第14話 ハロウィン仮面敗北! どうする正義!?
ハロウィン仮面田中正義は普通の求職者である。彼を襲う暗黒軍団ダークは世界制覇を企む悪の秘密結社である。ハロウィン仮面は人間の自由のためにダークと戦うのだ!
ハロウィン仮面の着けていた仮面は勢いよく剥され、その素顔が大衆の前に晒される事となった。人々はざわめいた。
「くっ……くそおっ!」
正義の心は悔しさとみじめさでいっぱいになった。近頃世間を騒がせている不審者が自分である事がばれたからではない。よくわからないが、今まで隠していた素顔を無理矢理晒された事が屈辱的でしかなかった。何なのだこの気持ちは。
「ハロウィン仮面は死んだ」
マウスはそう言って正義を放った。
「……」
周りを見ると、皆が正義の顔を見つめていた。正義もきょろきょろとその顔を眺めていた。
「……」
まるで捕獲された宇宙人を見るような目だ。
「……」
俺はこれからどうなるんだろう、そんな事すら今の正義には考えられなかった。完全に思考が止まっていた。
しかし、人混みの中に母の姿を見た瞬間、再び彼の脳は働き始めた。
「……ま……正義……!?」
「……! ……あ……ああ……!」
よりにもよって、一番見られたくない人に、見られた……母親に!
「そ……そんな……正義が……!」
「ち……違うんだ母ちゃん! これは……!」
その時、人をかき分け警官が正義の前に現れた。
「な、何なんですかこの騒ぎは!」
「おお、警官か」
マウスは少しも動じずに答えた。
「見ろ。不審者の正体だ」
マウスは先ほどまで正義がかぶっていた靴下を警官に見せる。
「な……この男が……!」
「ちょっ、ちょっと待って! お巡りさん! このハチ男の方が明らかに怪しいだろ!」
「いやー、演劇の練習をしていてなー」
「なっ!? あからさまな嘘つきやがって!」
「だそうだ。ここに君以外に怪しい人物はいない」
そう告げると警官は正義の左腕を掴んだ。
「くっ……くっそおおおおお! 悔しいけど認めるしかねええええええええ!」
こうして彼は警察署へと連行されてしまった。
「ちくしょお……!」
留置場の中、一連の取り調べが終わった正義は畳に寝転がった。ついに、恐れていた事態が起きてしまった。これで俺も晴れて犯罪者というわけだ。
「……母ちゃん、大丈夫かな……」
ふと母の事を心配する。俺のせいで迷惑かかってなきゃいいけど……絶対かかってるよな。というか、息子が不審者だと知って、どういう気持ちになったんだろう……。
「俺、これからどうなるんだろうな……」
裁判を受けて、適当な有罪判決受けて、刑務所に入って、一生懸命労働して、それで何とか出所して、前科持ちで一生を暮らしていくのか……。
って、そんな事やってていいのか? その間にダークはどんな事をしでかすかわからないんだぞ?
「……!」
正義はがばっと起き上がった。こんな所で寝ている場合じゃない!
「……!」
でも、どうやってここから出る? 都合よくおっさんが助けに来てくれたり……しねーか。うん。100パーないわ。ていうか、俺が捕まった事すら知らねーんだろうなあ……。
しかし、幸運は思わぬ時にやってくるものだ。その時正義の部屋の扉が勢いよく壊された。
「!? 何だ!?」
中に飛ばされて入ってきたのは警官だった。
「……!? 何だ何だ!? 何が起こってるんだ!?」
だけど、これはチャンスだ! 彼はすかさず部屋の外へ出た。廊下の向こうに見覚えのある人物が走っていた。
「鈴木!」
クリスマスクは正義の声に気がついたらしく、振り向いてくれた。彼もこの警察署に連行されていたのだ。
「……田中? どうしてお前がここに」
「正体がばれて捕まっちまったんだよ! それより、さっき俺の部屋に警官をぶっこんできたのお前だよな!?」
「ああ、悪いか」
「いや、助かった。おかげで出られた」
「そうか、なら行くか?」
「今の俺はシステムを起動できねーけど」
「俺ひとりで十分だ。もう慣れてるしな」
「お前毎回こうやって逃げてきてたんだな」
だけど、こいつのおかげで助かった……かも。まだ安心はできねーけど。正義は英雄の後について行った。
クリスマスクはスピードが上がるだけで攻撃力は上がらないんだろ? と思われるかもしれませんが、システムを起動している時点で素の人間よりもステータスが上がっているという事をお忘れなく。特に説明してませんけどわかりますよね?