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謀略

【魔将シルヴァ】


 魔王城の部屋に入るや否や、壁に拳を叩きつける。

「くそっ!」

 思い出しただけでも、ハラワタが煮えくり返る。まさか、あのギルガンがあの小娘に力を貸すなどとは思っていなかった。

 あまりにも、あの魔王が無防備すぎて油断した。あの宰相ガトが何の策も施さずノコノコこの場に来ると思っていたなんて。これほどの屈辱を浴びるのは、果たして何十年振りだろうか。あの無能そうな魔王に公然と屈辱を受け、弄ばれたのだ。その事実はもはや消えず、奴の死でしか屈辱は払えないであろう。

 早ければ早いほどいい。正式な魔王となると厄介だ。それまでになんとか決着をつけなければ。

 その時ノック音がして、

「「シルヴァ様。ただいま戻りました」」

 マルフォとゼモーゼが俺の部屋に入ってきた。

 来たるべき時に備えて、直属の暗殺部隊の魔族を育てていた。中でもこの刺客マルフォとセモーゼの魔力は飛びぬけていた。幼少の頃から、直々に鍛え上げた自慢の懐刀だ。

 二人は俺の前で跪き、羊皮紙を俺に差し出した。


 魔王マリア 魔力 G-


 そこには、そう書かれていた。

「……このデータは間違いないか?」

 その予想以上の数値に思わず、声が上ずってしまう。

「「はっ。間違いありません」」

 マルファとゼモーゼが淡々と答える。

「わかった。すぐに準備せよ」

「「はっ」」

 マルフォとセモーゼはそう返事をし、去って行った。

 魔力羅針盤は、極秘で開発した魔力測定器具だ。一概にこれだけで強さを測ることはできないが、魔法を主に戦闘に使う者にとっては重要な指標となる。最上位はA+で、魔王レジストリアがそれにあたる。五覇将の俺はA-、宰相ガトはB+だ。G-はほとんど魔力がない。いわば、人間の世界でも不能者と言われるレベル。恐らく奴は失敗作。魔王の血は受け継いでいるかもしれないがその絶大な魔力は引き継げなかったと言うことだろう。そして、見た目にも肉弾戦が得意とするとは思えない。

 マルフォとセモーゼもまたB+。ダークエルフのこの二人と戦えばいくら宰相ガトと言えど苦戦は必死。あの二人でも十分に足止めになるだろう。

 そして、今日がこれ以上ない好機と言えるのはあの兇刃ゼルカスがいないことだ。五覇将並の戦力を誇るあの戦士が、理由がわからぬが一二〇年振りに休暇を取った。恐らく、あの魔王マリアの不出来さにやる気を失ったのか。どちらにしろ、自らの人望のなさを呪うがいい。

 久方ぶりの争いに滾る血を抑えきれない。魔王代行の暗殺で宰相ガトの失脚は間違いないだろう。後釜はヴィヴィアンだろうが、あの女の実力はすでに大陸では広く知られている。五覇将の実力に満たぬヴィヴィアンなど、ハッキリ言って器ではない。宰相ガトがいなければ我らを統べることなどできはしない。

 揺れる大陸を思い浮かべると、思わず震えがくる。

「フフフフ……フハハハハハ! フハハハハッ!」

 高笑いが思わず漏れる。この大陸を割るのが自分。震撼をもたらすことがこれほど心地よいとは思わなかった。



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