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PROLOGUE

 ――繰り返す。何度も繰り返す。

 それが人の運命(さだめ)であるかのように。それこそが、人の背負った業であるかのように。

 どれほどの時が経っても――

 どれだけの命が散っても――

 何度繰り返しても、結末は同じだった。その輪廻はまるで、袋小路に迷い込み、出口の無い迷路の中を彷徨っているようでもあった。


 理想に燃え、正義の心を胸に秘めて戦った。その為に多くの命が散った。倒した悪と同じだけの正義が消えて行った。

 それでも、戦いが終わる事はなかった。倒した悪の数だけ正義が消え、そしてまた新たに芽生えた正義の心の数だけ、悪の心もまた芽生えていった。どのような理想を掲げたところで、何を為したところで、戦いが終わる事などなかったのだ。

 悪を打ち滅ぼそうと勇ましく振り上げた拳も、最後には、慟哭と共に地面を殴りつけていた。

 彼らが辿り着いた結末は、彼らが追い求めていた理想の未来とはかけ離れたものだった。


 例えば、この少年の場合はどうだろう。

 その少年は元々凡庸だった。戦に臨んでも、そこで名を馳せる事などはありえなかった。

 自分の判断が自分の生死に直結する――それだけの力量を、彼は持ち合わせてはいなかった。

 戦を生き残れるか、あるいは命を落とすか。彼にとっては全てであろう事が、ほとんど運によって決まる。その程度の人間だった。

 世界はおろか、自分の周囲を変える事さえままならない。そして何より、自分自身すら満足に変えられないような、矮小な人間だった。


 それがある日、一変した。

 その日から、彼は英雄になった。その手で未来を掴み取る勇者に、戦いで名を馳せる戦士に、世界を変える偉人に。

 彼にとっては、それで全てが変わったようなものだった。

 今までの自分とは違う。自分は絶大な力を手に入れた。今までの自分には成し得なかった事も、今なら実現出来る。

 どこにでもいるような凡人から、歴史に名を残すであろう英雄へと、彼は変わった。


 しかしその時の彼はまだ、自分が巻き込まれた渦の正体に気付いていなかった。

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