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43/53

君はどこを目指すんだい?

お待たせしましたm(__)m

よろしくお願いします。


 神界


 ゼウスガイア、サダルマキアは顔を顰めていた。


「街がまた消えたか」

「はい。サグネディドにヤブンハールだけではない、ということでしょう」

「はぁ~。なんてことだ」


 ため息を吐いて頭を抱えるゼウスガイア。

 ここ数か月で封印されていた魔王や新たな魔王があちこちで生まれていた。それにより国や街が物凄いスピードで壊滅していく。

 そこにさらなる凶報が届く。 


「神王!大変です!【ポップラ】の森が消え去りました!」

「なんだと!?」


 ゼウスガイアは思わず立ち上がってしまう。

 

「あそこの森は確かユグドラシルアの分神がいたはず!ユグドラシルアは!?」

「ユグドラシルア様は無事です。消滅の直前に分神を回収していたとのことなので」

「なに?」

「神王。あそこの森には転生者が現れていたとの報告がありました」

「あぁ……確かに。もしやそいつが?」

「いえ!分神を回収した理由はその転生者ですが、森を消したのは別の者です!その者の情報を得ることが出来ました!」

「本当か!?すぐさま上級神を集めよ!」

「はっ!」


 吉報を聞いたゼウスガイアは指示を出して、自分達も移動を開始する。


「ヤブンハールやサグネディドが現れたのは【クルダソス】と【ポップラ】の間。もしや奴らを目覚めさせたのもそいつか?」

「可能性はありますな」


 ゼウスガイア達は関連性を疑う。

 そして上級神が集まり、その情報を見て全員が頭を抱える。


「こいつは前にも疑いを掛けられていた奴ではないか!?」

「どういうことだ!?天使達の報告では……!」

「嵌められたんだろうな」

「おのれ!」


 遂に神はナオの存在を把握する。


「しかし……なぜここまでバレなかったのだ?」

「そうですな」

「その者は強力な【闇】の力を持っています」

「マジェネリア!」


 何故ナオの存在に気づかなかったのか。一度見逃してしまったのか。

 それに神達は首を傾げると、そこに倒れていたマジェネリアが現れる。


「大丈夫なのか?」

「申し訳ありません。神王様。無理に未来を見なければ大丈夫です」

「そうか。それで?強力な闇と言ったな?」

「はい。その者は魂をも消滅させるほどの【闇】を扱っているのです。恐らく今まで滅んだ街の情報が手に入らなかった理由はそれかと」

「そういうことか……!」


 マジェネリアの言葉に漸く全員が理解する。


「【闇の魔王】ということか」

「いえ。恐らくそんなものでは収まりません」

「なに?」


 ゼウスガイアはナオの通称を決めるが、それをマジェネリアが否定する。

 それにゼウスガイア達は顔を顰める。


「なんとか見えた未来のビジョン。それは……その者がヤブンハールやサグネディドを筆頭に多くの魔王を

従えている姿でした」

「何だと!?」

「馬鹿な……!?」


 衝撃的な発言に上級神はもちろんゼウスガイアも絶句する。

 あのヤブンハールやサグネディドを従える者など今まで現れたことはない。


「魔王を従える魔王…か。遂に生まれたというのか。【大魔王】が」

「……そんな」

 

 今まで【大魔王】が生まれたことはない。

 理由は簡単。魔王が乱立したこと自体が稀であり、大抵の魔王は他の魔王と殺し合いをしていたからだ。さらに【大勇者】などが【大魔王】になる前に魔王を討伐・封印していたことも理由としてあげられる。


「くそっ!下界に降りる魔力は世界にはない。聖域でも中級神が限界だ」

「とてもではないが【大勇者】でもヤブンハールには敵わん。それを従える者など尚更無理だろう」

「では、どうすればいいのだ!?」


 上級神達の会議は紛糾する。

 ゼウスガイアも頭の中が混乱しており、治めることが出来ない。


「異世界の者を召喚することは可能でしょうか?神王」


 1人の上級神がゼウスガイアに提言する。

 それに他の上級神達もゼウスガイアに注目する。


「可能ではあるが……1人2人では呼んだところでは【大勇者】にも届かん。しかし大人数呼ぶにはいささか魔力が足りん」

「……最悪、下界の人数が極端に減れば世界の魔力には余裕は出る」

「それは……!?」

「そうだな。我らがその決断を下すことだけはならん。それでは我らこそが魔王となるぞ。サダルマキア」

「はい。分かっております。私が言いたいのは、【大魔王】達が暴れれば暴れる程それが可能になる、ということです」


 下界の存在は生まれる際に世界の魔力を使う。そして生きている限り、無意識に世界の魔力を少量使っているのだ。だからこそスキルを使うだけの魔力が残るのだ。


「そういうことか……。それが可能になるまでは、下界の者達は苦難に耐えるしかない……か。これで神など、世界の管理者などとは笑わせるな」

「……神王」

「分かっている。無い物強請りは出来ん。竜王達や精霊王達にもこの者の情報を分かる限りで渡せ。備えなければならん」

『は!』


 ゼウスガイアの言葉に上級神達が答える。

 こうして世界中にナオの存在が伝えられることになった。




 僕達は漸く【グラフィレオラ賢国】国境に辿り着いた。


「そこの馬車!止まれぇ!」


 国境にいる兵士が僕達の馬車に声を掛ける。

 もちろん突如消えた森の調査のために来ていたのだ。

 僕は顔を出す。


「お疲れ様です」

「すまないが素性を聞かせてもらう!何があったか知っているか!」


 もちろん聞かれるよね。

 僕達は馬車から降りて、ギルドカードを出す。

 もちろん馬車の中は偽装して、見た目通りの幌馬車に見えるようにしてある。


「僕達が知っているのは【ポップラ】と【ヴォッパン】が戦争していたくらいですよ」

「それはこちらでも把握している」

「僕達は……まぁ、密入国?って感じで隠れながら【ポップラ】を抜けてたんですよ。エルフ以外は入らせないって言われてたでしょ?」

「うむ。突然の宣言にこちらも驚いた。まぁ、【ポップラ】は入国管理などしていないから大丈夫だ」

「それは助かるよ。それで。隠れながら進んでたんだけど、いきなり森が消えていくから驚いてね。地面に穴を掘って隠れてたんだ」

「……ふむ。何が起こったかは分からない…と?」

「分かるわけないでしょ?こんな現象」


 兵士は少し睨むようにこちらを見るが、僕は肩を竦める。

 しばらくの間、兵士はこっちを睨んでいたが、納得というか諦めて肩を落とす。


「はぁ~。そうだよな。分かるわけないよなぁ」

「そっちの賢者様達は動かないの?」

「まだ情報が足りなさ過ぎてなぁ。危険なところに来させるのも難しい」


 ふむ。思ったより重鎮扱いされているな。

 まぁ、この国の象徴だし、いつ議員になるか分からないのもあるんだろうけど。

 だからこそ、下手に呼べないか。


「賢者だったら、そんなの関係ないと言って出てきそうだけど」

「それを殴って止めるのが俺達の仕事さ」


 殴るんかい!?

 まぁ、実力行使くらいじゃないと止められないのかね。

 馬車の検閲が終わり、ギルドカードが返却される。

 

「協力感謝する」

「どーも」


 特に何も言われなかったので馬車に乗って出発する僕達。

 

「賢者だったら出てくるかと思いましたが」

「そうだねぇ。次の街にはいるんじゃないかい?」

「その可能性は高いでしょう」


 ふむ。その可能性はあるか。

 

「ナオ様。次の街はどうされますか?【ヴォッパン】の者達もいつかあの国境に来るでしょう」

「あぁ~。ドッカンから僕達のことバラされるか」

「その可能性はあるねぇ」

「でも、それはこの国にいる限り同じでは?」

「それもそうだね。次の街は無視して、首都を目指そうか。図書館行く前に面倒ごとは少ない方がいい」

「無理だと思います」

「だねぇ」

「む~り~♪」


 ラクミルが歌う様に否定する。

 僕もそう思うけどね。


「街の外で暴れるならまだ誤魔化しようがあるからね。いちいち街毎証拠隠滅するのは面倒だよ」

「まぁ……ねぇ」

「街を避けた結果、国を消すことにならなければいいですが」


 うっさいよ。

 【ポップラ】は向こうが仕掛けてきたんだし、【ヴォッパン】は無事だろう?

 

「そうですがね」

「な~んか嫌な予感しかしないねぇ」

「む~り~♪」


 何がだよ。

 流石にこの国で内乱が起こることはないだろう。


「私もそう思います。この国は賢者達が治めてはいます、決して自分達のために重税をすることもないことで有名ですから」


 コーリジェアが言う。

 そうなんだよね。この国って文句があるなら議会に要望書を書けば議論してくれる。

 なぜ議員の賢者がそこまでするのかと言うと。

 『反乱なんぞ起こされたら研究が滞るではないか!』ということであるからだ。

 まぁ、自分勝手ではあるけどね。

 良い事ではあるからいいんだろうさ。


「まぁ、とりあえず進もうか」


 僕は運命まで操る気はない。

 何かが起こるなら、起こったことに対して力を振るおう。

 

 その方が、面白いじゃないか。


 

 

 街を無視して進み、入国して5日。

 首都までは後一週間というところだ。


「この近くに町があるようですが?」

「通過で」

「ホント、ナオ様がいると買い物しなくていいからねぇ」

「観光名所があればともかく、何もなければ寄る価値なし」

「観光名所ですか……回れたことなんてほとんどないですねぇ」


 ルティエラ。それはコーリジェアの心を地味に抉ったぞ。多分。

 まぁ、確かに満足に観光名所なんて回れたことはないけど。


「マスター」

「ん?」

「前方に町らしきものを確認」

「だから通過……待て、『らしきもの』?」

「イエス」


 デビュの言葉に前方を確認する。

 そして、


「ここで降りるよ」

「え?」

「どうしたんだい?」


 馬車を止めて、降りる準備をする僕。

 ルティエラ達が首を傾げる。

 僕は面倒だという表情を隠さずに向ける。


「町が何かに襲われてる。魔王っぽい」

「「「え?」」」

「このまま行ったら襲われる。馬車を壊されるのは面倒だからね。降りていくよ」

「魔王ですか!?」

「知ってるやつかい?」

「いや。初見」

 

 馬車から降りて、収納する。

 そして町へと近づいていく。

 町からは悲鳴と怒号、そして笑い声が聞こえてきた。


「楽しそうだねぇ」

「どんな奴なんだい?」

「筋肉もりもりの大男」

「強いのですか?」

「どうかねぇ。でも、厄介なスキル構成ではある」

「といいますと?」

「【重積】【魔光】【転換】に【砂】。そして【憤怒の魔王】」


 僕の鑑定結果に全員が息を飲む。

 嫌な組み合わせだよねぇ。

 ちょ~っと厄介かな。


「ちょっとで済むんですか?」

「すまないかもね」

「ほっとくかい?」

「もう見つかってる」

「「「えぇ~」」」


 町の方からズシャ!ズシャ!ズシャ!と歩いてくる大男。

 上半身は裸で、下は腰布を巻いているだけで裸足。

 ザ・野蛮人だけど体格と雰囲気のせいか、剣闘士みたいに見える。


「なんだぁ。また馬鹿共が来たのかぁ?」


 大男、グバンって言うのか。グバンはニヤァと笑いながら右腕を町に向ける。

 そして、右手から赤い光を発射して町を吹き飛ばした。

 砂埃と衝撃が飛んできたが、僕とルティエラで風を起こしてそれらを受け流す。

 

「フハハハハハハハ!!これからお前達もこうなるのだぁ!!」


 グバンは高笑いしてこっちを見下ろす。

 ふむ。なるほどねぇ。可哀想な経験ではあるんだろうね。

 僕に比べればって感じだけど。


「流石にこいつはお前達じゃ荷が重いね。下がってて」

「最近下がってばっかりですね」

「そうだねぇ」


 ルティエラ達が少し寂しそうに言いながら下がっていく。

 まぁ、気持ちは分かるけどね。


「アァ?何をしているぅ?」

「こうするためだ、よ!!」


ドゴン!


「グゥオオオオオオ!?」


 首を傾げたグバンの腹に思いっきり右ストレートを叩き込んで吹き飛ばす。

 僕は転移して、グバンの真上に飛ぶ。

 そして今度は左ストレートを叩きつける。


 ドバァン!と砂を巻き上げてグバンは地面に叩きつけられる。

 ふむ。地面を砂に変えていたのか。

 これじゃああまりダメージはないだろうな。

 いや。ダメージなんて意味ないのか。


「フハハハハハハハ!!何かしたかぁ?」


 案の定グバンは無傷で、というかダメージを怒りに【転換】して飛び出してきた。

 ふむ。どうしたものか。

 スキルを消すにしてもなぁ。ちょっともったいない気もするし。


「お前如きが俺に勝てると思うなぁ!!」

「そうでもないよ?」


 僕は【魔光】スキルを真似して赤い閃光を連射してグバンに放つ。


「オオオオオオオオオオオ!?」


 まぁ、これだけだと意味ないけどね。


「ウオオオオオオオ!!小賢しいぃ!!!」


 【魔光】でバリアのような物で全身を覆って叫ぶグバン。

 そのまま僕に突っ込んできた。

 僕はそれを両腕で受け止める。

 おぉ!凄い力だね!


「死ねぇ!!」

 

 右腕を振るって殴りつけてくるグバン。

 それは少し甘いよ!

 パンチを受け止めて、僕はグバンの顎を思いっきり蹴り上げる。


「グフゥ!」

「ふぅ!!」


ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!

 

 浮かんだグバンの腹に拳の連撃を叩き込む。

 そして最後に後ろ回し蹴りを叩き込んで、また吹き飛ばす。

 グバンはくの字になって吹き飛んでいく。


「さぁて。どうしようかなぁ」


 殺すのは簡単だけど。

 グバンの場合はただの怒りの暴走だからなぁ。


「ヌグゥアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」


 グバンが吹き飛んだ先から魔力の爆発が起こり、光の柱が立つ。

 ふむ。さらに力が増したな。


「フウウゥゥゥゥゥ……!!」


 グバンは全身の筋肉が盛り上がる。顔も完全に白目になり歯を食いしばって、こっちを睨んでいる。額に血管が浮き上がり、怒りに完全に飲み込まれたようだ。

 

 ふむ。流石に【重積】でも限界があるか。


「グガアアアアアアア!!」


 もはや獣同然に吠えながら突撃してくるグバン。しかし戦い方は忘れるどころか進化しているようで、今度は【魔光】を腕に纏わせて殴りかかってくる。

 

 ふむ。本能的に戦い方を学習、思考しているのか。

 僕はそれを転移で避けて、グバンの背中に触れる。

 

「ガァ!?ああああああぁぁぁ……」


 グバンの体が見る見るうちに小さくなっていく。

 【吸収】で怒りを回収。そのままそれを魔力として【転換】する。


 グバンは少年になって座り込んだ。

 ふむ。これが本来の姿か。


「う……あぁ……?ここ……は?」

「落ち着いたかい?グバン」

「え?……あなた…は……あ、あああ……!」


 頭を押さえながらキョロキョロと周りを見るグバン。

 僕が声を掛けると、こっちを見て少しポケッとするが直ぐに顔を真っ青にして頭を抱えて呻き出す。

 ふむ。記憶はあるようだ。


「気にする必要はないよ。僕も少し遊び過ぎたからね」

「で……でも……僕はたくさんの人を……」

「いいじゃないか。別に殺したって。別に僕の知り合いでもないし」


 僕の言葉にポカンとするグバン。

 ふむ。性根はいい子のようだ。

 でも、また怒れば元通りだ。


「君には【憤怒の魔王】スキルがある」

「ひぃ!?」

「あぁ……大丈夫。殺さないし、突き出さないよ」

「え?」

「先に自己紹介しとこうか」


 スキルを教えるとグバンは殺されると思ったのか、頭を抱えて震え始める。

 しかし、僕の言葉を聞いてポカンとする。


「僕はナオ・バアル。【大魔王】と呼ばれて、神に喧嘩を売っている化け物だよ」

「え?」

「そして君以上に人を殺しているし、国も滅ぼした」

「え?」

「それに魔王すらも作り出してるし、復活もさせた」

「え?」


 僕に比べれば君なんて軽いものだよねぇ。


「だから安心しなよ。僕は君の先輩さ」

「せんぱい……」

「はっきり言うよ。君は少しでもムカついただけで、さっきの姿に戻る。それを防ぐ術は死ぬか、封印されるか、細工されるか、だね」

「え!?」


 グバンを目を見開いて固まる。

 こればっかりはね。はっきりと分かってくれないと。


「どうする?こればっかりは決めるのは君だよ」

「……でも、あなたは僕を……」

「今回はね。でも付いてくると言うなら、もっと人を殺すよ?僕は【大魔王】だからね」

「っ!?」

 

 グバンは固まって、考え込む。


「そして間違いなく神と戦う」

「神様と……」

「気にする必要ある?神は君を救わなかったんだよ?」

「それは……」


 まぁ、すぐには決められないか。


「だったら、しばらくは一緒に来るかい?簡単に暴走しない様にはしてあげるよ」

「本当ですか!?」

「でも、あくまでその場しのぎだからね」

「ありがとうございます!!」


 純真だねぇ。

 まぁ、【憤怒の魔王】なんて純真でもないとならないけどね。

 さてさて、どう扱っていくべきか。



ありがとうございました。

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