プロローグ 始まり
短めですけど
<Infinite Possibilities World>
IPWと呼ばれるVRMMOである。
メイン・サブと二種類のジョブを装備し、戦う。これだけ聞くとありふれたゲームスタイルのように思えるかもしれないが、実はそうではない、タイトルのとうりなのだが、無限の可能性が存在し、あまり変わった行動をとっている場合、運営が新しいスキルや称号を作成し取得させることもあるらしい。
ただ、僕を誘った幼馴染たちの話ではまだオープンβが終了して間もないため、ある程度は制限もあるらしいのだが、どのジョブでも努力次第ですべてのスキルを習得、使用が可能でき、スキルの使い方次第では、上位互換のスキルよりも強いことまであるらしいから驚きだ。
さらに、自立型AIや、可能な限りリアリティー重視のグラフィック。
ゲーム廃人予備軍の幼馴染がほかのVRMMOとは比べ物にならない、と絶賛するくらいの完成度らしい。
そして正式オープン当日、僕は「IPWをしよう!」と誘ってきた幼馴染である泰助と加奈に
『化学教えて!』と
冬休みの割と初日から家に押しかけられている訳だが、正式オープンの当日だからIPWをやるのかと思っていた。しかし、どうしてなんだろうか、この二人には休日のたびに勉強を教えているのにどうしてか化学だけは一向に伸びる気配がない。それ以外は少しずつ伸びて行ってるし二人とも向上心はあるのになぁ。
「二人とも、化学のどこがわからないの?」
なんて会話も僕たちの日常になりつつある。
「えっと、あれだよ。運動エネルギーとか、位置エネルギーとか」
「私はね~、あの、今は運動の法則とか?」
おい、泰助はまだいいとしても加奈、君はどうして疑問形なんだ。いい加減心配になってきたよ。
「おしえろよ~、凪~…分かった冬休みの課題を教えてくれたら懸賞で当てたこのIPWの用の機材を君にプレゼントしよう。俺はβテスターだったからもらえてるし」
泰助が目の前で紙袋を揺らす。
僕がほしがっているのを知っているくせに、卑怯なやつめ。
「まあ、僕には損はない話だから、いいよ」
「ねえねえ、凪ちゃん?冬休みの課題まで追加されてるけど、いいの?」
「うん、どうせ教えるのなら大して変わらないし」
こうして勉強会が始まったのだが、二人はまじめに勉強をしている。正直遊び始めるんじゃないかと思った。少し休んでもいいかな?
「ねえ、二人とも、少し休憩にしよう、なにか食べる?」
「休憩するんなら、ちょっとIPWをやってみないか?」
「あ~、わたしもやる!」
ゲームの機材を取り出しながら言う泰助と加奈。
ゲームの機材とは言ってもかなり小さいもので、ヘッドディスプレイと脳波を読み取る機材の付いたヘルメットのようなものを被るだけでいい、と言ったもので、機材を装着して、ログイン宣言をすることで視界がゲーム画面に切り替わる。また、ログアウト宣言をすることで体が動くようになるのだが、それまでのあいだは脳波を機材で読み取ることでVRMMOの中で体を動かすので現実の体は動かないから注意が必要だ。
「二人ともねぇ、このために今日うちにきたの?」
『うん!!!』
やっぱりそうだったか、なんとなくそう思っていたよ。まぁ、いいか。
「いいよ。でも初期設定とかって時間かかるんじゃないの?」
『あ…』
さっきからハモリすぎな気がする。と言うかそこら辺考えてなかったのか。
「はぁ、じゃあこの課題だけ片づけてからやろうか」
「わかった。」「いいよ!」
相変わらず加奈は元気がいいな。
「じゃあまず泰助の分から終わらせるから、加奈はちょっと待ってて。」
「これは、泰助が!泰助が受けかぁぁぁぁぁ!」
加奈が妄想の世界にトリップしてしまっているうちに終わらせてしまおう。
「なぁ凪、あれ、また妄想か?」
さすがに急すぎて驚いたのか泰助が聞いてくる
「うん、そうみたいだからその間に課題を終わらせよう」
なんてことがあったのだけど、結局一時間ほどで僕の課題まで終わらせた。
「よっしゃぁぁぁ!おわったぁぁぁぁぁ!」
そんな泰助の叫びを無視して加奈は
「よしじゃあ~まず、凪の初期設定を終わらせよう。初期設定っていってもね?いくつかの質問に答えて~、名前と生年月日を入力するだけでいいんだよ」
「え?時間がかかるんじゃなかったの?」
「無視は嫌だぁぁぁ」
泰助を忘れるところだった。あぶない。
「ごめんごめん、それで?」
「本体の設定はそうでもないけどIPW自体の設定に時間がかかるんだ~とりあえずやってみるといいよ」
「うん、分かったやってみるね。」
こうして僕たちの冒険が始まったんだ。
泰助は最初はこんなはずじゃなかったんです。