第一話
[プロローグ]
『嫉妬』
なんと醜い感情なのだろうか?自分の持てていない、能力、偏差値、立場、それらを妬んで羨む、そして、最終的にはそれらをぶつけるように嫉妬している感情をぶつける。
それは相手に分かるようにでも、分からないようにでも、嫉妬とは良くない感情だ。酷いと言うけれど、貴方は思わなかったことがあるの?嫉妬して、最低よね、なんて、貴方が言えるの?まるで自分が思ってないだなんて嘘をついて…これだから人間は__
大嫌いなんだ。
彼女の苛立ちを表すように、風が、台風がいくつも激しく巻き起こった。竜巻はまるで人のように中では彼女を優しく包み、そして外部には牙を剥くように、彼女が歩いた所の村々を襲った。
伝説のような話だが、それは現実であった。その事件は、風が村の人々を襲ったとして、『竜巻事件』と呼ばれた。
事件が起こった国では過去最多の犠牲者を出し、行方不明者多発。生き残っている人がいても、かなりの重傷を負った。数名の生き残りの人達は、順調に回復に向かっていた中、この事実を世界に広めねばなるまい、と、メディアの取材を受けた。その証言は、瞬く間に全世界へ広がった。
『__台風の中、私達の中に、防御魔法を使える者がいて、相手と近距離であったため、みえたのです。竜巻の中のあのシルエットは紛れもなく___鬼の子でした』
その情報が流れ出した日は、雨の日だった。鬼族は、心優しい種族だった。力を秘めていても、決して金棒を振り回したり、金目の物を奪ったりと、そんなことはしていなかった。
人類と鬼族は、手を取り合って協力して生活していた。だが、事件を境にパッタリと、向こう側がこちら側に接触しなくなった。
幸いにも、その事件以降、何も起こらなかったが、人々は
『鬼族は鬼だった、鬼は我々を残虐しようとしているのだ。』
と、鬼族を恐れた。
それから月日は流れ___
「あれから何百年たったかのう?」
現在の人達から消えていく記憶を、彼女だけは覚えていた。この話は、彼女を呼び出すきっかけになる話だということだけは言っておこう。
† † †
「…ここどこ…?」
私は黒木 優。もうすぐ高校一年生になる。
普通に家の中に居たはずなのに、いきなり知らないところにきて戸惑っています。状況説明求ム!
「あら~、また可愛らしいお嬢さんが召喚されたこと!こんにちは♡」
…???何語だろう?聞いたところ英語っぽくないし…当たり前だけど日本語でもない。
綺麗なお姉さんがこちらにヒラヒラ~と手を振るので、一応後ろに人が居ないか確認してから、ども。とふりかえす。
「…まだこの子に翻訳の魔法かけてないさね、どこの星のものか解らないのによく口がきけるね。そら、ちょっくら離れてなさい。」
◐‡¶※§☞⊗Д●…
何やら編み込まれたカーテンの中から、魔女?の格好をしたお婆さんが出てきて呪文らしきものを唱え始めた。
杖から輝しい光が漏れ始め、それが私の目の前に魔方陣を作った。最初はCGを使ったコスプレイヤー、か何かだと思ってみたが違った。魔方陣が消えた瞬間、私の中に電撃のようなものが走り抜けた。
「っ?!」
「ふぅ…成功さね!」
「うふふ、さすがおばばさま~♡私、こんなに上手に魔法使えないから、憧れるわぁ~」
「こんなの努力すれば誰でも身につくわい、それよりお主、私達の言葉が分かるさね?」
おぉ…、言語が分かるようになった。…本当にここはどこ?絶対地球じゃないのかな?私は夢を見ているの?
「はい…わかり、ます。」
「そりゃ良かった。ま、男でなかった分マシと言うべきか…アンタをみて変な気を起こしたらたまったもんじゃないからねぇ…」
「あら、対抗の術は身につけているわよぉ~」
プンスカと綺麗なお姉さんが怒る。にしても、随分身長が高いなぁ、モデルさんみたいだ。…って、そんなことはいいから!
私はお婆さんと向き合った。
「あの…、あなた方は何者なのでしょうか?そしてここはどこなのですか?」
「あーっと、そうさね、こっちから名前をあげようかね。私はマドンナ・ルイ・ブレイク。不審者と思うかもしれんが、お主に危害は与えんさね、それだけは信じておくれ。まずはこちらの諸事情により、召喚してしまったことをお詫びしますさね…申し訳ない。」
そう言ってペコリ…と小柄なお婆さんが頭を下げた。
…召喚???え、何それ???
「召喚…ってどういうこと、ですか、それに、さっきの言語も、名前も、外見も…あ、ハロウィンパーティーか何かですか?あ、それともか、ドッキリですか?どこかにカメラでも…」
私は辺りを見渡した。部屋は山小屋のような内装で、上には見たことない木の実、葉っぱが乾燥させられていて、私の周りには実験につかう様々なビーカー、フラスコのようなものの中に色んな色の液体がブクブク煮立っていたり、凍っていたりしていた。
ふと、下を見ると、床に白いチョークで書かれたような大きな魔方陣が描かれていた。
嘘だ、冗談でしょ?という思いでお婆さんを見つめる。
「…はろうぃん、ぱーてぃー?でも、ドッキリでもないさね、ここはお主の住んでいる星とは違う星、だからさね、、、」
私は、ゆっくり唾を飲み込んだ。これは、これは、似たようなこと、小説で見たことある。頬をつねってみるが、いたい。夢じゃない。もしかして…もしかしなくとも、私。
「異世界に、転移してきた…んですか」
「……そうさね。」
彼女の一言に、私は不安を覚えるしかなかった。




