信用なんて出来るわけがない
よろしくお願いします。
さて、いよいよメインディッシュだ。
「ミルクラ『起きろ』」
命令に反応してミルクラが目を覚ます。
「う……ん?こ…こは?……っ!?あなたは!」
ミルクラは僕達に目を向けて、一瞬目を見開き睨みつける。
よく寝たから元気だな。
ちなみに食事は意識は寝かせたまま食べさせた。
意外と便利だよね。【隷属】。
「ヨハナは?ヨハナはどこですか!?」
「ここ」
「っ!?ヨハナ!!」
「………」
ヨハナは反応しない。
まぁ、正確にはヨハナ『だった』からね。
めんどいから名前を変えなかっただけ。
お前の大事な騎士はもういないよ。
「何をしたのですか!?」
「僕の人形にした。あぁ、奴隷って意味じゃないよ?こいつはもうお前のことなんて覚えてないし、自我も消えた。お前の騎士だったヨハナは死んだよ」
「な!?そ、そんなことを信じられるわけが!!」
「そうだよね~。なら、ヨハナ、そこでタコ踊りしてろ」
「はい。ナオ様」
僕の命令にはすぐさま反応し、無表情で手足をウネウネさせて踊り出すヨハナ。
無表情のせいかね?滑稽度が増してるな。
「や、やめさせてください!そんなに辱めて楽しいのですか!?」
「うん」
「っ!?こ、この悪魔!!」
「残念。僕はそれ以上」
「……え?」
「僕は魔王だよ」
「……え?」
ミルクラはポカンとしている。
まぁ、こんな言い方されても信じられないよね。
では、その身で理解して頂こうかね。
「今から君も作り変える」
「っ!?」
その言葉でようやく恐怖が勝ってきたようだ。もう遅いよねぇ。
「恨むならあの奴隷商と、僕らも操ろうとした自分の愚かさと、魔王に会った自分の不運を恨みなよ?何もしなかったら、僕は国に送ってあげるつもりだったんだからさ」
「ひぃ!?いやぁ!!ヨハナ!!ヨハナ!!助けてぇ!!」
ミルクラはヨハナに助けを求めるが、ヨハナは一切反応せず踊り続ける。
いいねぇ。絶望を煽る。
ミルクラが着ている服を消す。
慌てて体を隠そうとするミルクラ。
「なんでこんなことが出来るのですか!?あなたには人の心はないのですか!?」
「ないね。だって、僕を生み出したのが人だから」
「っ!?……神がお許しになりませんよ!?」
「いいねぇ!!望むところなんだよ!それが!!」
「……!?」
「良いことを教えてあげよう。僕の元になった人間は異世界人だ。神に呼ばれたね」
「……え?」
「神に呼ばれたのさ。『魔王を倒すために世界を渡っていただきます。』ってね。他の異世界人と一緒にね。そしたらなんと!!その人間は裏切られて蹴落とされ、この世界に放り出されちゃったんだよ!そしたら今度はさ!魔王が大好きな司祭に、魔王復活の生贄に捧げられちゃったんだ!!そうして誕生したのが僕ってわけさ!………だからぁ僕を生み出したのは『神』と『人』なんだよ。なぁんで僕を苦しめた元凶達に慈悲を与えないといけないんだい?」
僕の言葉に完全に固まるミルクラ。
笑顔でおどけるように話しているが、間違いなく自分は地雷を踏んだと理解した。
「僕にとって『神』は『敵』で、『人』は『害獣』だよ。なぁんで心が痛むんだい?」
「ひ……ひぃ……!で……でも!だったら辱める必要もないではないですか!」
「ないね。でもさ、辱めるのが一番手っ取り早いんだよ。敵を屈服させるのも、味方であると判別するのも……さ。魂を作り替えて絶対服従にしても、作り替えた以上また変わる可能性もある。人形にしても人間であった以上また自我は目覚める可能性はある。それを確かめられる手っ取り早い方法が凌辱なんだよ。人間は強烈な快楽には逆らえない。絶対に心が露になる。服従しているフリをしていても、隠していることも弱点も。そして、羞恥を味わえば絶対に心に隙ができる。心が読める僕にとっては、それは最高の隙なのさ。ぶっちゃけ、性欲ってあんまり湧かないんだよねぇ僕」
僕は神が愚かであることを知っている。
元になった魔王だって、一度封印されている愚か者だよ?
だから、【全能】だろうと信じていない。
だから、作り変えようと信じてなんていない。
ルティエラとシフラであろうとね。
ルティエラとシフラは少し悲しそうな顔をしている。
さすがにそろそろ2人は信じてもいいかなと思ってはいるが、それを示す気はないね。
もう裏切られるなんて耐えられないからね。
だったら信じないのが一番さ。
「ということで、お前も辱めるよ。大丈夫さ。お前はルティエラとシフラ、ヨハナとは違う方法を試すからさ」
「いや……いやあぁぁぁ!!」
いい絶叫だね。
【操命】【創造】【融合】【変質】を発動する。
生み出した『動物』と『精霊』を混ぜ合わせる。
そして、作り変えていく。
出来上がったのは、顔や体つきはミルクラのままだが、髪色が薄紫から水色に変化し毛先は白い。
そして、最も変わったのは頭に猫のような獣耳が立っており、尾骨付近に猫の尻尾が生えていることだ。
ふむ。うまく混ざったな。
猫と混ぜてみた。なんで水色なのかは知らんが。
まぁ、この世界なら大して違和感もないだろう。
魂を入れると、目を開ける。
ふむ。目は両方とも黄色か。まぁ、猫目ではあるな。
ミルクラはナオのジィーっと見て、耳や鼻がピクピクしている。
「中身はどう作り替えたのですか?」
「雰囲気があたし達とも人形とも違うねぇ」
2人は首を傾げながらミルクラを見ている。
「【二重】【精神】【隠蔽】を持ってたのは覚えてる?」
「はい」
僕は右手の上に☯を生み出す。
「こいつが使っていたのはこういう感じで精神を作り、この白黒を入れ替えて人格を変えていた」
太極図をくるっと回し、黒側を上にする。
その説明に2人も理解を示す。
「それをこうしてみた」
僕は太極図を◎にした。
黒丸の周りを白い円が囲んでいる。
「ミルクラという本来の人格を、この真っ白だった人格で覆った。で、この白い人格を弄って、僕達に忠実だけど思考はまだ子供レベルにした。だから、これから子供みたいに成長するよ。ミルクラの人格はそれを中から見聞き出来るけど、表に出てくることは出来ないようにした」
「……いいのですか?裏切る可能性がありますけど」
「うん。裏切ったら殺せばいいでしょ。それに育ててみるのも暇つぶしさ。ミルクラは地獄だろうねぇ。魔王に良いように育てられて、使われるんだからさ」
「なるほどねぇ」
「2人も育てるの手伝ってね」
「「はい」」
そして、僕はミルクラを見る。
「名前は変えといてあげようか。う~ん。『ラクミル』にしようか」
「……ラク…ミル?」
「そ。お前はラクミルだよ」
名前を復唱するラクミル。
僕に頭を撫でられて、嬉しいのか尻尾がフリフリしている。
目も細めて気持ちよさそうだ。
「でも、【精神】スキルで戻る可能性はないかい?」
「あぁ、大丈夫。そこも弄った」
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Name:RACUMIRU(MIRUCURA)
Age:18
Species:???(Human)
Skill:【猫王】【隠蔽】【雷】【嵐】【不老】【金剛】(使用不可【精神】【二重】)
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多分、【金剛】【不老】がなければ種族は猫人なんだろうな。
いや、でも雷の精霊と混ぜたしなぁ。どうなるんだろうか?
まぁいいや。
「消えたわけではないけど、魂と精神が作り替わったせいで使えなくなってるね」
「なら、大丈夫なのでしょうか」
「まぁ、使い始めたら分かるし」
「そうかい」
さて、これで奴隷と人形とペットが出来た。
当分はもういいかな。
じゃ、服を作って街に向かいますか。
あ。ヨハナ踊らせたままだった。
馬車に乗って、移動を開始する。
御者はヨハナ。文句も言わないからね。
ラクミルはナオの膝に座って機嫌良さそうにしている。
トイレとか着替えの知識は与えてあるから、何でもかんでも教える必要はない。
一応、ラクミルとヨハナのギルドカードは改変してある。
だから、街でそう簡単に怪しまれることはないだろう。
街が見えてきた。名前は【リローナ】。リロン侯爵が知事をしている街。
すぐ裏に大きな山脈があり、この街からトンネルから山脈を超えられるようになっている。
この街を通らないと1か月以上かけて遠回りするか、同じ期間をかけて山越えすることになってしまう。そのため、この街も重要な存在だ。まぁ、無駄な街なんてないんだけどね。
さて、問題はリロン侯爵とミルクラの国がどう動いてるかだね。
バレても構わないけど、絡まれるのはめんどい。
下手なことをするとまた魔王を作らんといけなくなる。
あ~。今度天使とか見つけたら、男女構わずキープしよう。
門に近づく。
ルティエラを御者席に座らせる。
「お前達はどこから来たんだ?」
「ブラケです。何かありましたか?」
「……ブラケと間の街の【タマン】が消滅したんだ」
「……もしかして途中にあった大きなクレーターがそうですか?」
「そうだ。何も怪しいものとか見ていないか?」
「いえ何も。特に魔物もいなかったので」
「そうか……。わかった。通っていいぞ。トンネルを使うのか?」
「はい」
「なら、馬車はここまでだ」
「え?」
「緊急事態のため、一般の馬車は通れなくなっている。持ち運べない荷物はギルドか役所に依頼して手筈を整えてくれ」
おぉ。横暴だな。まぁ、荷物なんてないが。
門のすぐ横に馬車の買取を行っていた。
面倒だが売っとかないと怪しまれるので売る。
金貨2枚。
けっ!しけてんな!
「まぁ、買ったときは金貨3枚だからねぇ。まだマシだよ」
そうなのか。とりあえず、宿に行こう。
宿は大部屋を取る。1泊銀貨8枚と結構な値段取られたよ。
まぁ、金なんていいけどさ。
ラクミルはベッドでポヨンポヨンと跳ねて遊んでいる。
街中を歩いているときはキョロキョロと周りを見ていた。
まぁ、新鮮だよね。
ラクミルの服装は半袖ミニGジャンに赤いキャミソール、そして白のホットパンツだ。黒のニーソックスも履いている。
緑のフード付きケープポンチョを上から羽織っている。
ヨハナにも緑のフード付きマントを渡している。
今はドア横に直立不動で立っている。
鎧に剣、マントは魔道具でブレスレットに収納できるようになっている。
さすがに部屋の中では鎧は脱がせている。
「特に変な視線はなかったですね」
「そうだね。明日はギルドに顔出してみようか。魔王達の動向も知りたいしね」
「分からないのかい?」
「場所は分かるけど、何してるかまではね。ここには天使もいないし」
まぁ、お互いの存在は気づいているようだ。牽制するように移動している。
未だに神どもは動かない。なんでだ?
昔はガンガン降りてきていたがなぁ。
ふむ。神殿も行ってみるか。
急げよ。神王。
早くしないと魔王があふれていくぞ?
ありがとうございました。
ここからはエロは少なくしていきます。
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