレムが動き出して、間藤達を目掛けて走り出した。

 

「今はこいつを倒そう!ライト・セイバー!」

「爆熱掌!!」


 間藤と太田黒がゴーレムに攻撃する。

 ゴーレムは表面を大きく削られながら、後ろに吹き飛ぶ。

 そこに他のメンバーも攻撃を仕掛ける。

 ゴーレムはあっという間に砕け散った。


「……どういうこと?何が起こっているの?」

「偶々ってことは?」

「あり得なくはないですが……ここまでランクが下がるなんて」


 フェンネナは混乱している様子で考え込んでいる。そこに間藤が偶然の可能性を示唆する。フェンネナはそれを否定はしないが、それにしては弱くなりすぎていることはおかしいと考える。


「魔物の種類が変わることならあり得ます。しかしそれでも魔物のランクはそこまで変化はありません。なのに……」

「魔物の種類は同じで、ランクだけが下がっていた、と」

「はい」

「こういうことが起こることは?」

「あります。……誰かが直前に高ランクの魔物を倒していれば」

「!!……それって!!」


 フェンネナの言葉に全員に緊張感が走る。フェンネナの言葉が正しければ、誰かが先にここに入り込んでいることになる。

 

「ここに入る方法は教皇しか手段を持ちえません。それを私が預かって今ここに居ます。他の者が入り込むのはあり得ないはずです」

『それが本当に教皇しか持っていないのであれば、ですが』

「「「「!!」」」」


 突如、響いた声に全員が目を見開いて驚愕に固まる。

 全員が声をした方を見る。


 部屋の出口側にいたのは黒いフルフェイスの兜を被り、紺色のマントを羽織っている騎士が立っていた。


「誰だ!?」

「敵に決まっています」

「どうやってここに!?」


 間藤の問いかけに淡々と答える騎士。声では性別が分からなかった。

 それにフェンネナはどうやって入ったのか問いかける。

 その問いかけに騎士は懐から何かを取り出し、フェンネナの足元に向かって放り投げる。

 転がってきた物をフェンネナは拾い上げて、大きく目を見開く。

 それはフェンネナが教皇から預かったここの鍵と同じものだったからだ。


「そんな……!なんで……!?」

「それは今から200年前、我が主へと当時の教皇から献上されたものです」

『な!?』

「どうやら今の教皇は知らないようですね」

「そんな馬鹿な!?教皇が秘宝への鍵を!?」


 敵騎士の言葉にフェンネナやスタルカが叫ぶ。

 それに敵騎士は全く感情の起伏を感じさせずに答える。


「死にたくなかったから、と推測します。鍵を渡すくらいで大魔王から見逃せてもらえたのですから」

『な!?』

「まさか大魔王はここを攻める力がない、とでも思っていたのですか?逆です。いつでもこの国を殺せるからどうでも良かっただけです」


 間藤達全員が息を飲む。

 すでにこの国は魔王の牙が食い込んだ後だった。ただ、噛み切らなかっただけ。

 敵騎士は扉を開けて、間藤達に背を向ける。


「サービスとのことです。これからの門番はすでに一度倒しています。なので全て最低ランクの魔物ばかりになっています。ゆっくりと、聖剣を目指しなさい」

「っ!!待て!!」


 間藤が声を上げるも、敵騎士はそのまま姿を消した。

 見送るしか出来なかった間藤達には絶望感が襲い掛かる。


「どうするの!?勇志君!」

「このまま進んでも敵の手の平だぞ!?」

「そもそも聖剣はあるのか!?」


 クラスメイト達は恐怖に混乱し、思い思いに叫ぶ。


「落ち着け!!」

「まだ敵は聖剣を手に入れることは出来ません!最後の扉だけは鍵などないのですから!」


 間藤とフェンネナの言葉に全員が少し落ち着く。


「聖剣が封じられた扉は【光の勇者】と異世界人の血の2つが揃わないと開きません。恐らく敵の狙いはそこです」

「じゃあ、どっちにしろ危険じゃないか!!」

「聖剣も同じくです。これは口伝のみで伝わっていますが、聖剣も使うには同じくその2つが必要です。ですから敵が使えるわけではありません」

「けど、間違いなく魔王一派も待ち受けている、か」

「それは……」


 間藤の言葉にフェンネナは顔を俯かせる。それだけは誤魔化しようがない。

 

「……でも行かないと聖剣も手に入らない。そうなると、それこそ魔王たちの思うがままだ」


 間藤は両手を強く握って自分に言い聞かせるように話す。

 それにフェンネナも頷き、太田黒も頷く。


「進もう!ここで逃げたら、もう戦えなくなってしまう!」


 そう言って、歩き出す間藤。それにフェンネナや太田黒が付いていく。それに感化されて続々と付いていく一同。そして、全員が再び前を向いて歩き出した。


 間藤達はそのままほとんど休むことなく突き進んだ。

 敵騎士の言う通り、門番は本当に最低ランクの魔物ばかりだった。

 25階層で長めに休み、一気に最下層まで進んだ。

 35階層が最下層だった。


「ここに奴らもいるはずだ!気を付けろ!」

「聖剣はどこだ!?」

「あそこだと思われます」


 間藤達は円形に構えながら、ゆっくりと中を進む。

 そしてフェンネナが示した方向に進む。


「いない?」

「どうなってんだ?」

「姿を消せる可能性がある。気を抜くな」


 そして2本の剣が十字に交わっている紋章が描かれている大きな扉に近づく。

 

「どうすれば開くんだ?」

「扉に触れてください」


 言われるがままに扉に触れる間藤。

 すると、ズズズ!と音を立てて扉が開いていく。


「よし!」

「気を引き締めろ!来るぞ!」


 それにクラスメイト達が喜ぶが、スタルカが怒鳴って気を引き締め直させる。

 扉が開くと、中には通路が続いていた。


「一気に行こう!」

「【界使】と姫様は先に!我ら騎士団は殿を務めるぞ!」


 間藤とスタルカの言葉に一気に走り出す一同。

 進むと壁や床が黄緑色に淡く輝き出す。通路の奥の光が強くなっていく。


「あそこです!」

「急ごう!」


 間藤達は走る速度を速める。

 そして開けた部屋に出た。


『!!!』


 その部屋の光景に足を止めて、目を見開いた。


「お。ようやく来たね」


 聖剣と見られる白銀の剣が部屋の奥の祭壇に刺さっており、その横に黒いフードとマントを被った人物が立っていた。祭壇の前にはあの騎士が立っていた。


「そんな!?どうやって!?」

「鍵を開けてから誰も通っていないはず!」


 フェンネナや間藤は衝撃を抑えきれなかった。

 すると、フードを被った人物が答える。


「時間を止めたんだよ」

「……え?」

「だから、時間を止めたの。僕達は君達の横を歩いてここに来ただけさ」

「そん……な……!」

「しかし!聖剣には手を出せません!」

「あぁ。うん。聖剣はいらない」


 僕と言うことから男だと判断するフェンネナ。フードの男の言葉に気が遠くなりそうだったが、懸命に耐え、聖剣を盗もうとしても無駄だと告げる。

 しかし、フードの男はあっさりと目的は聖剣ではないと告げる。

 その言葉にますます混乱するフェンネナや間藤達。


「ならばなんでここに!?」

「これだよ」


 間藤の問いにフードの男は右手に持ったものを掲げる。それは手の平大の赤い宝玉だった。


「それは……?」

「聖剣に取り付けられていた神の力を秘めた宝玉だよ」

『な……!?』

「昔、鍵をもらった教皇から話を聞いててさ。神王の力が込められてるから、欲しかったんだよねぇ。でも開けるには【光の勇者】と純血の異世界人がいるって分かってね。この日を待ってたんだよ」

「魔王の手の者が神王の力をどうする気だ!」

「こうするんだよ」


 間藤の叫びにフードの男は宝玉を黒い影で包み込む。それは飴玉ほどのサイズになる。

 

 それをフードの男は口の中に放り込んだ。

 

 その際に顔を上に向けたためか、フードが落ちる。


『なぁ……!?』

「ん……ぐ……くはぁ!……ごちそうさまでした」

「……え?……お、お前は……!」

「う……そ……」


 宝玉を飲み込んで顔を間藤達に向けた男。

 その顔に間藤達【界使】達は目を見開いて固まる。


「……ユウシ様?」

「馬鹿な……なんで君がここに居る?……君は死んだはずじゃないか!!」


 フェンネナや神殿騎士達はその様子を訝しむが間藤達はそれどころではなく、無視をして男に向かって叫ぶ。


「梶島奈央!!」


 その顔は間違いなくこの世界に来る前に死んだはずの梶島奈央だった。

 髪や目の色が変わって、雰囲気もかなり違ってはいたが。


「あれ?なんでバレたの?」

「主。フードが脱げています」

「あれま。しまったなぁ。仮面でも被っとくべきだったか」


 ナオと騎士はのんびりと話している。 

 それに間藤は苛立ちを抑えきれずに怒鳴る。


「ふざけているのか!?どういうことなんだ!?君は、この世界に来る前に死んだはずだ!!」


 その言葉にフェンネナは目の前の存在の正体を把握する。

 確かに聞いてはいた。召喚の際に犠牲になった異世界人がいると言うことを。


「あの者が……?」

「答えろ!君は佐竹に落とされてこの世界には来れなかったはずだ!」

「まぁ、そこは偶然なんだろうね。梶島奈央はこの世界の過去に飛ばされたんだよ」

「過去に……?」

「そ。梶島奈央はこの世界の過去に現れたんだ。そして、そこで()()()()()()

『な!?』


 ナオの言葉に全員が絶句する。


「そうして生まれたのが僕。僕は残念ながら、もう君達が知っている『梶島奈央』じゃないよ。君達の敵。僕こそが神が君達を召喚する原因になった魔王だよ」

「……は?」

「理解できないかい?そうだよねぇ。理解したくないよねぇ。君達が呼ばれたせいで、この世界は破滅の危機にあるんだからさ」


 間藤もフェンネナもナオの言葉を聞いてポカンとする。しかし、徐々に意味が理解出来たのか、顔から血の気が引いていく。


「君が……魔王……?俺達が呼ばれたから、この世界は危機になった……?」

「正確には【大魔王】だね。そして、神が呼んだからっていうのが本当の所だから一番悪いのは神々だけどね」

「そ……んな……」

「まぁ、もう原因の佐竹は死んだし、君達にそこまで恨みはないけどね」

「っ!!そうだ!佐竹!あいつは君が!?」

「そうだよ。正確には僕の人形にやらせた。いや~まさかさぁ、一番の標的が一番雑魚だったのは拍子抜けだったよ~。おかげでどうでも良くなっちゃった」


 ナオはお道化たように両手を広げて肩を竦める。

 それに間藤達は本当に変わったんだと理解してしまう。


「……今すぐ酷いことはやめるんだ。そして世界中に謝罪を」

「冗談。僕は謝るようなことはしてないよ?実際、僕の国では国民達は笑いながら生活してるよ?他の国だって影では僕達の支援を受けてるしねぇ。むしろ僕がいなくなる方が世界に混乱呼ぶよ?他の魔王や異王を抑え込んでるのが僕なんだから」

「……!!」


 間藤はナオにやめさせようと説得を始めるが、ナオはむしろやめたら世界中が困ることになると言う。それに間藤達は目を見開き、中途半端な行動は解決にならないと悟る。


「あっと、これを取りに来たんだっけ?ほい」


 ナオは横に刺さっている聖剣を抜いて、間藤に向かって放り投げる。カランカランと聖剣は地面を滑って間藤の足元に来る。


「剣としては一級品だからさ。代わりの宝玉入れれば使えると思うよ」

「……!!」

「……お待ちください」

「ん?」


 間藤は聖剣を見下ろして絶句する。そこにフェンネナが前に出てナオに声を掛ける。


「あなたはこれから何をするつもりですか?」

「特に決めてないかな」

「……聖国に攻め入る気はないと?」

「僕はね」

「……というと?」

「君の国に恨みがある連中がいるから、そいつらの動きは止める気はないってことさ。急いで帰った方がいいんじゃない?」


 ナオの言葉に目を見開くフェンネナ。

 それを見たナオは肩を竦めて、騎士の近くまで歩み寄る。


「じゃ、僕達は帰るとするよ」

「っ!!待て!梶島!」

「あぁ。まだ名乗ってなかったね」


 ナオを呼び止める間藤。それにナオはまだ名乗ってないことを思い出した。


「僕はナオ・バアル。【大魔王】ナオ・バアルだよ」

「我が名はアデライデ・ボッヘルノード。【奈落(アップグルント)騎士団(・リッターオルデン)】副団長を拝命している」

「アデライデ……?」


 ナオとアデライデの名乗りにフェンネナは少し眉を顰める。


「じゃあね。間藤君達」

「ま、待て!!」


 間藤はもう一度呼び止めるが、ナオとアデライデはフッ!と姿が消える。


「くそっ!!」

「勇志……」

「一体どうなっているんだ……!」

「……まずは……ここを出ましょう。その聖剣の処遇も、対策も考えないといけません」


 間藤は右手で頭をグシャッと掴んで呻くように呟く。それにフェンネナは出来る限り優しく声を掛けて、行動を促す。

 間藤はその言葉に顔を顰めたまま頷き、聖剣を拾い上げて歩き出す。

 それに周囲も顔を暗くして歩き始める。


 しかし、更なる絶望が間藤達を待ち構えていたのであった。


ありがとうございました。

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