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§2『異世界転移』

 俺が意識を取り戻したとき、最初に目に入ったのは綺麗な青空だった。おお、自然って感じがして良いなぁ。


 大気汚染の進んだ地球では殆ど見れない澄みきった青空に、俺の心も弾む。


 視点を落とすと、俺が立っているのは山道であることが分かった。かなり幅は広い。しかし辺り一面には岩か空しか見えない。これではどうしようもないので、早速特典(チート)、『簡易マップ』を使用してみる。『探索』というモードがあるので、検索欄に『都市』と入れて検索してみる。


 半透明の地図が出現した。ぱっと見はFPSの簡易マップみたいな感じだ。中央に緑色の光点。多分俺だろう。マップの画面をタッチ操作で動かしてみると、暫く行ったところに『オリュンスフィア』という街があることが分かった。便利だな簡易マップ。


 そこまでの道のりを頭に焼き付け、俺は足を踏み出した。



「……しかし……暇だな……」


 行けども行けども辺り一面岩だらけ。暇潰しと言えば簡易マップくらい。これではどうにもつまらない。


 そうだ、今のうちに魔術の使い方をマスターしておこう。えーっと、ヘルプヘルプっと……。


「何々? 『魔法は魔力を練り上げて、イメージと共にキーワードを唱えることで発動できます。魔力を練り上げるという行程は、さながら気を練るように──』……意味がわからん」


 そもそも気って何だ気って。


 そういえば魔力は血液みたいに体を循環している、とか昔読んだ漫画だかラノベだかに書いてあったな。よし、試してみるか。


 俺は取り合えず自分の右手に意識を集中させてみる。身体中を流れる魔力(?)を探し求め、それを右手に集約していく感じ──


「……っ!」


 暫くすると、俺の右手を取り囲むように、空気が歪んだ気がした。今のが魔力だろうか。取り合えずキーワード、とやらを口にしてみる。


 色彩魔術の中で、現状一番無害そうなのは……水を司るという青属性か。


 青属性は水や癒し、静寂、流動などを司るらしい。丁度いい、水でも出そう。


 キーワードは『水よ』だそうな。短っ! Aランクだから詠唱省略みたいなのが発生してるんだろうか。


 とにかく、右手のブレが消えないうちに、発動させてみよう。


 脳裏に描くのは宙に浮く水の球──


「水よ」


 次の瞬間。

 俺の右手に集っていた魔力(?)が形を持った。それらは鮮やかに、空のような青色に変貌すると、次の瞬間水の球体となって顕彰した。


 ミネラルウォーターのCMにでも出てきそうな水の球が、ふよふよと俺の目の前を浮遊する。


「おおっ!」


 思わず声を出してしまった。すげぇ、これが魔術か。良いねえ、異世界って感じがしてテンションが上がってくる。


 ヘルプを読み込んでみると、魔術は体内の魔力と体外の魔力──『オド』と『マナ』を消費して発動するらしい。オドを多く注ぎ込めば、より魔術は強力になっていく、という事だった。ただしそれはCランク以上の魔術スキルを保有していなくてはいけないらしいが。俺は色彩魔術がAランクなので問題ない。


 色彩魔術は、『色魔術』としての大別と、それぞれ内包するエレメントによっての『元素魔術』としての大別があるらしい。青属性は主に水属性の魔術を多く含むわけだな。ややこしい。


 幼女神の言い方からして、色彩魔術以外にも魔術があるらしいから、この二つ以外の分類をする魔術もあるのだろう。


 さて、いつまでもこの水球をふよふよと浮かせておくわけにも行くまい。プリズムみたいで綺麗なのは綺麗なんだけども……飲み水とかには成りそうだけど、今喉乾いてないし……どうするか……等々と考えていると。


 簡易マップに、反応。俺の他に、もう一つ光点が出現する。色は赤──


「……ッ!」


 『ソレ』が視界に入ったとき、俺の体は緊張で強張った。


 ぱっと見は、昔テレビ番組で見た溶岩のようである。赤いドロドロとした本体に、それを守るように張り付く岩。しかしそれはただの溶岩ではない。自らの意思を…多分だが…持って動くそれの情報を、俺の『鑑定』スキルが脳裏に表示する。


 ▼▼▼


 ラーヴァスライム

 スライム/モンスター 赤属性 攻勢アグロ

 Lv5 危険度:C HP50/50 MP20/20

 【スキル】

 赤属性魔術:E

 補食(スライム)A


 赤属性の第二段階下級スライム。弱点は水属性の魔術。


 ▲▲▲


 スライムだった。

 ラーヴァ、と言うことは、外見の通り溶岩ラーヴァなのだろう。溶岩から出来たのだろうか? モンスターの誕生の仕方とか、そのうち知りたいものである。


 この世界に来て初めて見る、モンスター。ぷよぷよと可愛らしく動く彼(彼女?)はしかし、Lv5かつ危険度Cと、俺より強く、中々強敵っぽい。


 どこに目があるのか。スライムはぴくん、と一つ跳ねると、思った以上のスピードでこちらに向かって突進してきた。うおっ!


「おわぁぁっ!?」


 情けない悲鳴を上げて飛び退く俺。だって仕方ないじゃん! あいつ動くよ!


 ……いや、それはアグロモンスターなら当たり前だろうが。


 というか思ったより早く動けるな。山道で中々疲れなかった辺りで薄々感づいてはいたが、どうやら『身体強化A』のスキルは、さっぱり家から出ないプロニートな俺を、一流のアスリートレベルまで押し上げてくれるらしい。スキルさまさまである。


 どっちにしろ、何ともファンタジーゲームめいた状況ではある。どうやらラーヴァスライムは弱いスライムに位置するようだ。なら、あのスライムを倒す事も出来るだろう。


 幸いにして、ラーヴァスライムの弱点は水属性だそうだ。それは丁度、俺の横に浮いているじゃないか。


「せいっ!」


 右手をラーヴァスライムに向ける。同時に、水の球をラーヴァスライムに投げつけるようにイメージ。これで水球が、ラーヴァスライムに激突──


「……?」


 ぺしゃり。

 ラーヴァスライムは、水を被っただけだった。ダメージは、発生しなかった。


「ありゃ」

「……!」


 呆ける俺。

 怒る(?)スライム。


 スライムの周囲に、突如として炎の輪のような物が出現する。その中央に描かれる、奇妙な紋様。そして火の輪はあたかも大砲の銃口の様にこちらを見据え──


 熱々(と思しき)溶岩を発射してきた。


「うおわぁぁっ!?」


 再び情けない悲鳴と共に、その一撃を避ける俺。その隙を狙って、スライムが再び突進してくる。くそっ、やっぱり速い……!


「ぐあっ」


 腹に一撃貰ってしまった。多分、俺のHPは少し減っているのだろう。鈍い痛みが走る。ただ、やはり異世界だからなのか。それとも、エインフェリアになったからなのか。地球で同じ様な衝撃を受けたときよりも、ずっと痛みは小さい気がする。なんだか行けそうな気がするー。……古いな。まぁいいか。


 兎に角体制を建て直し、再び水球を貯める。さっきは何故上手く行かなかったのか。ラーヴァスライムが放ったのは、恐らく火属性の魔術だろう。何故俺には同じことができないのか。イメージが足りないのか? ……いや。


「……水よ!」


 今度は小さく叫びながら、右手を突き出してみる。同時に、水の弾丸がスライムを貫くイメージ!


 果して。


 水球は一瞬で間合いを詰め、俺の期待通りにラーヴァスライムを貫いた。音のない悲鳴を上げて、ラーヴァスライムが砕け散る。


「よっしゃ! 初勝利アンド初攻撃ヒット!」


 思った通りだ。

 重要なのな『キーワード』だ。『鍵言葉』なんて言うくらいだからな。

 きっと、本来は様々な詠唱があるのだろう。無数の鍵言葉があるのだろう。


 しかし俺は、色彩魔術Aランクだ。詠唱省略によって、あらゆるキーワードは一言で済んでしまう。

 だからこそ、魔術の判別が付かなかった。先程のラーヴァスライムの魔術、魔方陣の中央に出現した奇妙な文字。あれこそが、スライム語のキーワードだったのでは無いだろうか。


 そして、繰り返すが俺の魔術は全て一言で発動する。ならば、その一言を唱え直してから魔術を行使すれば、先程のように弾丸が撃てるわけだ。


 ……しかし、これはこれで中々面倒くさいな……。


 っと、リザルトの確認忘れてた。

 危ない危ない。


 俺はステータスウィンドウを表示する。レベルが1上がり、スキルポイントが5貯まっていた。


 折角なので、新しいスキルを取ってみようと思う。


 メニューから、取得可能スキル一覧を選択。大量のスキルが羅列されている。すげぇなこりゃ。釣りとか歌なんてのまである。阿波踊りスキルとか何に使うんだよ。


 と、内心で苦笑しながらスキルをスクロールしていくと、中々良さそげなスキルを見つける。


 『剣術』。内容は、そのまんま剣の扱いをサポートするスキルだそうな。獲得に必要なスキルポイントは1。


 今はまだ試していないが、俺の戦闘スタイルは、魔術と、そして『アゾット剣』を用いた、魔法剣士ルーンナイトスタイルになるだろう。


 そうなったとき、全く剣術の経験などない俺には、アゾット剣を扱いきれない可能性がある。それは嫌だ。アゾット剣を自作するほどアゾット剣が好きな俺に、それは耐えられない。


 だからこそのこのスキル。アゾット剣を使うためだけじゃなくても、取っておいて損はないと思われる。


 と言うわけで。



 ▼▼▼


 Lv2 位階1

 【パラメーター】

 VIT:C(+1),STR:C(+1),DEF:C(+1),INT:C(+1),DEX:B(+1),AGI:C(+1),POW:A(+3)

 素養:C(+999)

 【スキル】

 色彩魔術:A

 ・赤属性魔術:A(+0)

 ・青属性魔術:A(+1)

 ・黄属性魔術:A(+0)

 ・白属性魔術:A(+0)

 錬金術:A+++(+0)《アゾット剣》

 エインフェリアの証:EX 

 剣術:E(+1)

 【スキルポイント】

 無償:5→0


 ▲▲▲



 そうそう、ついでにステータスにも少し振ってみた事を、一応言っておく。



 ***



 その後もラーヴァスライムには何体か遭遇した。エインフェリアの証の効果なのか、かなりハイスピードで経験値が貯まっていき、現在のLvは5である。


 そうそう、アゾット剣も錬金術で作ってみた。白銀の刀身をもった小振りの片手剣が出現したときはもう感動したね。


 ただ、宝石や鉱石などの素材が一定以上無い場合は、大気中のマナを素材にするらしく(これはアゾット剣だけでなく錬金術全般に言えることだそうな)、全部をマナで置き換えた作品はすぐにマナに還ってしまう。早く金属が欲しいものである。


 EXランクで作成可能になる『賢者の石』はこの問題を全て解決してくれるらしいのだが……くぅ、欲しい。早く錬金術をEXランクにしたいものである。


 と言うわけで、現在のステータスは以下のとおり。


 ▼▼▼


 Lv3 位階1

 【パラメーター】

 VIT:C(+4),STR:C(+4),DEF:C(+4),INT:C(+4),DEX:B(+4),AGI:C(+4),POW:A(+6)

 素養:C(+999)

 【スキル】

 色彩魔術:A

 ・赤属性魔術:A(+3)

 ・青属性魔術:A(+5)

 ・黄属性魔術:A(+3)

 ・白属性魔術:A(+0)

 錬金術:A+++(+5)《アゾット剣》

 エインフェリアの証:EX 

 剣術:E(+1)

 【スキルポイント】

 有償:0

 無償:15→0


 ▲▲▲


 この調子で、異世界生活を満喫していきたいものである。


 と、そんな感じで俺が岩肌の山道を進み続けること、この世界に降り立ってから約一時間。


「おおっ!」


 眼下に、遂に街らしきものが見えた。


 周囲を切り立った崖に囲まれた、カルデラ都市。街の中央にある大きな建造物が目を引く。

 天然と人工の城壁に守られたあの街こそがきっと。


「あれが……『オリュンスフィア』か」

 


 そうして俺は、どこか聞き覚えのある名前の都市へと向かって、足を踏み出した。


 ──さしあたっては、この崖を降りなければならないんだがな! うわぁ面倒くさい!

 お気に入り登録くださった皆様、ありがとうございます。


 数え三話目にしてようやく異世界に転移して色彩魔術が出てきました←遅い

 次回はようやっと拠点の街に入っていきます。


 感想、ご指摘等、よろしくお願いいたします。


 次話投稿は明日20時を予定しています。

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