表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
拝啓 あの日の私へ  作者: 文月黒


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/2

2.私、入院するってよ

 そんなこんなで緊急入院が決まった私。

 ちなみに入院したのがバレンタインデーで、血液の病気だったので、うちではこの日を『血のバレンタイン』と呼ぶことがある。誰がユニウスセブンだ。

 閑話休題。


 慌ただしく入院の準備をして病院に戻った後、両腕に点滴を繋がれて(しかもこれ常に繋ぎっぱなしの点滴である)個室で一人眠れぬ夜を過ごす、かと思うじゃん?

 白血病なんて突然言われて不安で眠れないと思うじゃん?

 あと両腕に点滴なんてされてたら寝返りも打てやしないし、そもそも点滴に慣れなくて寝れないと思うじゃん?

 翌朝、看護師さんが来て採血や検温の際に「大丈夫? 少しは眠れた?」って確認するくらいだもの、眠れなくても全然不思議じゃないっていうかそっちの方がスタンダードなんだろうなって思うじゃん?

 朝まで何の問題もなく爆睡した私はなんだか照れてしまって、声小さめに「眠れました」って答える事しか出来なかった。意外と寝れる。

 個室だったし部屋の空調とかベッドとか想像以上に快適で、朝までぐっすりだった。個室すげぇや。

 深夜に看護師さんが巡回してたことすら気付かないくらい爆睡だった。ただ神経がごんぶとだったのかもしれない。


 その後、両腕に点滴あるから食べづらいなと思いながら朝食を終えて、一人きりの病室でしばらくぼんやりしてたら病棟の看護師長さんが挨拶に来てくれた。

 看護師長さんは「黒さんが一日でも早く元気になれるように、病棟の看護師みんなでサポートしていきます。不安なことも多いと思うけど、何かあればすぐに言ってください」と言って、私の病気の説明と、私の現在の状況がプリントされた紙をくれた。

 看護師長さんが部屋から出ていって、私は一人きりの静かな部屋でその紙を何度も読んだ。

 何故だか妙に目が滑ってなかなか頭に入ってこない。

 その内に、紙に何滴かの水滴が落ちた。

 やべ、鼻水垂れたわ。そう思って鼻に手をやったけど違った。

 紙に落ちたのは涙だった。

 白血病になったことに驚きはしたけど、治療法の確立している病気だし、専門の先生がいる病院に入院出来てるし、別に悲しいとか絶望感は微塵もなくて、早期にわかってラッキーくらいに考えてたのに。

 身体も別に苦しくもなんともないし、ちっとも悲しくないのに涙が出て止まらなかった。

 ただぽたぽたと涙が流れていた。多分びっくり涙とかだと思う。自分が泣いてることに一番びっくりした。

 紙に落ちた涙を見て、私は家族や看護師さんが部屋に入ってくる前に涙を止めなきゃとひたすらに焦っていた。


 その時の私は、二十一歳のただの小娘であった私は、全然平気なんかじゃなくて、何にも受け止めきれていなくて、今までなんだか全てが他人事のように感じていて、こうして書面で現実を突き付けられてようやく自分の置かれた状況を理解したのだと思う。


 ──私は、白血病になったんだ。


 そこで妙な覚悟のようなものが生まれた。

 なってしまったもんは仕方がない。第一、白血病なんか防ぎようがない。

 まぁ、治療とかよくわかんねぇけど推しの存在で多分乗り越えられるんじゃねぇかな!

 簡単に言うとこんな感じである。

 アホ過ぎるなと思った方、奇遇だな。私もそう思う。二十一歳の私、恐れるものが何もない。

 なまじ身体に不調がなかったので強気もいいところである。

 もしもどこか痛かったら「私はもうダメです」って打ちひしがれた狸みたいな顔してたと思う。

 ここで自分の境遇にしょんぼりしながら涙を流して悲嘆に暮れられなかったので、入院二日目にして私にヒロイン適正はないことが証明されてしまった。なんてこった。


 ここから部屋も個室から大部屋になり、一気に入院感出てきたわ〜なんて思ってたら、主治医からなんかすぐ化学療法始めるとか言われて「あれ、早期発見じゃないの?」と思ったり、発熱の度にウイルス感染かどうか培養検査?するために採血されまくったり、首からカテーテルを入れて抗がん剤を入れると説明されて全く意味がわかんねぇや!(開き直り)と思ったり、長期入院するからしばらく遊べないよと連絡した幼馴染から泣きながら電話がかかってきて「ははは、何泣いてんの?誰か死んだ?」と最悪なジョークを言ったりしたが長くなるからその辺は割愛。


 でも首から中心静脈カテーテル入れるために入院してる部屋のベッドの上でプチ手術みたいな状態になってる時に、私の胸にメスとか入れる銀色のトレイ置かれたことは一生忘れないからな。

 気付いた看護師さんが「先生、そこはちょっと……」って言ってくれた時に「あぁ、すみません。平らでちょうど良かったので……」って言ったの忘れないからな!!!忘れない!から!な!!!

 ……泣いてなんかないやい。



 そうそう。ここで私が長期入院の為に用意したものを紹介したい。

 なお、下着類等、一般的に必要なものは割愛する。


 ・ファッションウィッグ

 入院時に用意しておく必要はないが、化学療法があるのでいずれ必ず必要になる。

 私は当時コスプレも嗜んでいたので、既に自分に合わせてカット済みのファッションウィッグを持っており、それを持っていった。

 人毛の医療ウィッグではなく普通の耐熱ウィッグ。

 手入れが楽なのでロングウィッグよりショートがいいと思う。私は黒のショートウィッグを持参した。ロングは手入れが面倒。

 ウィッグまで用意するのはちょっとなーって時はとりあえずニット帽被っておけばいい。しばらく院内から出られないしそれで十分。


 ・筆記用具

 オタクなので筆記用具があれば永遠に暇潰しができる。

 日記でも書くかと思ったが毎日同じ事の繰り返しだったので三日で飽きた。

 もう少し細かく書いてくれていたらこのエッセイももっと生々しく書けたのに。

 あの頃になろうに出会ってたら更新スピードエグかっただろうな。


 ・音楽プレーヤー

 今はサブスクでスマホだけあれば色んな音楽が聴けるけど、私の入院する病棟にはその当時Wi-Fi設備がなかった。

 眠れない時や気を紛らわせるのにものすごく活躍した。

 朝5時前から活動開始する同室者とか夜中にお経唱え続ける同室者とか、入院生活はマジで同室者ガチャなので。

 ただし音漏れは要注意!


 ・推し

 何はなくとも推しは必需品。

「推しの顔見てたら元気になる気がする」という直感が私に持たせたもの。

 結果的にものすごく心の支えになった。

 私が持ち込んだのはゲームの画集だった。

 ありがとう。戦国BASARAと戦国BASARA2。ありがとう前田慶次(CV森田成一)。ストーリーなら戦国BASARA3の緑ルートが好き。一生推す。


 ・タオル

 主に枕の上に敷く。

 熱が出て汗をかいたり、抗がん剤治療で髪が抜けたりするので必須。髪がないと汗だらっだらに流れる。

 バスタオルもあると良い。


 ちなみに髪が抜けたらシャワーを浴びる時に頭は何で洗うのかと聞かれた事がある。

 私は洗顔フォームで洗った。毛より皮膚の面積の方が大きかったからね。何となくだけど。

 初期の頃は二十四時間ずーーーっと点滴をしているし、腕を保湿する為にハンドクリームとかスキンケアできるものがあるといいかもしれない。

 なんかやたらカッサカサになる。


 推しの画集に限らず、自分で自分の心を鼓舞出来るものは一つだけでも持ち込んだ方がいいと思う。

 もちろん自分の免疫力が赤ちゃん以下のほぼ0になる病気なので、持ち込む物の衛生状態はかなり気にしなければならないが(古本とかはやめた方がいい)、治療の苦しみは自分一人で耐えるしかない。

 何でもいいから気分を上げていかないとどこまでも落ち込んでしまう。

 まさに自分の機嫌は自分で取るというやつだ。

 私はとても単純なので、縋るものがあるだけで心持ちが全然違った。

 途中から病室にゲーム機持ち込んで動く推しも堪能したし、巡回の看護師さんに「夜更かししてないで早く寝なさい!」って怒られたりもした。

 総じて推しはおすすめ。


 ちなみに私はこの入院生活で左右の手にそれぞれ点滴棒を持ってスムーズに移動する術を会得したが、その後使う機会はなかった。

 まぁ、そんな機会ない方がいいんだけど。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
投稿感謝です^^ 物理的にも心理的にも実用的なアドバイスありがとうございます。 >推しの存在で多分乗り越えられるんじゃねぇかな! >総じて推しはおすすめ。 推しは人生の推進力です! という冗談?オ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ