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救急車で異世界に運ばれました。誰も自分を引き取る病院がなくてとりあえず死にそうです。

頑張って異世界ものに挑戦しましたが……。

あれ?

あれ?

これはこれで面白いと思います。

読んでね。

「よう、読書家」

 


「な、なんだよお前」

 


「テメエのツラが気に入らねえ」

 


「理不尽すぎるな。なにか嫌なことでもあったのかい?」

 


「き、聞いてくれよ~」

 


 奴は泣きながら僕に絡む。

 

 

 彼は朴念ぼくねん じんって名前で中学からの親友ではなく、ただの腐れ縁である。

 

 

 同じ高校に行くとは思ってなかった。学力が同程度であったための悲劇。意識しあったりも約束もしなかったが同じ高校を志望した。あろうことか、現在同じクラスである。

 


 好きでも嫌いでもないが、同じ中学出身のせいか強制的に話し相手になってしまう。正直ウザい。

 


「で? なにがあったのさ?」

 


「聞けよ。南野みなみの未来みらいに告白したんだよ」

 


「君、無謀だね。彼女に求愛する人間は学内多数、女子ですら憧れて告白するという」

 


「詳しいな、お前。俺は昨日の放課後に彼女を見かけてビビっときてよ。今日告白したんだが」

 


「単純すぎて羨ましいよ」

 

 

「で、フラレた」

 


「それで、終わり?」

 

 

「で、終わりだと! テメエだ! テ・メ・エ!」

  


「自分が何か?」

 

 

「フラレたどころか、テメエと俺が仲がいいことにテメエを連れてこいと頼まれたんだよ!」

 


「どうして?」

 


「テメエが好きなんだとよ! 独処どくしょ 延雷頭のべらいずが好きなんだとよ。泣いちゃうぞ!」

 


 いや、さっきから怒りながら泣いているじゃん。騒がしい奴だな。ところで自分が彼女に好かれる要素や関係性がないのだが。仁の勘違いではないのかな? 聞いてみる。

 


「あのさ、聞き間違いじゃないのかな?」

 


「それを確認するために彼女にお前を連れて行くぜ!」

 


「ちょっ! お前」

 


 読書中で椅子に座っていた自分を担ぎあげる仁。コイツは物凄い力をもっている。それにしても、フラレたというのにまた彼女に会いに行くとは未練がましいな。力は男でも心は腐った男だな。

 


 しかし、自分の意思というのを考えて欲しい。自分は南野未来に興味がない。

 


 強制進行されて自分は学校のモテ女に連れて行かれるのであった。

 

 

 

 

 

 

 では、話の続きを始めるとする。

 


「独処君来てくれたんだね」

 


「会いに来たのではなく拉致連行されたんだけどね」

 


「嬉しい♥」

 


 嬉しいと思う気持ちはどう屈折した勘違いであっても嬉しいのだろう。本人の気持ちなのだから。でも、こんな強制イベントになんのロマンスがある?

 


 自分はくだらないと思い、暇つぶしに読みかけの本を出して目を通す。無礼だろうが興味がない者に礼儀なし。

 


「カッコイイ♥」

 


「は?」

 


 何を言っているのだろう? この女は。自分のどこに良さ見い出した? 本をだして見つめているだけだぞ。

 


「わからないの?」


 

「ああ」

 


「独処君のその知的でクールな顔がもっとも生きる仕草がそれなの。大好き」

 


 変わった女だ。別段好かれるのはいいが興味がないので去ることにする。

 


「じゃ」

 


「待って!」

 


「君より面白ことが本には溢れていてね。退散させてもらうよ」

 


「朴念君お願い」

 


「仁、テメエなにしやがる!」

 


 自分はまたもや奴の力で運ばれる。どこへ行こうとするのだ?

 

 

 

 

 

 

 連れてこられたのは住宅街の道だ。なんの変哲もないだだの十字路近くに僕はいる。

 

 

「で? どうしろと言うんだい? 自分に」

 


「私はいつも本を読みながら歩く独処君に見惚れていたの」

 

 

「そういうことね。それをここで再現しろということね」

 

 

 自分はかったるいが普段やっている歩きながら読書をやってみせた。これで彼女の気がすむのならやってやる。だけど、それ以上はサービスしない。自分は彼女の所有物ではない。

 


 そう考えながら不注意に歩いていたら災がおきる。よくある間抜けな事件。

 


「おい! 延雷頭危ねえ(あぶねえ)!」

 

 

「え?」

 


 B級のくだらない物語のように都合よく車が自分に突っ込んでくる。理由はわからない。お互い不注意なのだろう。自分は少し死を意識した。そして、意識が遠のいていった。 



 

 

 

 

 

 ここは、どこなのだろう? 自分は寝ているが何かに乗っているそんな感覚がした。

 

 

「気づいたか? 延雷頭」

 


「ここは、どこだい? 仁」

 

 

「救急車だよ。救急車」

 

 

「救急車?」

 


 自分は救急車に乗ったことがないのでテレビとかで見た映像しか想像できない。だが、なにか違う。

 

 

「お前、本当に救急車か? イタタタタ」

 


 自分は怪我をしたのかハッキリとはわからない。物凄いダメージでかえって痛みがわかりにくい。ことの重大さがわからない。とりあえず、救急隊員の人が見当たらないついでに南野未来も。

 


「もう一度、聞くぞ。ここは救急車の中か?」

 

 

「そうだよ。異世界のな」

 

 

 異世界だと? 仁は馬鹿だなとは思っていたがこんな妄言を吐くまで馬鹿だとはな。仁は知ったことかという感じで続ける。

 


「復讐だ。南野未来は俺より仁を選んだ。だから、お前の言うところの現実世界の救急車を呼ばずに俺の故郷、お前にすれば異世界の救急車に乗せた」

 


「そんなことに何の意味が」

 


「俺の故郷はイカレていてな。病院がないのに救急車はある」

 


「は?」

 

 

「つまり、救急車内での治療か医療技術のできる魔族に引き取ってもらう」

 


「お前、何者だ?」

 

 

「わかりやすく言えば異世界の留学生」

 

 

「まあ、お前は変わり者だと思ったが異世界人か……イテテテテ!」

 


「俺が応急処置したとはいえ重症だからな、あまり喋ると傷口にさわるぞ」

 

 

「一度死んだ身だ。どうでもいい。南野未来はグルだったのか?」

 


「いいや、全ては偶然さ。お前が事故ったのもな」

 

 

 で、コイツは最終的に何をしたいんだ? 悪意があるのなら俺を助けずに殺しておけばいいのに。

 


「お前の価値って奴をわからすためだ。さて、延雷頭を引き取ってくれる魔族はいるかな? 未来さんなら助けるだろうがこの世界に彼女はいない」

 


「どうでもいい。やっぱりお前は馬鹿だな」

 


「なんだと!」

 


 仁の奴が殴る。ものすごく痛い。痛いがなぜか笑えてしまう。

 


「お前。自分を価値のないさらし者にしたいだけだろ? くだらない遊びだな。失恋者のお前も俺を恋した女も幼稚すぎる」

 


「延雷頭さ、状況をわかっている? 惨めな思いをして死ぬんだぜ? 俺の力で寿命を延ばしているだけにすぎないんだぜ」

 


「どうもありがとう」

 


「食えない奴。あっちこっちにお前の引き取り手を呼んでいる最中だ。でもな、誰もお前みたいなカスは嫌だって返ってくるぜ」

 


「お前が勝手にやっていることだからな。わけわからん。頼みがあるんだが、死ぬ前に本読ませて」

 


「もう一度言うぜ。食えない奴。」

 


「お前も結構な奴だと思うぞ。引き取り手を拒否する相手を自分に合わせろよ」


 

「顔も見たくないだとよ。ただの人間は」

 

 

「こうして、お前の不思議な力で俺は命をつないでいるみたいだな。だが、本より価値がある奴だとは見いだせない。魔族とやらにはあまり関心持たれても面倒臭いかな。お前もウザかったしな」

 


「口だけは達者だな。下等生物が」

 


「その下等生物によく突っかかって来たのはお前だろ?」

 


「グッ。そうだけどよ……。あれ?」

 

 

「どうしたんだい?」

 


「魔王様が、魔王様が」

 


「マオ?」

 


「いや、大魔王様がお前を引き取るだと」

 

 

 仁は驚いているが、自分にはそれがすごいことのなのかわからない。最近の小説では魔王なんぞ大量生産されているからだ。

 

  

 

 

 

 

 やたらと豪奢な造りの城に向かい入れられる。魔王城だけあって不気味な佇まいは消せそうにもないが。

 

 

 どうでもいい。

 

 

 

「魔王様、お連れしました」

 

 

 下級魔族なのか知らないけどそいつと仁は魔王の御前に連れられる。

 

 

「待っていましたよ」

 

 

 女か。そういうオチも喜ぶ奴はいるだろうが自分には興味がない。しかし、誰かに似ているな。

 

 

 ! そういうことか。

 

 


「ああ、魔王様」

 

 

 仁の奴がだらしない顔で魔王に見とれている。誰かさんに似た魔王に。

 


「早速ですが、貴方を治療する前にやっていただきたいことがあります」

 


 魔王は言う。とても興奮気味だ。余程のことだろう。

 


「できることなら、何とでも」

 


 自分はあしらう気持ちで応える。べつに本さえ読めれば死のうが生きようがどうでもいいのだ。

 

 

「では、早速ですが本を持ちなさい」

 

 

 ああ、そういうオチね。

異世界といえばファンタジー。

ファンタジーじゃないじゃん。

読んでいただいて少しでも好評だったら

連作でファンタジーで書いてみます。

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