第二話
「何か、理由があるんですか。」
人体解剖?それとも異世界人としてどこかに売られちゃう?知らない世界?で嫌だよそんなの?!あ、でも、危害は加えないって言ってたよね。その言葉信じていい…のかな。
私はジッと、小さなお婆さんの言葉を待った。
「そう、警戒しないで…とは言わんさね。暴れないで貰えるのはこちらとしても助かっているからの。…私の話を聞いてくれるか?」
私はコクンと頷いた。
「よしよし、…ここは、◑◐☞⊗国というところさね。」
「え?…何国、ですか?」
「◑◐☞⊗国。こっちの言葉だから翻訳出来ないかもしれぬな。まぁそういう星があるということさね…お主の世界はどうだったか知らぬが、こちらでは日常的に魔法を使っておってな。
魔力を使った職業があるさね、その中で私は召喚魔導師の部類にあたる。そしてお主を召喚した理由じゃが、この国では、20年に一度、異世界から人をこちらに呼び寄せる習わしなのさね。
その理由には、『鬼族』という種族が関わってくるさね。」
「鬼族…?鬼、ってことですか?」
「同じように思うかもしれないけれど、ちゃぁんと分別されてるのよぉ~。
鬼族はね、私達人間とほぼ変わらないけど、特徴として頭にちょーっと見える程度の角が生えてるの!後は、人並み外れた怪力の持ち主ってことねぇ~。
鬼は、魔物の分類ね。鬼族より大きい角が生えてて、肌の色は赤、青、黄色と様々。普通に知性もあるし、敵に回したら厄介よぉ!どちらも地獄で雇われることが多いわねぇ」
つんつん!と頭に人差し指をあてて表現してくれた。この女性はモデル体型な上にお茶目なお姉さんのようだ。
「鬼は今でもみるさね、しかし鬼族は600年前を境にパタリと姿を消してしまった。それは竜巻事件と呼ばれているものからさね…だが、その起こった原因は謎のまま…人間と鬼族はお互い助け合っていた。その頃の関係を取り戻したいさね。
最初、鬼族と対話したのは異世界から来た人だとされての…
だから、鬼族に接触できる異世界人を、我々召喚魔導師達に、各異世界から一人呼び寄せる。そして今ここで私から召喚されたのが…」
「私、という訳ですか…」
「そういうことさね。」
なるほど、経緯は解った。鬼とかってこの世界に本当にいるんだ…ファンタジーだ。異世界だからそれもありうるのかな?色々な疑問とか質問したら答えてくれるかな…でも、敵意も殺意も無いことは、目を見てわかる。
話を理解して貰えてホッとしたのか、お婆さんはシワをくしゃっとして柔らかい笑みを浮かべた。
「…えっと、私も一応自己紹介、しておいたほうが良いですよね。黒木 優です。」
「クロギ・ユウ?異世界人は変わった名前さね」
「あぁえっと、私の世界では名前は後にくるので、こちら方式に置き換えるとユウ・クロギです。でも、呼びやすい方で構いませんよ。」
「ふむ…じゃあユウと呼ばせてもらおうかね!」
「えーと、じゃあ私はマドンナさんと」
「ここに来る人達はみーんなおばば様って言うのよ!長生きだ・し♡だから貴方もおばば様で良いわよ~」
「まぁ、呼び方は何でも良いさね。それよりアル、自己紹介しなさい。あんただけさねしてないの。」
「は~い、忘れてたのよ。アルゴ・シュバルツよ♡気軽にアルって呼んでね♡ゴの部分、あまり可愛くなくて嫌なの…」
そう言って私に向かってパチンとウインクした。レモン色の綺麗な金髪はくるくるとくせっ毛で可愛らしい。ライトグリーンの瞳も綺麗。睫毛バサバサしてる…羨ましいなぁ。
「コイツはオネェさね、でもまぁ悪い奴ではないよ」
「やだ、お姉さんって印象が良かったのに!おばば様のバカぁ!なんでバラしちゃうのよぉ!」
「え、そうなんですか?!てっきりモデルさんかと…でもそうか、オネエさんだったんですね。」
「ちょっとぉ~!発音違うわよっ!?でもモデルさんに見られたから良いかなぁ!!!」
アルさんは手をブンブンと目の前で振ったあと、頬に手を当てて顔を赤らめた。でも腕も足も細いし、スタイル抜群だし、本当に羨ましいと思う。…そういえば、背も高くて声も低いような。
でもマドンナさんもアルさんも悪い人では無いかなと思った。…少し疑ってるけど、勘。
「それでは…お、おばば様、アルさん、改めてよろしくお願いします。その、それでいくつか質問とかもあるんですが、宜しいでしょうか?」
「もぅ~そんなに頑なにならないで!アルで良いわよ!リラックス!…そうだ!立ちながらじゃなんだし、二階に上がってお茶でも飲みながらどう?ね、おばば様、どうせ貸し切りでしょぉ?」
「そうさね…じゃあ上においで。」
おばば様は黒いローブのフードをバサッととって階段の上に上っていった。
「それじゃ、私達も行きましょうか!!ユウ」
「はい、アルさ………ア、ル。」
さんを付けようとするとジッと見つめられて、慌てて呼び捨てで呼ぶと、彼女はにこっと綺麗な笑顔で笑ってくれた。
少し不安な気持ちを抑えながら、私は彼女の後に付いていった。




