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恋愛にかまけるヒロインを横目に属性聖騎士を重機代わりにこき使っていたら、なぜか全員に求婚されました

掲載日:2026/04/09

 ここは乙女ゲーム『聖なる乙女と八人の騎士』の世界。そして私は、ヒロインを苛めた末に処刑される悪役令嬢……に転生したロクサーヌである。


「素晴らしいわ、ヴァルフレイド様! これぞ私が求めていた『究極の産業廃棄物処理班』よ!」


 本来なら隣国との戦争でピンチを騎士に救われる「運命の邂逅」イベントが発生するはずの戦場。

 だが、私は漆黒の鎧を纏った男の隣で、この世の春のような満面の笑みを浮かべていた。目の前では、かつて「難攻不落」と呼ばれた敵国の城塞が、底なしの闇に飲み込まれ、一瞬にして広大な更地へと変わっていく。


「……ロクサーヌ。この『闇の聖剣』を、ただのガレキ撤去のためだけに放てばいいんだな?」

「そうよ! 貴方の闇は万物を無に帰す。占領地は瞬時に大規模物流センターへ作り替えられるわ。さあ、恋の闇より、この国の経済を回す『光』になってちょうだい!」

「……破壊しかできなかった俺に、建設という役割をくれるのか。……君のために、使い尽くしてみせる!」


 視界の端で、彼の好感度ゲージがカンストして粉砕されたが、私は「更地面積100ヘクタール達成」というリザルト画面にしか興味がなかった。

 私にとってこれはもはや乙女ゲームではない。「内政と戦争を極める超大型シミュレーションゲーム」だ。私は恋愛イベントをすべて「公共事業」へと変換した。

 雷の聖騎士・ライトニングとの『図書室イベント』は、街中の照明を賄う「24時間魔力供給」へ。彼は「初めて無駄じゃない放電ができた」と感動に震えていた。

 風の聖騎士・ウェンティとの『雨宿りイベント』は、巨大風力発電タービンを回す「産業革命の動力」へ。彼は「自由な風に使命が与えられた」と恍惚としていた。

 地の聖騎士・ガイアとの『月夜の散歩イベント』は、岩盤を粉砕する「トンネル掘削」へ。彼は「破壊衝動がインフラ整備に昇華された」と目を輝かせていた。


「ふふ……領内に属性の偏りが全くない、素晴らしい安定度合だわ。あちらの候補の領地が育っていないのは、イベントデータの不具合かしら。まあいいわ、効率の悪い相手は無視安定ね」


 そして迎えた最終審査の日。王宮の謁見の間で、アリアは花冠を揺らしながら無邪気に笑った。


「ねえ見て! 聖女はみんなに愛されるのがお仕事なんだよ! 数字とかドボク? なんて難しいこと、しなくていいんだよ。ほら、私の領地にはこんなに可愛いお花が咲いたんだよ!」


 しかし、背後の遠隔映像に映し出された光景に、貴族たちが絶句する。


「……なぜ、ロクサーヌ領の税収が三桁違うのだ?」

「あの煙突……国家規模ではないか? 街じゅうが光り輝いているぞ……」


 アリアだけが、その温度差に気づかずにはしゃいでいる。


「ロクサーヌ様、そんな黒い煙を出してどうしたの? びっくりしちゃうよね! さあ陛下、判定して! 私のほうが愛されてるって、みんなに教えてあげて!」


 国王は苦虫を噛み潰したような顔をしたが、アリアはなおも畳みかけた。


「だって、騎士様たちは私のことが好きだもん……! 優しいお花に囲まれてる私のほうが、聖女さまにふさわしいに決まってるよ!」


 国王は深い溜息をつき、冷酷な現実を突きつけた。


「……本試験の評価基準は領民の生存率・税収・持続性である。ロクサーヌ領は大陸随一の経済圏を確立。対してアリア領……民は飢え、貴殿の衣装代で財政は破綻。アリア様。貴女の領地、今期中に滅亡予定と評価されている」


「え……? メツボウ……? やだよ、嘘だよ! 騎士様たちは!? ねえ、助けてよ!」


 アリアが騎士たちに縋りつこうとするが、彼らの視線は氷点下だった。


「愛だけでお腹が膨れるわけないわよね。アリア様、貴女の領民は今、我が領地へ続々と移民しに来てるのよ。経営破綻ね」


 アリアは絶叫し、その場で崩れ落ちた。聖女候補の資格は剥奪。彼女に待つのは、積み上がった負債を一生かけて返済する「リアル苦行クエスト」だ。

 溜飲を下げる貴族たちを余所に、八人の聖騎士が私を囲み、一斉に膝をついた。


「ロクサーヌ、この指輪を受け取ってくれ。君の領地の『永久動力源』として、俺を一生そばに置いてほしい」

「いや、俺の『雷』こそが君の作る通信網の心臓となる。……俺を、君の夫にしてくれ!」


 差し出されたのは、時価数億エルの巨大な魔宝石。それを見た瞬間、私の脳内計算機が弾き出した結論はこれだ。


「結婚? それって『24時間体制・解雇条項なし・魔力提供の終身独占契約』のことかしら? 素晴らしいわ! この魔宝石を触媒にすれば、来期予定している『空飛ぶ巨大母艦』の建造コストが40%カットできるじゃない! みんな、最高の事業提携相手パートナーだわ!」


 私が満面の笑みで握手を交わすと、彼らは「ああ……一生搾り取られたい!」と、恍惚の表情を浮かべた。


(はっ! ちょっと待って、全員落ちてる場合じゃないわ! 攻略対象を全員専属インフラ担当として囲い込んだら、我が領地の軍事・エネルギーシェアが100%になって独占禁止法に抵触しちゃうじゃない……!)


 恋愛フラグをすべて「利権フラグ」に叩き折った悪役令嬢は、愛の告白すらも「設備投資」として受理し、今日も元気に神ゲーを攻略し続ける。

 帳簿という名のスコアボードをめくりながら、私はふと窓の外を見た。


(あれ……この大陸、もう攻略しつくしてクリア後やり込みフェーズに入ってない? ――よし、次はこの隣の大陸ね。DLC扱いか何かかしら?)


 ロクサーヌの飽くなきゲーム攻略は、まだ終わらない。

お読みいただきありがとうございました!

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