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誰が決めたんだ?

よろしくお願いします。

 フデリオは自室に幽閉されていた。


「くそがぁ!!私はこの領地の次期領主だぞ!?私の物になる領地の連中をどう扱おうが自由だろうが!?」


 フデリオは荒れ狂っていた。


「それを国王にバレた程度で貴族位を返上だと!?ふざけるな!!許さんぞ!そんなこと許してなるものか!!」


 ぜぇ!ぜぇ!と息を荒げながら、虚空を睨みつける。

 そして机の鍵付きの引き出しを開けて、中にある小瓶を取り出す。その中には錠剤が10粒ほどある。それを歪んだ笑みを浮かべながら懐に入れ、もう1つ入れている物を取り出す。

 それは水晶のようなもので通信の魔道具だった。

 それに触れて、起動する。


「聞こえるか?私だ……」


 フデリオは何処かへと通信を始める。

 




 翌日、侯爵からの使いが現れて屋敷へと呼ばれる。

 そのまま用意された馬車に乗り込み、屋敷へと向かう。


 案内された部屋にはすでにフレバロトが、それにコーリジェアもいた。


「すまないな。本来ならこちらから出向くべきなのだが」

「構いませんよ。コーリジェア様は大丈夫なのですか?」

「……はい。ご心配をおかけしました。ところでナオさんは大丈夫なのですか?」

「まぁ、冷たいかもしれませんが、冒険者にとって死は日常茶飯時です。慣れてしまっているのですよ。むしろ今回はしっかりと供養が出来た分まだマシですね」

「そう……なのですか」


 僕の苦笑しながらの説明にコーリジェアは寂しそうな表情をする。

 フレバロトはそれを少し無念そうに眺めながら、僕達に座るように促す。


「まずは……此度のことはお悔やみ申し上げる。そして、それを招いた1人として深く謝罪する。本当に申し訳なかった」

「申し訳ありませんでした」


 2人は頭を下げる。

 それを僕は再び苦笑しながら告げる。

 まぁ、僕がそう仕込んだからそう謝られてもね。


「お2人にはどうしようもないことだったでしょう。誰にも全てを防ぐことなんて出来ませんよ」


 その言葉に2人は顔を顰めながら頭を上げる。


「それでもな。……これ以上は繰り返し位なるだけか。……ヨハナ殿を殺したバジェロドの従者の男は犯罪奴隷とし、無期懲役となった。すでに処置を終えて連れて行っている。バジェロド殿は昨日正式にコーリジェアとは婚約破棄が成立し、今後はベルルド領にて幽閉となる。バジェロド殿も今日中に出立予定だ。こちらがベルルド家からの賠償金だ。金貨200枚。まぁ、人の命の額としては低すぎるが、残念ながらこれがこの国の法律での最大金額だ」


 フレバロトはジャラ!と金貨が入った袋を前に置く。

 それを無言で受け取る。まぁ、金なんてどうでもいいからね。

 向こうには不機嫌に映ったろうけど。


「ここからは……これから公表されることだ。フデリオとフロデアが領民を誘拐し不当に奴隷としていたことが判明した。すでに実行犯の捕縛も始まり、被害者も救出は終えている。2人はそれをコーリジェアにも行うつもりだったらしい。それが君達が討伐した山賊だな。これにより流石に我がフレシュコハラ家は没落は免れぬ。私は王都にて隠居。コーリジェアは神殿へと正式に配属されることになるだろう」


 あらま。思ったよりあっさりバレたのか。馬鹿だったから仕方がないか。

 本当にこの2人は周りに恵まれなかったな。

 ここまで誠実にやってきたのにねぇ。


「本当に君達には申し訳なかったよ。フデリオ達はともかく、バジェロド殿に関してはもう少し早く決断すべきだった」

「もう取り戻せないことを振り返るのは止めましょう」

「……そうだな。私からは以上だ。コーリジェアともう少し話していくといい」


 そう言って部屋を出て行くフレバロト。

 コーリジェアはまだ少し悩んでいるようで言葉を発せない様だ。

 ふむ。ここは僕から言い出すべきだよな。


「街、案内は何時してくれる?」

「……え?」

「まだ昼食までしか案内してもらってないよ?」


 コーリジェアはその言葉に目を見開いて固まっている。

 そして少しずつ笑みを浮かべていく。


「はい!明日にでも!お父様絶対に説得してみせます!」


 いつも通りフンス!と両手を握って気合を入れるコーリジェア。

 それを微笑んで見返す。

 すると、コーリジェアは顔が赤くなり、視線をキョドキョドさせる。

 お!イイ感じに好意を集めているね!


 その時、


「がああああああ!?」


 叫び声が響いた。


「っ!?なんですか!?」

「待って!コーリジェア!」


 立ち上がって部屋を出ようとするコーリジェアを止める。

 ふむ。随分と思い切ったねぇ。

 

 私兵の1人が部屋へと駆け込んでくる。


「お逃げください!コーリジェア様!お客人!」

「どうしたのですか!?」

「フデリオ様とフロデア様による反乱です!すでに屋敷内には敵兵で溢れてきています!お急ぎを!」

「お父様は!?」

「閣下もすぐに!急いで!」

「いこう!コーリジェア!ルティ達も行くよ!」

「「はい!」」

「おー!」


 そうして部屋を出る僕達。廊下には黒装束を纏った者達が現れる。

 ふむ。もう少し敵を見に行くか。

 

「君は避難経路を知っているか?」

「はい!」

「なら、コーリジェアを先に。僕達は囮になる」

「そんな!」

「大丈夫。僕は賢者に勝った男だよ?」

「……ですが!?」

「頼んだよ!」


 そう言って走り出す。

 現れる敵を一撃で屠りながら進んでいく。

 エントランスに出ると、


「お?いたいたぁ!」

「ん?」


 バサァッ!と目の前に黒い影が降り立つ。

 両手に黒いダガーが握られている。


「お前がこいつらのボス?」

「まさか!ボスはお姫様の所に向かってるぜ」

「あれま」


 【探査】を使うと、なんとコーリジェア達はまさかの修練場を突っ切ろうとしていた。

 なんでやねん!って、そうか。長男が反乱起こしたんだから隠し通路ぐらい知ってるか。

 これはミスったな。

 それにしても随分と豪華なメンバーがいるねぇ。

 おや?ふむ。これは少し予想外。


「3人とも、悪いけどこいつらお願いするよ。殺していいから」

「はい」

「はいよ」

「はーい」

「馬鹿にすんじゃねぇ!」


 男はキレて攻撃してきたが、ルティエラが刀を抜いて振るう。


「っ!?」


 男は飛び退いて階段の下の降りる。

 僕はその隙に転移する。




「くそ!?まさか隠し通路まで全部敵を仕込んでいるなんて!」

「仕方ありません!お兄様が起こしたのですから!修練場を一気に抜けましょう!」

「仕方ない!分かりました!」


 コーリジェアと私兵は窓から修練場に向かって、外に飛び出す。

 そして、修練場に差し掛かった時、


「残念だがそこまでだ」

「っ!?止まってください!」

「うわぁ!?」

「ほう」


 声が聞こえた途端、怖気がして私兵を止めるコーリジェア。

 私兵はバランスを崩すが、その目の前にナイフが降り注ぐ。それに私兵は驚き尻餅をつく。


 現れたのは黒装束を着た男。

 雰囲気から明らかにベテランであることが伺える。


「流石は聖女だな。最低限の危機感はあるか」

「傭兵……いえ、闇ギルドですか」

「そうだ。闇ギルド【黒犬】。お前のお兄さんのお抱えさ」

「っ!?」


 分かってはいたことだが、改めて兄の愚かさを見せつけられたことが少なからずショックだった。


「やはりここに来たか!コーリジェア!」


 声の方向を見ると、修練場の奥にフデリオとフロデアが笑って立っていた。横にはなんとバジェロドがいる。顔を顰めてはいるが明らかにフデリオ側だった。

 そしてその足元には、フレバロトが倒れていた。


「お父様!?」

「そんな閣下!?」


 絶望に叫ぶコーリジェア達。

 その表情と声にニヤァっと笑うフデリオとフロデア。

 

「ははははは!いい気味だな!コーリジェア!聖女面した売女めが!」


 フデリオは笑いながらフレバロトの腹の上に足を乗せた。


「ごぉ……!?」

「お父様!」

「ははははは!どうですかな?父上!愚かと馬鹿にした息子に足蹴にされているのは!!戦う力を持たない無能のくせに!父親だからといい気になりよって!!!」


 フデリオは父親を見下して笑う。フレバロトは戦闘系のスキルを持っていない。

 だからこそ、彼は誠実さで人々に立ち向かい信頼と実績を納めて来たのだ。


「ぐふっ……お…ろか者……めが……他家の連中に……たぶらかされたか」

「っ!……だまれぇ老いぼれぇ!」


 フデリオは足を振り上げてフレバロトの脇腹を蹴る。


「ごあ……!?」

「誑かされただとぉ?馬鹿め!協定を結んだのだよ!」


 自信満々に語るフデリオ。

 それを咳き込みながらも睨み返すフレバロト。


「だから……お前は愚かだというのだ」

「なにぃ?」

「反乱を起こした者に手を差し伸べる者がいるものか……これでお前達は完全な国賊だ。誰も庇うわけなかろう」

「……はぁ?」

「まだ分からんか……。嫡子であろうと………正式な手続きを経ていない領主への反抗は、【国への反逆】だ」

「「!?」」


 フデリオとフロデアは目を見開き固まる。バジェロドも目を見開いている。


「言い訳を考えても……もう遅い。すでに……国王には……知らせた。これで………終わりだ。私もお前達もな」

「…………」


 フレバロトは冷や汗を大量に流しながら吐き捨てる。

 フデリオはそれを無表情に見下ろす。


「はははは…………くははははははははははは!!!!」

「お……お兄様?」


 フデリオは突然大笑いを始める。フロデアもこれには流石に少し引いている。


「それがどうした?」

「な……に……?」

「私がいつこの国の貴族と取引したと言った!」

「「なぁ!?」」


 その言葉にバジェロドとコーリジェアが驚きに叫ぶ。


「私が協定を結んだのは【ボロラダ王国】だ!」

「き……さま……!?」


 【ボロラダ王国】。イルマリネン王国とクルダソス王国に接している小国で、このフレシュコハラ領と国境を面している。数十年、どこにも戦を仕掛けてはいなかった。


「これで私はボロラダ王国の貴族になれる!」

「……本当に……愚かな……ことを」

「では!終わりだ!父上!」

「やめてぇ!!」


 フデリオが剣を抜いて、フレバロトに切っ先を向ける。

 コーリジェアは叫び、飛び出そうとするが黒装束の男に邪魔をされる。

 剣がフレバロトに突き刺さろうとした時、


「馬鹿めが」


 その言葉と同時にフレバロトの姿が消えた。


「なぁ!?」


 フデリオが目を見開き驚く。


「私のスキルを調べもせずに嘘を信じたのか?」

「「「っ!?」」」


 フデリオ達はフレバロトの声に周囲を見渡す。

 すると、修練場の中心にフレバロトが立っていた。


「戦えない者が国境の領地を任せられると思うか?」


 フレバロトが右手を上に掲げると、その真上の空間に亀裂が入る。

 その亀裂から銀色に輝くハルバードが現れる。


「なんだそれはぁ!?」

「私は【空間】スキルの使い手だ。そして、これは我が相棒の魔槍【レーテン】だ」

「空間!?魔槍!?馬鹿な!?そんなこと一度も!」

「言ったことがないからな。国王にお願いして、私の武勇伝は全て消し去ってもらった。……こうして油断した愚か者が現れたときのためにな」

「っ!?」

「まさか、その解禁が己が息子だとはな。これぞ……因果応報か」

 

 フデリオ達は完全に事態を飲み込めずに固まっている。

 それを見て、フレバロトはため息を吐く。


「武器を携える敵の前で呆けるのは……死を呼ぶぞ!!」


 フレバロトが叫びながら飛び掛かろうとする。

 

 その胸から剣が生えた。


『!?』

「っ…!?ごふっ……!?」


 目を見開き、血を吐きながら胸から生えた剣を見下ろすフレバロト。


「ようやく……隙を見せて頂けたな。フレバロト卿」

「き……さまは……」

「うそ……」


 フレバロトの後ろに立つ男の姿にフレバロトとコーリジェアが目を見開く。


「なんで……?クデック」


 フレバロトを刺しているのはクデックだった。

 コーリジェアはもう訳が分からなくなっている。

 父の次に信頼していた男が、父を刺している。


「全く。まさかこんな形で計画を進めなければならないなんてね」

「そうか……貴様が……」

「えぇ。私が……俺様が黒幕だよ」


 雰囲気が急にガラリと変わったクデック。

 それにはフデリオ達も驚きに固まる。

 クデックは刺している剣を乱暴に抜き、フレバロトを蹴り倒す。


「ぐがぁ……!?」

「本当に厄介なおっさんだぜ。全然隙を見せやしねぇ。しかも娘の聖女様も信頼はされても部下として、だ。2人っきりになろうともしねぇ。おかげで取り込めなかったぜ」


 クデックは顔を苦渋に顰めながら吐き捨てる。


「お前……クデック…なのか?」

「あ?あぁ、まだ名乗ってなかったな。ボロラダ王国裏騎士団所属、クデッカウスだ。そこの【黒犬】の飼い主だよ」

「っ!?お前が!?」

「よくやった……と、言ってやりてぇがなぁ。フデリオ殿よぉ、このタイミングはねぇだろう。せっかく移送時に救出するように手配してたんだぜ?」

「しかし……!」

「我慢してりゃあ、このおっさんも出て行って、聖女様も手に入れやすくなったのによ。ハイリスクノーリターンだぜ。これじゃあ」


 クデッカウスは呆れた目でフデリオを見ながら苦情を告げる。

 フデリオは顔を顰めるも、取引相手のため何も言えなかった。


「クデック……?なにを……言っているのですか?」

「あ?まだ受け入れられないのかよ。まぁ、性格変わり過ぎだからか?」

 

 コーリジェアの疑問にクデッカウスは肩を竦める。


「残念だったなぁ。あんたが信頼していたクデックなんてこの世にはいねぇ。あれは【虚像】だ」

「虚……像…?」

「そうだ。【虚像】スキルは設定した性格、記憶、思考を造り出して、それを演じる。演じている間は鑑定されようが、心を読まれようが俺様のことは見つけられねぇ」


 その言葉に全員が目を見開く。

 

「だからあんたらは俺様を疑わなかっただろ?こればっかりはあんたら間抜けじゃねぇ。このスキルが凄過ぎるだけさ」


 ククククっと笑いながら、ネタ晴らしするクデッカウス。

 コーリジェアはもう何を信じればいいのか分からなくなっていた。


「さぁて、フレバロト卿。これで終わりだ」

「お……の……れぇ」

「安心しな。聖女様もすぐに追わせてやるよ。聖女を無理矢理従わせても使いモンにならねぇからな」


 クデッカウスはフレバロトの首に剣を振り下ろす。フレバロトの首は胴体を離れて、地面に転がっていく。

 コーリジェアはもう叫ぶ余裕すらもなく、ただ目を見開き瞳を震わせて涙を流していた。

 心が壊れる寸前だった。


「フデリオ殿。例の薬を持ってきてるよな?」

「も……もちろんだ」

「よし。失くすなよ。それも取引なんだからな」

「分かっている!」

「その意気だ。で?その賢者様は連れて行くのか?」

「あぁ。聖女よりは役に立つだろう?」

「まぁな。本人が納得してるならな」

「……私にはもう帰った所で居場所はない。ならば、亡命したほうがまだ道はあるだろう」

「ははは!いいねぇ!そうっこなくちゃ!さて、じゃあ後片付けをして行くか」


 クデッカウスはコーリジェアに近づいていく。

 コーリジェアは虚空を見上げて涙を流していた。


「哀れだなぁ。聖女様よ。結局あんたがどれだけ人を助けても、あんたを助けてくれる人はいねぇ」


 コーリジェアはその言葉が聞こえてしまった。それに顔を顰めて下を向いてしまう。

 聖女なんて何も役に立たない。それを改めて実感してしまった。


「そうでもないけどね」

「なぁ!?」

「……え?」


 コーリジェアの後ろから声が聞こえてきた。その声にコーリジェアの心は力が湧き上がってくる気がした。後ろを向くと、そこには紫がかった銀色の髪を靡かせる女顔の青年がいた。


「ナオ…さん…」

「うん。助けに来たよ。コーリジェア」


 僕は微笑みながらコーリジェアに声を掛ける。

 ゆっくりと歩み寄り、そしてクデッカウスの前に立つ。

 ふむ。しかし【虚像】スキルか。見抜けなかったなぁ。


「凄いね。そのスキル。全然気づかなかったよ」

「てめぇ……なんでここにいる……?」

「あの黒装束の男の事?だったらルティ達に任せてきたよ」

「はぁ?いいのかよ?死ぬぜ?あの女達」

「それはないね」

「仲間が死んだばっかでよく言うぜ」

「あぁ。ヨハナのこと?あれは僕がそうさせたんだ」

「……はぁ?」

「いやぁ~あいつは心を壊したからさぁ、下手に会話させるとどんな情報暴露するか分からないんだよねぇ。だから、ここのお家騒動に巻き込まれて死んでもらおうと思ってたんだ。だから、昨日のあれはむしろ助かったんだよ~」


 僕の笑顔にクデッカウスやバジェロド達はポカンとして固まる。

 何を言っているんだ。こいつは。

 全員がそう考えている。


「ナオ……さん?」

「ん?」

「何を言っているのですか?」

「あぁ、ゴメンゴメン。そうだね。ネタ晴らしその2をしておこうか」

「え?」

「僕はね、魔王なんだよ」

『は?』


 コーリジェアも含めて間抜けな声を上げる。

 まぁ、そういう反応だよね。

 コーリジェアに向いて片膝を着く。


「フレバロトさんについては悪かったよ。まさかクデックが敵だったとは思わなくてね。気づいて、ここに来たらもう間に合わなかったよ」

「いえ……ナオさんが悪いわけじゃ……それよりも……」

「だから、()()()()()()()()よ」

「……え?」


 僕の言葉についていけないコーリジェア。

 苦笑しながら、父親の方を示す僕。

 そちらに顔を向けると、首を刎ねられたはずのフレバロトが首が繋がった状態で横になっていた。


「お父様!?」

「あ?……っ!?なんだと!?」

「馬鹿な!?なぜ生きている!?」


 コーリジェアの声にクデッカウスやフデリオはフレバロトを見て、首が戻っていることに驚く。


「いや~時間を巻き戻すのは初めてだからねぇ。少し不安だったよ」


 僕はフレバロトの時間を巻き戻して生き返らせた、というよりは死んだ時間をなかったことにした。

 しかし、初めての試みだったのでどのような影響が出るか分からなかったのだ。

 今までやらなかった理由は『魔力の消費が激しくて疲れるから』。

 【無限】があるとはいえ、一気に大量に消費すれば疲労感を感じる。

 別に誰が死んでも構わなかった僕は使う理由がなかったのだ。

 

「時間を巻き戻す……だと?ありえねぇ……!?」

「だから魔王なんじゃないか」


 僕は呆れた目でクデッカウスを見る。

 すると、


「ナオ様!!」


 ルティエラ達が駆けつけてきた。全員無傷だ。


「お。終わったかい?」

「はい。敵は全員始末しました」

「なんだと!?」


 黒装束の男が驚愕する。


「悪いんだけどフレバロトさん連れて離れてくれる?生き返らせたからどうなるか分からないんだよね。神殿でも連れて行って」

「分かりました」


 ルティエラ達は一瞬でフレバロトの所に移動し、担ぎあげてまた高速で移動する。

 その速さにクデッカウス達は誰も動けなかった。


「これでお前達の目論見は潰えたんじゃないかい?」

「てめぇ!!!」


 クデッカウスが剣を振り上げるが、強烈な風が僕から噴き出し、フデリオ達の所に飛ばされる。


「ちぃっ!?」

「私兵さん。悪いけどさっさと逃げてくれる?2人は守る気ないかな」

「え?あっ!は、はい!!」

 

 僕の言葉に私兵の男は急いで屋敷へと戻っていく。


「さて、これで邪魔者はいなくなったね」

「てめぇ……!」


 クデッカウスは僕を睨みつける。

 まぁ、怒るよねぇ。随分と時間掛けてたみたいだし。


「貴様!!たかが冒険者風情で何様のつもりだ!」

「魔王だって言ってんでしょ?馬鹿」

「っ!?貴様!!」


 なんで人の話聞かないかね?あ。だからこんなことしたんだっけ。


「この数相手に勝てると思ってんのか?」

「はぁ?なんでその程度の数で勝てると思ってるの?」

「……てんめぇ……!」

「キレるならさっさとおいでよ」


 僕の挑発に顔を真っ赤にしていくクデッカウスとフデリオ。


「ナ……ナオさん………無理をする必要は……!」

「無理なんてしてないよ」


 コーリジェアは不安そうにしているが、僕はどこ吹く風状態だ。


「……フデリオ殿。薬を1錠渡せ」

「な!?しかし!?」

「いいんだよ。1錠ならいけるだろ」

「足りない足りない。魔王薬っていうの?全部飲みなよ」

「っ!?なんで!?」

「魔王だよ?心ぐらい読めるよ」

「……じゃあ、てめぇがここに来たのは」

「うん。コーリジェアを助けた時点で全部知ってたよ。クデッカウスのことは除いてね」

『!?』


 僕の言葉に全員が固まる。

 それにバジェロドが叫ぶ。


「じゃあ!わざわざ決闘を受けたのは!?」

「暇つぶしと君の馬鹿さ加減に笑ってたから。馬鹿だよねぇ~。勝手にここの領主になるなんて言って、しかもそのせいでコーリジェアがフデリオ達に狙われることになったんだから」

「……え?」

「な!?」


 コーリジェアとバジェロドは目を見開く。


「君がきっかけなんだよ。クデッカウスがフデリオを取り込んだのは、誘拐が起こったのは、コーリジェアが苦しんできたのは、全て君の無責任な行動が原因だ」

「そ……んな……」


 バジェロドは膝から崩れ去る。

 それを見てクデッカウスは舌打ちをする。もうこいつは使えないと。


「俺達よりもよっぽど質が悪いぜ」

「人聞きの悪い。言っとくけど、あの時に僕が何か言って変わったのかい?」

「……変わらないな」

「でしょ?僕はただ普通の冒険者として関わっただけ。ただコーリジェアと楽しく遊んだらこの街を旅立ってたよ?」

「……ちっ」


 後半はともかく、前半は事実だと認めるクデッカウス。バジェロドが勝手に暴走しただけだ。ナオは出来る限り関わりを避けただけだ。挑発的ではあったかもしれないが。


「だから、こうして僕はコーリジェアの味方をしてる。バジェロドもぶっ飛ばして、フレバロトさんも助けた。まぁ、ヨハナの件に関してはちょっと申し訳ないとは思ったけどね」


 肩を竦める僕。

 コーリジェアは何故かその言葉が……嬉しかった。

 黙ってたことは悲しい。ヨハナを見捨てた、というか犠牲にしたのは許されることではない。

 でも、それが全て自分のためだったというのが、たまらなく嬉しかった。


(私は……やはり【聖女】にはふさわしくなかったようですね)


 魔王を名乗る人を……好きだと思っているのだから。


「そんなことはないよ」

「!!」


 ナオが急に振り抜いて話しかけてきた。


「言っただろう?【勇者】や【聖女】、【賢者】とは生き様の果てに他人から呼ばれるものだ。だから……君がしたいと思った生き方が君の【聖女】の在り方なんだから」

「私の……望んだ生き方」

「そうさ。だから【賢者】と成りえない者もいれば、【勇者】であろうと大量虐殺をする者もいる。そして……聖女を救う【魔王】もいれば、魔王に恋する【聖女】だっていてもいい。自分が信じる生き方をすればいいのさ。きっとそれの生き方に惹かれる者はいるはずさ」


 ドクン!とコーリジェアの胸が大きくときめく。

 あぁ。いいのだ。望んでも。


「【勇者】【聖女】【賢者】は【魔王】とは相容れないと誰が決めたんだ?正義も悪も、人によって異なる。魔王と共に戦う者は【勇者】ではないと誰が決めた?魔王に恋することが穢れていると誰が決めた?意味を間違えるな!!【光】とあるから【聖女】じゃない!その【心】が清らかだから、美しいから【聖女】なんだ!!」


 そうだ!誰も決めてなどいない!誰にも決められることではない!


 人に恋することが、愛することが、穢れているはずはない!


「そしてなにより!!君はコーリジェアだ!!決して【聖女】が基盤じゃない!!コーリジェアという存在の上に【聖女】が乗っているだけだ!!君が『穢れていない』と思う限り!決して【聖女】は穢れない!!」


 間違えるな。所詮は称号でしかないのだから。

 そんなものに縛られて生きるなんて、もったいないじゃないか!


「君は自由なんだよ。コーリジェア」

「……はい。……はいぃ」


 涙が止まらない。喜ぶが止まらない。愛が止まらない。


「だから信じて待っててよ」

「……はい」


 コーリジェアは涙を流しながらも、とても美しい笑顔で頷く。


 ふむ。これは素晴らしい。困ったな。もう僕が惹かれ始めている。

 この【聖女】の果てを見たいと、思ってしまった。


 ふむ。僕もまだまだ甘いな。

 ……これから今まで通りの活動できるだろうか?魔王とか作ったら泣かれそうだな。

 まぁ、それは後回しだな。


「準備は出来たかい?クデッカウス」


 僕は敵を見据えて、不敵に笑う。




「さぁ、魔王の前に平伏すがいいよ」



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