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友達になっちゃったよ

よろしくお願いします。

 ふむ。まさか一気に2人も倒されるとは。


「天使や神にかい?」

「いや、大勇者と大賢者」

「本当ですか!?」

「めんどくさいよねぇ。忠保でさえ【勇者】止まりだったのに。その上が急に出てくるなんて」


 まぁ、忠保の場合は他にも勇者がいたから認知が低かっただけなんだけど。


「2人はもうダメなのかい?」

「いや?魂は回収したよ。まぁ、直前に繋がりが分かったから出来た方法だけどね」


 あの時に魂を回収出来るように手を加えていて良かったよ。下手したら魂を神達に回収されて情報奪われてたからね。

 ただ気になる事が1つ。


「ちょっとロパザラクネがいた所に行ってくるよ」

「大丈夫なのですか?」

「まぁ、僕ならね。でもロパザラクネが魔王復活させちゃったからさ。見に行っとく」

「魔王を!?」

「まぁ、嫌がらせのつもりだったんだろうね。大勇者に殺されてれば良し。味方になれば良し。ダメなら殺すよ」


 そう言って、転移する僕。

 飛んだのはどこかの遺跡の上。

 ふむ……生きてるねぇ。ん?大勇者が1人減ってるな。魔王にやられたか?

 女に変わって魔王の元に向かう。


 魔王は森の中を歩いて、さらに山奥に向かっていた。


「うえぇ。よりによって【荒喰(あらじき)】の奴じゃない。最悪」

「んん~?だれぇだぁ?」


 私は魔王の前に降り立つ。


「ワクチャクよね?私はナオ・バアル。魔王よ」

「ふぅ~ん?知らないぃ。」

「そりゃそうよ。あんたが封印されたのは600年も前よ?」

「おぉ~。そんなにぃ経ってたぁのかぁ」


 魔王ワクチャク。簡単に言えば【暴食の魔王】ね。何でも食べて力に変えることが出来る。しかも、体液を様々な毒物に変えることが出来る【毒液】と体液を操れる【体液操作】を持っている最低な奴。

 厄介なのは見た目に反して頭が回るということ。だから、下手に馬鹿にして機嫌を損なうと手に負えないのだ。


「で、あんたはこれからどうするつもりなの?」

「なぁんにも決めてなぁい」

「出来れば大人しくしといて欲しいのだけど」

「美味しいもの食べたぁい」

「でしょうね」


 私はジト目になってため息を吐く。

 でも、南東に向かうなら良いか。誰もいないし。


「まぁ、いいわ。とりあえず私はあなたと敵対する気はない。出来れば神共と戦うときは協力したいわ」

「いいよぉ」

「……簡単に頷くわね」

「うん~。ナオたんはぁ好みだもぉん」

「…………」


 我慢我慢我慢我慢我慢我慢我慢我慢我慢我慢我慢我慢我慢我慢我慢我慢我慢我慢我慢!!

 男に変わって、少し気を逸らしてみる。


「僕は男でもあるから。あんまり誰かと付き合う気はないよ」

「そっちもぉかわいいぃねぇ」

「…………」


 意味なかったか。


「おではぁ別にぃナオたんを犯したいとかぁそういうのはぁないよぉ」

「そうだね。君はそう言う奴だったね」

「じゃあ~この先の山でぇしばらくお昼寝しとくよぉ。用が合ったら起こしてぇ」

「分かった」


 ふむ。なんか知らんがいい感じに収まったな。


「そうだぁ!良いものあげるぅ!」

「いいもの?」


 首を傾げると、ワクチャクの腹がグニュグニュと動き出した。

 おぉう…!キモイ!


ぶぺぇ!

ベチャ!


 ワクチャクの腹から水色髪の女が全裸で吐き出された。粘液でベッチャベチャだけど。

 ふむ。まさか【炎の大勇者】を食い溜めしてたとは。

 しかも、まだ生きてるのか。虫の息ではあるが。


「さっきぃなんかぁ攻撃されてぇお腹減ってたからぁ食べようと思ってぇ取っといたのぉ」

「いいのかい?」

「うん~」

「ありがとう」

「いいよぉ。お友達だもん~」


 お友達になっちゃったよ。まぁ、いいんだけどさ。

 ヴァギを綺麗にして、封印しておく。まぁ、使い道は考えよう。


「じゃあねぇ」


 汗だくの笑顔で手を振りながらワクチャクはドチャ!ドチャ!と森を進んでいく。

 それを見送ってルティエラ達の元に戻る。


「ただいま」

「どうだったのですか?」

「まぁ、うん」


 ワクチャクの話をする。


「悪いけど……会うときはあたしがいない時でお願いするよ」

「同じくです」

「僕も嫌だから大丈夫だよ」

「しかし、大勇者も簡単に倒すのは心強いねぇ。嫌だけど」

「やはり魔王というのはとてつもないですねぇ。嫌ですが」

「封印されてるくらいだからね。役には立つよ。嫌だけど」

「いやーー」


 とりあえず、メヂュバとロパザラクネは直ぐに復活させてもまた殺される可能性があるから、ちょっと保留。大勇者もちょっと保留。

 あと、マルフェル達にも連絡を送っておく。


 

 そして、また数日経過した。

 【クルダソス王国】を出て、隣国の【イルマリネン王国】に入国した。

 この国は大した特徴もない小国だ。


 この世界には民主主義の国はない。共和主義はあるみたいだけどね。

 理由は簡単。他の国が民主主義になることを認めると、自分の国でもクーデターが起こる可能性があるからだ。王族・貴族は不要とされる主義なんて王族が認められるわけないよね。

 しかも、国民達も民主主義なんて理解できる知識はない。そんな生き方して来なかったんだから当然だよね。教育も行き届いてるわけじゃないし。

 

 入国してのんびりと馬車を走らせること2日。

 明日には最初の街に到着するところまで来た。


「キャアアアアアアアアアア!?」

「ん?」

「おや?」


 叫び声が聞こえてきた。

 外を覗くと、豪華な馬車が山賊とトロールに囲まれていた。

 ふむ。従魔か?そして厄介ごとだな。


「もう見つかってますね」

「はぁ。仕方ない」

「助けるのかい?」

「一度正義の味方ごっことかしてみようよ」

「暇つぶしなんですね」

「うん」


 定番だよね。ただそれが最初から魔王だったパターンはあまりないかもだけど。

 ということで、僕達は馬車を降りて助っ人に向かう。

 定番のスキンヘッドの山賊がこっちに向かって怒鳴る。


「あぁん!!なんだてめぇら!俺ら相手に戦うべあご!?!?」

『アニキィーーー!?』


 僕は無言で飛び蹴りを放つ。山賊の男は胸を蹴られて5mほど吹き飛んで倒れる。

 普通ならここでなんか押し問答あるんだろうけどね。

 

「疑わしきは滅せよ!」

『過激すぎだろ!?』

「だったら山賊って分かる格好しなかったらいいんだよ」

『それが出来たら山賊なんてしてねぇ!!』

「仕事なくて暇なんだから服ぐらい縫えば?」

『うるせぇ!!!』


 僕の言葉に全員が見事にシンクロして答えてくる。

 ふむ。そこは褒めて遣わす。

 すると、馬車の護衛らしき騎士が怒鳴ってきた。


「下手に怒らせるな!!」

「別にいいよ。弱いんだから」


 あんまり派手にやるとそれはそれで面倒だから、脇差を抜く。

 それを逆手に持って、突っ込む。

 ルティエラ達もそれに続く。

 阿鼻叫喚が始まった。


「ぎゃああ!?」

「次」

「つえぇ!?来るなごえ!?」

「弱いねぇ」

「ぐふ!?ぷえ!?」

「さっさと死になさい」

「ガキがぁ!!づぇ!?あ?」

「よわいー」

「死ね!!ごぶぅ!?」

「………」


 山賊はどんどん倒れていく。

 それを見て、護衛達はポカンとしていた。

 おい、戦え。


「トロール共!いげぇあ!?」

「次」


 トロール達は背を向けて逃げ出した。

 ふむ。従魔が解けたようだ。どうしようかな。

 ほっとくか。今は馬車の方に向かおう。


「大丈夫かい?」

「あぁ。助かった。感謝する」

「いいよ。通りがかっただけだし」


 隊長格であろう茶髪の騎士が礼を言ってくる。

 すると、馬車の扉が開いた。


「クデック?もう…大丈夫なのですか?」

「コーリジェア様!はい!手助けもあり、無事に乗り切れました」

「手助けですか?」


 顔を覗かせたのは、艶やかなピンク色の長髪に青い瞳を持つ美少女だ。服装は白を基調にしたドレスで、スタイルもいい。

 ふむ。ザ・貴族令嬢だね。あれ?よく考えたら貴族令嬢に会うのって初め……ミルクラがいたな。でも、あいつはなぁ。

 ……うん。今は猫娘だからノーカン!!


 コーリジェアは頭を下げる。綺麗な礼だな。


「見ず知らずの私達を助けて頂き、ありがとうございます」

「いえいえ。こっちも狙われましたからね」

「私達を囮にして逃げることも出来たのです。ですから私達は間違いなくあなた方に恩があるのです」


 ふむ。立派だね。

 

「しかし……先ほどの叫び声は誰が?あなたではないですよね?」


 僕の言葉にコーリジェア達は顔を顰める。

 

「お恥ずかしながら……御者をしていた従者の者です。しかも、その者は護衛の騎士の馬を奪って逃げてしまいました」

「ふむ。随分とアグレッシブというか……手際が良いことで」

「……そうですね」


 ふむ。やっぱり暗殺目的か。山賊も雇われと。まぁ、トロールを従魔に出来る奴がこんなところで山賊するなんて違和感しかないよね。

 

「クデック。護衛の者達は?」

「……死者はおりません。しかし……ケッテと共に逃げ出した者が2人」

「……そうですか」


 2人は苦い顔をしている。随分と面倒事ですね。

 事情はもう分かったけど。

 すると、コーリジェアが頭を下げてくる。


「ただでさえお助け頂いたというのに、このようなご依頼は申し訳ないのですが……」

「えぇ。この先の街まででしたら護衛を引き受けましょう」

「よろしいのですか?」

「このまま別れて街に行くと、あらぬ疑いを掛けられそうですからね」

「っ!!……そう……ですね。それを否定出来ないのが情けない限りです」


 コーリジェアやクデックが眉を顰める。


「では改めて。ナオと申します」

「ルティエラです」

「シフラだよ」

「ラクミル~」

「で、彼女はヨハナです。かなり無口で人見知りでしてね」


 僕達は名乗る。

 ふむ。こうなるとヨハナがしゃべれないのが面倒だな。 


「私はコーリジェア・ノアラ・フレシュコハラと申します。この先の街の領主の次女で、【氷の聖女】を務めさせて頂いております」

「私はクデック・マゴン。神殿騎士で現在はコーリジェア様の護衛長を務めている」


 僕は【読心】で知ってるけど、一応驚いたふりをする。ルティエラ達は本当に驚いているけどね。

 しかし……最近妙に勇者やら聖女に縁があるな。こんなにポンポン出会うのもどうなんだ?

 

「せ、聖女様に……領主様のご息女で在らせられましたか」

「あぁ!気にしないでください!!肩書があってもこのような状況になっているのですから!」


 コーリジェアは慌てて僕達が跪こうとするのを止めようとする。

 まぁ、今の所迷惑しかかけてないもんね。小説ならここから恋が始まるのだろうけど。

 すでに僕にはルティエラ達がいるからどうなるのだろうねぇ?


 でもね、ある予感があるんだ。

 

 コーリジェアの婚約者と確実に揉める。


 

 ということで、少し進んで本日は野営となる。


「少しお話しませんか?」


 コーリジェアが声を掛けてくる。

 ラクミルはご飯を食べてお眠だったので、ヨハナと共にテントに入れる。


「しかし、ナオ様は男の方なのに肌が綺麗ですね。女性と間違えてしまいそうです」


 うっさい!


「……コーリジェア様。男性にそれは誉め言葉になっておりません」

「え!?し、失礼しました!」

「お気になさらず。よく言われますので」

「あうぅ~」


 クデックと僕の言葉にコーリジェアは顔を真っ赤にして落ち込む。

 ふむ。……やはり人付き合いは苦手か。


「ナ、ナオ様達は何故この国に?」

「【グラフィレオラ】に行く途中なんですよ」

「あぁ、なるほど。では、あまり滞在されないのですね。……残念です」


 少し寂しそうに顔を伏せるコーリジェア。


「別に急ぐ旅でもありませんからね。良ければ街を案内して頂きませんか?」

「よろしいのですか!?嬉しいです!!」


 バァツ!!と顔を上げて喜ぶコーリジェア。

 クデックは苦笑している。

 ふむ。良い関係を気づいてるようだな。


「で、では!!お友達になっていただけましぇんか!?」


 噛んだな。

 顔を真っ赤にしながらも、僕達から目を離さない。

 ふむ。


「友達……ですか?私達は根無し草の冒険者ですが……」

「とんでもない!そんなことで友人を決めるなんて!!我ら貴族はあなた方のような方々がいるからこそ存在できるのですから!!」


 ふむ。これまた良き思考をお持ちで。


「まぁ……流石に大っぴらには気軽に接することは出来ませんよ?」

「構いません!!」


 鼻息荒く両手をグッ!と握って、前のめりになるコーリジェア。

 僕達も苦笑する。


「分かったよ。周りに人がいないときは友人として接しさせてもらうよ」

「ありがとうございます!!」


 コーリジェアは満面の笑みを浮かべる。


 

 こうして僕は聖女とお友達になりました。



ありがとうございました。

ふと、『ナオって全く恋愛要素無いな。』と思ったので、少しヒロイン的存在を参加させてみました。


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