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少女と魔剣

よろしくお願いします。(1/3)


 【コリン】を出て早4日目。

 正直、明日にでも【レーフェン】に着くのではと考えている。


「地図、買わなかったわねぇ」

「そうですね。簡単な物でも買っとくべきでしたね」

 

 ちなみに、今日は女の気分♪ということで、女になっている。

 ルティエラはどっちのナオにも心酔しているので、特に気にしない。

 

 2人は余裕を持ち過ぎていて、地図を買うということを思いつかなかった。

 必要と言うほどでもないが、こうして歩いていると地図があったほうがいいと思い知らされる。

 

「レーフェンまでは一直線ですし、この道を外れなければ迷うこともありません。レーフェンで地図を買いましょう」

「そうね」


 しばらく歩いていると、村の様なものが見えてきた。

 そこそこ大きいことから、宿場町のようなものだろう。

 近づくと、村の入り口に何人か立っているのが見える。


「村を柵とかで囲っているわけでもないのに、見張りはいるって変な感じね」

「村を囲むように人が配置されています」

「そうね。……厄介ごとよねぇ」

「でしょうね」

「まぁ、話だけでも聞いてみましょうか」

「巻き込まれる気がします」


 あ。やっぱり?

 私もそう思ってる。

 でも、向こうも気づいてるみたいだからねぇ。

 ここで村を逸れても面倒よね。


「ここで道を逸れると、街に着けるかも分からないし」

「……そうでしょうか」


 ルティエラは首を傾げる。

 私はそれに苦笑するだけだ。

 

 村の入り口に着くと、見張りに立っていた男達が声を掛けてくる。


「わりぃな。警戒させてよ」

「ということは、この村を守ってるのね」

「おう。この近くに異常個体と思う魔物が出てな。村が一度襲われてる」


 異常個体の魔物か。

 

「それの討伐と村の護衛ってことね」

「そうだ。と言っても、それ以降魔獣が見つからねぇんだけどな」


 男は顔を顰める。

 ふむ。随分と賢いのかしら。

 それとも通りがかりに腹ごしらえをしたのか。

 まぁ、私達には関係ないか。


「で?通り抜けた方がいい?泊まった方がいい?」

「泊まってくれ。レーフェンにはもう辿り着けねぇよ。下手の野宿して、そっちに出たらたまったもんじゃねぇ」

「了解」


 そう言って中に入る。

 話した男以外の仲間は、私達を見てニヤニヤとしていた。


「ひゅ~♪いい女じゃねぇか」

「だよな!夜にでもお相手してもらうかねぇ」

「やめとけ。ありゃあ、バケモンだ。それに姉貴が放っておくかよ」


 下世話な妄想をする男達に突っ込む男。


「あぁ~。そりゃそうだな。けっ。なぁ、あの話はいつ実行すんだよ?」

「全くだぜ。そろそろよくねぇか?」

「黙ってろ。誰が聞いてるか分からん」


 男は仲間を窘めながら、私達を見る。


「……計画を変えるべきかもな」


 顔を顰めて悩み始める男であった。



 村の中は思ったより人で賑わっていた。

 どうやら、コリンに行くもの達はここで止められているようだ。

 まぁ、コリンまで村なんて無いものね。


 宿はギリギリ空いていたが、1人部屋だった。

 別に構わないので、その部屋にする。


 先に食堂で食事にすることにした2人。


 食堂の奥では冒険者の集団が飲んでいた。

 魔獣討伐のメンバーだろう。

 日も暮れてきたので、引き揚げてきたようだ。


 そして、案の定、酔っ払いの男が絡んできた。


「おぉ~?いい体してんじゃん嬢ちゃんたちぃ。こっちで酌してくんねぇか?」


 ルティエラの胸を見て、鼻を伸ばしている酔っ払い。

 その後ろで同じく仲間の酔っ払いもニヤニヤして、声を掛けてくる。


 2人はめんどくさそうに顔を顰め、どうするか考えていると、


「よそ様に迷惑かけんじゃないよ!このアホ共!」

「がぅ!?」


 酔っ払いの1人の頭に木製のジョッキが投げつけられる。

 酔っ払いは倒れる。


 飛んできた方向を見ると、そこには少女がいた。

 水色のショートヘアに褐色肌。腰はくびれているが見事なツルペタ胸。

 胸甲はしているがへそ出しで、下はショートパンツだ。

 見た目は少女だが貫禄があるため、美少女というよりは美女という言葉が似合う。


「全く。ただでさえ3日も何も出来てない邪魔者なんだよ?村やよそ様にこれ以上迷惑かけんじゃないよ!」

「す……すいません。姉御」


 どうやら少女がこの冒険者集団をまとめているらしい。

 少女が近づいてきて、頭を下げる。


「すまないね、うちのアホ共が。ここの食事代はあたしが奢るよ」

「別にこの程度なら構わないわよ?」

「そりゃあありがたい。けどねぇ、そうでもしないと周りに示しが付かないよ。ただでさえ魔獣の姿すら見つけられずにいるのに、足止めさせたしね。っと、あたしはシフラ。ドワーフだよ」

「ナオよ」

「ルティエラです」


 あいさつする3人。

 シフラはやはりドワーフのようだ。

 見た目は少女、中身は姉御。

 けど、様になってるのだからそれだけ経験があるということだ。


 シフラは男共をシッシッと追いやり、私達のテーブルに座る。


「痕跡すらないの?」

「そうなんだよねぇ」

「怪しいですね」

「だろ?だけど、ギルドを説得する材料もなくてね。帰るに帰り辛いんだよ」


 シフラは顔を顰めながらジョッキを傾ける。

 私達も料理が届き、食べ始める。

 酒を飲まない様子を見て、シフラは少し目を細める。


「……油断はしない、か。いい心がけだねぇ」

「見張りの連中も嫌な視線を隠さなかったしね。ここでも案の定」

「はぁ~。そんなんだから女が寄り付かないって、なんで分からないかねぇ。アホ猿共は」

「ここって女はあなた1人?」

「そうだよ。で、あたしが頭張ってる」

「大丈夫なの?」

「はっ!あいつらに組み伏せられるあたしじゃないよ。それにあいつらじゃあ、その気になりもしない」


 シフラは吐き捨てるように言う。

 あらま、部下共は可哀想ね。

 女には避けられ、最も身近な美女には男とすら思われてないとは。


「ま、あんた達の警戒は正しいよ。村娘も外に出さない様にさせてるしね。そろそろ諦め時だね」

「なるほどね。対策と見極めは出来てると」

「こんだけ男に囲まれてりゃね」


 シフラは苦笑する。

 私達は料理を食べ終わると、早々に部屋へと引き上げる。

 今日は大人しく寝ることにする。


 僕は男に戻って、周囲を探ってみる。

 ふむ。近くに強い魔獣の気配はないな。


「やっぱりもういないみたいだね」

「通り過ぎただけと」

「それも分からないね。村がどう襲われたのかも聞いてないし。シフラの感じだと、彼女も少し魔獣だったのか疑ってそうだよね」

「そうですね」 


 まぁ、魔獣じゃなかったら何のかってことだけど、出て行く僕らには関係ないね。

 私は再び女になって眠る。

 


 翌朝、私達は早々に出ることにした。

 宿を出てると、シフラが声を掛けてきた。


「道中気を付けな。あたしらも夜にはレーフェンに戻るよ。良かったら、また声でもかけておくれ」


 そう言って別れる私達。

 私達は昼前にはレーフェンに着いた。

 門の周囲では冒険者や商人の馬車であふれており、活気もある街のようだ。

 宿を取って、街を見て回る2人。

 武器屋に寄り、そこで魔剣などを見る。


「ふ~ん。出回っているのは下級とも言えないわね。だからこそ売られてるんでしょうけど」

「魔剣などは迷宮や神から授けられたり、高位や特異魔獣の素材で偶発的に出来るものとされてますが、ナオ様はどうなのですか?」

「作れるわよ?普通に」


 あっけらかんと答える私。

 予想していたのかルティエラは苦笑する。


「そうね。今日にでも作っときましょうか」

「……素材は?」

「何言ってんの?創ればいいじゃない」

「……流石です!」


 流石に少しどう答えていいのか迷ってしまったルティエラ。

 結局は感動が勝つのだが。


 武器屋を出て、ブラブラする私達。


 ギルドと思われる大きな建物の前を通る。


「お。見っけた」


 シフラが声を掛けてきた。


「見っけたって何?」

「あんた達一回くらいギルドに顔出しな。職員に聞いても、誰も知りやしない」

「だって、ここで依頼受ける気ないもの」

「……ということは【ブラケ】の迷宮かい?」

「へぇ。よく分かったわね」

「じゃあ、問題ないね」

「は?」

 

 シフラは私の言葉に頷いて呟く。

 それに首を傾げる私達。

 

「いやぁ。やっぱり依頼は失敗扱いでね」

「まぁ、そうでしょうね」

「そのペナルティで【ブラケ】に行くことになったんだよ」

「……ペナルティなんてあるの?」

「正確には『依頼人からの』ペナルティだね。依頼人はここの領主でね。貴族様の機嫌を損ねたのさ」


 シフラは苦い顔をして話す。

 私は面倒事の予感がした。


「それで『では、代わりにこの依頼を』ってことでね。【ブラケ】の迷宮で摂れる素材入手を受けさせられたんだよ」

「だから私達と一緒にって?」

「そういうことだね。アホ共は置いていくつもりだしね」

「いいの?」

「ペナルティまで付き合わせてたら、何起こすか分かんないよ。だから、まずこの依頼の事すら知らせてない」

「バレないの?」

「あたしは基本この街では別行動取るからね。街でまでアホ共の面倒なんて見たかないよ」


 肩を竦めて話すシフラ。

 なら、もう始めから組まなければいいんじゃ?

 そう思う私達だが、特に突っ込む気はない。

 

「まぁ、あいつらがいないならいいわよ」

「おし。じゃあ明日、門の前でね」


 そう言って去っていくシフラ。

 それを見送る私達。


「領主が絡んできましたね」

「そうねぇ。まぁ、こっちに来たら後悔するだけよ」

「そうですね」


 私はどうでも良さそうに答えながら、路地に目を向ける。

 ルティエラも目を向ける。


「追いますか?」

「いいわ。多分シフラが目当てみたいだし。言ったでしょ?こっちに来たら後悔するだけ」


 その言葉にルティエラは領主の事だけではなかったのだと理解する。

 私の言葉に頷き、従うルティエラ。



 私達は宿に戻る。


 晩飯を食べて、早速魔剣製作を始める。


「さて、どんなのがいいかな。ルティってレイピアが一番いいんだっけ?」

「レイピアか片手剣ですね」

「そうかぁ。……小烏丸っていいかもな」

「コガラスマル……ですか?」

「切っ先両刃の刀だよ。刺突にも斬撃にも向いてる」

「おぉ!」


 ふむ。反応は良好。

 では、作ろうか。

 

 僕はイメージを作り出して、魔力を練る。

 魔力が両手から溢れ出し、僕の前に集まる。

 集まった魔力を両手で潰すように力を込めると、魔力が縦長に伸びて圧縮されていく。

 そして、両手が合わさると同時に魔力が弾けて、僕の手の中に一振りの刀が生まれる。

 刀身1mほどの切っ先両刃の刀だが、刀身は赤色に染まっている。

 

「はい。【赤羽小烏】って感じかな」

「……アカバコガラス」


 僕はルティエラに渡す。

 ルティエラは両手で受け取る。


「とりあえず、【伸縮】【増幅】【切断】【再生】を付けといたよ」

「……流石ですね」

「僕は太刀と脇差にしよ!」


 ルティエラの反応を見ずに、気分良く自分の武器を作る。

 そして、僕は鍔無の太刀と脇差を作る。

 太刀には【切断】【再生】【金剛】【嵐】を。

 脇差には【切断】【再生】【伸縮】【雷】を付けた。


 鞘も作って満足した僕は、ご機嫌のままルティエラに飛び掛かって押し倒す。


 昨日出来なかった分も合わせて、ルティエラをとことん味わう。

 ルティエラは途中から記憶がないが、幸福感に溢れていたことだけは覚えている。



 翌朝、ルティエラの胸に顔を埋めている状態で起きる。


 ふむ。いい匂い。

 もちろんその匂いと朝であることもあって、元気になっている。

 ふむ!!行かねばならぬ!!


「ふぇ?ああ!きゃああ!!」


 ふむ!雌犬め!!良き吠え声だぞ!!もっと躾けてやろう!!


 堪能しました。

 



 準備を終えて、門へと向かうナオ達。

 ルティエラはまだ少し顔が赤い。


「まだ……余韻が強く……」

「ふむ♪今晩も可愛がってあげるわ♪」

「っ……!」


 さらに顔を赤くするルティエラ。

 うむ。かわゆい奴よ♪


 ルティエラの腰には赤羽小烏が、私は脇差を差している。

 

 門に着くと、シフラを探す。

 すぐに見つかったが、何やら揉めている様だった。


「姉御!連れて行ってくださいよ!」

「だからさ、もう登録してるんだよ。それになんだい?前回は渋ったくせに」

「そ……それはっ」

「そんな態度じゃあ連れていけるわけないだろ?今回は失敗できないんだから」

「っ!……」


 シフラに詰め寄っていたのは、村で見張りをしていた男だった。

 どうやら置いていかれることが不満だったようだが、取り合わないシフラの言葉に両手を握りしめて悔しそうにする。

 シフラもこちらに気づく。


「お。来てたのかい。すまないね」

「いいの?」

「いいんだよ。ほら、馬車用意してるからね」

「あら」

「あたしのだから遠慮しないでいいよ。乗った乗った」


 そう言って、幌馬車の御者台に座るシフラ。

 私達が荷台に乗り込むと、男に声を掛けることなく走り出す。


 男はそれを悔しげに顔を歪めながら、見送るしかなかった。


「くそっ!!……あの女共までいるのか」


 男は早足で移動を始める。


 その歩みには迷いはなかった。



ありがとうございました。

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