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では、宜しくお願いします。
ガルネィクから放たれた獣人を貶める言葉に、息をのんだ者達は驚愕から覚めるなり愚かな発言をしたガルネィクに冷ややかな白い目を一斉に注いだ。より反応が顕著だったのは獣人達だ。怒りと殺気を隠すことなく睨み据えている。
「お、お前はっ!じ、自分の言ったことが分かっているのかっ!!」
ガルネィクの親だろう、壮年の男がブルブルと身を震わせながら叫んだ。王太子たるガルネィクの父であるならば一国の王であろうが、口角泡を飛ばすその顔はひきつり蒼白だ。そこに王の威厳はなかった。
然もあらん。獣人が斯様に罵り虐げられていたのは遠い昔のこと、今ではジョーシルバーに守護された地に住まうことを許された唯一の種族だ。
虐げられた歴史がそうさせるのか、獣人の結束は他の種族と比べてことのほか固い。世界の至るところに住む獣人だが、全ての獣人がジョーシルバーの森の同郷であることも一因だろう。
彼らは独自の情報網を持ち、事が起これば、たちどころに全獣人の知るところとなるのだ。そして、敵と見なした者には獣人全てが報復行動に移る。その敵がたとえ国であってもだ。
かといって、戦争、暗殺なんて物騒なことは……しないと断言は出来ないけど、負の連鎖は面倒だからね。殺されたとか、拐われたとか、汚されたとかだと話は別だけれど。僕ら獣人族はただ元凶のいる集落から立ち去り、今後一切関わりを絶つってな報復を行う。消極的?……なわけないでしょ。
ジョーシルバーの森に生まれ育つ獣人達は森に生きる者と、森の外で生きる者とある。森を出た者達は総じて才長けており、高名な者も多いが、名を広く知られずとも『獣人族が一人いるといないでは桁違い』の優秀さを備えている。もちろん全員がジョーシルバー学園卒業者である。因みに、森にいる獣人にも卒業者はいるよ。適材適所である。
その彼ら全てが関わりを断ち切る。多種多様な才に長けた者が手を引き、去っていく。村や町単位で、あるいは国単位で。獣人がいなくなるだけじゃない。獣人が関わる魔道具や武具、薬草などの物品、情報や助言、興行など多岐にわたる。
しかも、周囲に宣言ぶちかまして行動に移すから、隠匿も出来ず敵対した相手は堪らないだろう。それに追随する他種族もいるからね。日頃からの親交の大切さが身に染みるよ。才ある者の知己は才ありってね。交友範囲は才のあるなしだけじゃないよ?才に長けてなくとも善き者は大勢いる。
そんなわけで、獣人が敵対すると世界中を巻き込んでの四面楚歌状態に追いやられるってこと。居たたまれないよねー。
今の状況から自国がその報復をされるんじゃないかって、テルビーニの王様はそれを危惧してるんだろう。そりゃそうか。
「……今の発言は、テルビーニ王国王太子としての発言か?それとも、ガルネィク一個人のものか?」
「この私を呼び捨てにす……っぅごがっ?!」
「一個人のものであるっ!!……獣人族の皆様、愚息の愚かな発言、誠に申し訳ない!」
ひりついた空気のなか発した僕の問いに、いまだに空気読めないガルネィクが食って掛かったが、怒濤の勢いで駆け寄った父王が皆まで言わさず殴り倒しながら叫んだ。
無様に倒れ込んだ息子にかけよろうとした残りの三阿呆を一睨みで制し、謝罪の言葉とともに四方に深く頭を下げた。
「テルビーニ王国としての言葉でないと理解した。獣人族は貴方の謝罪を受け入れましょう」
「王たる父上が頭を下げるなどっ……っごぐぁっ!」
「黙れっ!」
まだ言い募るガルネィクに鬼の形相で一喝、脇腹に蹴りを入れた王様、怒り心頭ですね。三阿呆真っ青で固まってるよー。
「まあまあ、その辺で。今回の件についての彼らの処遇は学園側の協議結果をお待ちください」
「如何様な結果も受け入れよう。この度は誠に申し訳なかった!」
ほっといたら蹴り続けそうだし、王様の血管切れて倒れられても面倒なんで、とりあえず止めとく。それにしても、王様が獣人の小僧の僕に対して躊躇なくガッパリ頭下げるとか潔いね。この親にして、あの阿呆を王太子に据えるとか不思議だね?
「不躾は承知でこの際に尋ねます。ご子息はガルネィクお一人ですか?」
はい、気になったので聞いちゃった。てへ。
「三人おりますが、それが何か?」
え?ガルネィクの他にも王子が二人いるの?訝しげながらも答えてくれた王様をガン見しちゃったよ。王子三人いて、アレを王太子に据えるとか……どんな究極の選択したんだよ。
「失礼だが……彼が王太子という立場であることを些か疑問に思いましてね」
率直に告げれば、あぁ……と、重い溜め息とともに納得の声を洩らした王様は、こめかみをグリグリと拳で揉んだ。アレをこのまま未来の王とするなら、そりゃ頭も痛くなるよね。存分に揉みほぐすといいと思うよ。
「ガルネィクは三人の王子の中で一番王となるに相応しい優秀さで、それは重鎮達も認めていたのだ」
えー、それ本気?本気で言ってるの?あんなので一番優秀とか、王子達どんだけポンコツ揃いだよ。もしかして傀儡王として優秀ってことなのか。もしくは救いがたい親バカってやつか。
周囲の者達も『何言ってんの、こいつ』って顔で王様に生温い視線を送っている。考えてることは一緒だね。
「そ、そういったことではない!違うぞ!」
「……何も言ってませんよ?」
「いや、そうだが!いや、違う!」
「何がかな?」
「だからっ、本当に違うのだっ!!」
僕も含めた周囲の視線を正しく察した王様は慌てて否定するけど、僕達なーんにも言ってないよ。ただ、目は口ほどに物を言うってね。
ちょっと王様でちょっとばかし遊んじゃった僕を許してほしい。ギルの視線が刺さってくるのはきっと気のせい。
「優秀だったからこそ王子の中で唯一、王太子のガルネィクがこの学園に入学を許されたのだ!」
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