6「為人」7「色物」
ここからはかなり落ち着いてなだらかにかつあっという間に終盤に向かいます。
当時作った時は、読み手のことを考えて最小限に留めましたが、
ほーんの少しだけ文学(学んだことないため口にしていいものか)、
哲学的要素を織り交ぜています。
結果的にタイトルの数字や章を間違えましたが、タイトルの数字は良かったかも。
6のタイトルは好きな言葉で聞かれたら即答出来るくらい好きだったので。今回の話の6は…お察しが付く方は少ないかもしれませんが、それを踏まえて読んで頂ければ嬉しいです。
1 三票 2 五票 3 四票 4 三票 5 三票 6 四票 7 四票 8 三票 9 九票 10 四票 11 八票 12 九票
休憩時間から次の投票時間にかけては、本当にあっという間だった。
事の顛末から話したしても、上手く話せるかどうかさえ怪しい。
12は発狂していた。
票を見た瞬間だった。この時間にもらえなかった一票は、
12にとって、致命的なダメージになってしまったようだ。
たった一票が、ここまで人を狂わすものか。。。
と考えたが、すぐに辞めた。
最初に一票もらえなかっただけの自分と重ねると、憐れに思えたからだ。
過去Xと呼ばれていたその人は、
この時間は正義の象徴として讃えられている。
ヒールと思われていた人が、悪役をやっつけたのだ。
これ以上かっこいい画はない。
老若男女誰が見ても分かり易い、勧善懲悪だった。
本人は納得していないようだった。
終始、表情にあらわれていた。
行き場の無い気持ちのやり様に困っているように見えた。
このセリフだけは覚えている。
金の亡者になりたくない。
人として在りたいだけ。
9がさっきの時間の最後に言っていた言葉が少し理解出来そうだった。
12はただもうひたすら票を入れることしか出来ない。
さっきの2さんの話には唯一耳を傾けていないように見えたが、
それは間違いだった。
今回の悪役である12が出来ることは、
自分とは対になった正義に、
貢ぐことしかもう出来ない。
バカの一つ覚えに思われても。
更なる負債を背負わないように。それだけ。
皮肉なもんだ。ここでゲームを辞めたところで、
他の11人が組織として機能しつつある以上、自分にツケが回ってしまうから。
自業自得。言っちゃえばそれまでだ。
ぶっ続けで心身ともに疲労を隠せない皆は、
次の時間を休憩時間に充てようと言う話で固まりつつあった。
2さんはさっきと同じ調子で、投票の指揮をとった。
12は、何も言わないし、言える立場ではない。
2さんは、そんな12の気持ちを汲んで、次の投票に反映させるように努力してた。
今思えば最初から。
自分は、
頭の中のモヤモヤを解消したいし、
少し考えることも辞めたいし、
天秤にかければいいだけだ。
12は、創始者の指示通りにやったとか何とか言っていた。
もやは言い訳やたわごと以外の何者でも無かった。
9は、
もう、
とてもつまらなそうに見ていた。
冷やかな表情を浮かべ、
邪険に扱うようにさえ見えた。
すごく印象的で、途轍もない寂しさを覚えた。
感情の無い人はいる。
それ以上も以下もなくただ時間に対して生かされている人。
でも、
一度はちゃんと大事にしてた感情ってものに、
嫌気が差して、
今は感情を持つことを辞めた人もいるかもしれない。
でも、
その行いが悲しいと思うのはただの偏ったこっちの価値観なんだ。
自然に取捨選択したカタチに過ぎなくて、
本人の行き着いた答えなのだから。
俺のただの綺麗事が、
その正論に、
ケチの一つもつけられるはずがあるわけない。
でも、こうしていつ無くなるか分からない感情を、
まだ持ってる人だっている。
なくならないように。
だからまだ、
伝えてく方を選ぶ。
感情は伝えるためのものだって。
人としてあるべきはそうなんだって信じてまだ諦めていない。
それが、
感情を持たなくなった人が、
また信じることを選べる唯一の可能性と決めつけて。
それが答え。
投票を終えた。
6「色物」
1 五票 2 五票 3 五票 4 五票 5 五票 6 五票 7 五票 8 五票 9 九票 10 五票 11 八票 12 九票
休憩時間から、次の投票時間までは、各自、自由な時間が与えられた。
エコノミー症候群を気にしながら、一度だけ思いっきり体を伸ばし、直ぐに座った。
後は頭の中で考えていた。
束の間の安心と、
後は、
9と、
2さん。
負債を背負う恐れは、無くなりつつある。
ほぼ100%、無いだろう。
もうゲームとしては、不成立なのかもしれないが、
ここにいるほぼ全員が望んだ結果だから…こうなったはず。
間違いない。
俺は、助かったんだ…
9に、
助けられたんだ。
9は、何を思ってしたかは分からない。
今だって寝ているし、
でもさっきは面白かった、と答えていたし。
俺には9が限り無く灰色に見えている。
9は、
独自の考えで、
シロとクロ、と表していた。
自分たちの事。
証明して見せた。自分の力一つで。
俺はただそのお零れに預かっただけ。
そして、
2さんが救ってくれたんだ。
2さんもまた、
証明して見せた。自分の行動で。
他の人さえもシロと信じ切っていた。
力を貸し、時には借りて。
何て人だ。
9や2さんとの共通点を挙げれば結構多い。
何の因果か、始めにゼロ票だった者同士。
9は6を反転させればなる数字。6と最小?公倍数が一緒。
2さんは祝日が無い月に生まれて、6と最小、公倍数?が一緒。
9は置いておこう。
2さんのこと。
2さんは、大きな愛情に満ちている。
2さんから溢れ出た愛情に俺はすがっているだけ。
哀れな、自分の世界の、救い人。
2、3回目に、2さんは俺に票を入れてくれた。
俺も2、3回目は2さんに入れた。
その意味はまるで違う。
見返りを求めていたんだ。
自分を肯定することに必死だった。
情けなくなるだけだ。
情に厚い2さんが羨ましい。
2さんはずっと続けていくだろう。
周りの人々に、優しさを教え続ける。
でも、
本人はその意味さえも気付けやしない。
そんなもんなんだ。
だけど、
もしかしたら、
2さんは、これから先、
無意識で他の人を救う事に心血を注ぐあまり、
自分のことをおろそかにしてしまうのでは。
と。
他人を嫌うくらいなら、
自分を嫌いになってしまう。
それだけ心配になった。
そういうきらいがある人だろうから。
そんな時がもしあれば、
全力を持って止めたい。
身を呈しても。
それこそがあなたがしていた行いだったと、言いたい。
勝手に神格化させてしまっている2さんのこと。
でも、2さんのような優しい人になりたい。
これ以上考え出すときりがない。
きりがない理由を考えるだけで、今の気持ちを越える。
危険に思った、サトラレが居たらと思うと。
本人に知られたら、と思うと、
そして、自分自身。
色々と危険だ。
無理やり思考を停止させた。
投票を終えた。
7「剣呑」




