12月7日~9日 泰香・駿の話す竜海(杏菜を通して)
12月7日
泰香ちゃんに話を聞けました。泰香ちゃんは、竜海の退学した後に、うちの高校に入学しているので、竜海のことは、あまり知りません。でも、杏菜ちゃんのことはよく知っていました。泰香ちゃんは、杏菜ちゃんの最近の様子を聞こうとすると、警戒心を持ったようでした。「杏菜は、近所なだけだし、てか、何でそんなこと知りたいの?」など、私に聞いてきました。私は、竜海のことを調べていると言っても、泰香ちゃんは納得しないと思い、杏菜ちゃんと久しぶりに会いたくて、様子を知りたいと答えました。すると、泰香ちゃんは、「杏菜は、もう大学で友達いるし、そっちで楽しくやってるみたいだから、中学時代のことは思い出したくないんじゃない」などと言ってきましたが、私が粘ると、「まあ、近所の人みんなが知っていることだけなら」と話してくれました。以下がその話です。
杏菜は、中3で退学したでしょ。その後、暫く引きこもりみたいになってた。杏菜のお父さんとお母さん、特にお母さんは、小学校でもPTA引き受けたり、まあママ友の中では幅利かせた存在だったから、杏菜が引きこもりになってからすごく暗くなってた。杏菜が優等生で、成績優秀ってことが、おばさんのプライド、マウントの源だったからね。おばさんも、引きこもりみたいになってたよ、一時期。よくスーパーで、仕事終わりに惣菜を買っている杏菜のお父さん見た。まあ、私がレジのバイトしてたから、よく目に付いただけかもなんだけど。
子供?ああ、いるよ。小さい子。杏菜の弟ってことになってるけど、まあ、近所で噂はあるよね。だって、杏菜が引きこもっている時に生まれた子だからね。退学の原因も、杏菜が妊娠したからだって話題出す人、未だにいるし。でも、まあ何の根拠もないよね。だって、おばさんも引きこもってたから、その間に生まれてたかもしれないじゃん。
えっ、私がどう思うか。そんなの、分かんないよ……。分かんないけど……、おばさんの子供なんじゃないの?だって、杏菜、あの時、まだ15歳だったんだよ。そんなの子供が子供産むようなもんじゃん。
泰香ちゃんは、話が込み入ってくると、「そんなにいろいろ知りたいなら、本人に聞いた方がいいでしょ」と言って、「杏菜に連絡とりたがっている人がいるって伝えとく、もし杏菜も連絡しようってなったら、その時に連絡先も伝えとくから」とも言ってくれました。
幼い子供と生活している杏菜ちゃんに手間をかけさせるのは悪いけれど、もうここまで来たら、杏菜ちゃんに話を聞かないとどうしようもないと思っています。
12月9日
見知らぬ番号から電話がかかってきました。杏菜ちゃんかもしれないと思って出ると、男の人の声で驚きました。以下、その時の会話です。
私「もしもし。」
「……。」
私「もしもし。」
「……。」
私「もしもし。もしかして、杏菜ちゃん?」
(男の人の声で突然)「何で杏菜のこと調べてるんだよ。今更!」
私「えっ。私、杏菜ちゃんの中学生の同級生で、どうしてるかなと思いまして」
男「どうせ子供のこととか、噂とか、そんなんだろ!ほっといてくれよ。」
私「あなた、誰なんですか。」
男「俺は、杏菜の彼氏だよ。」
私はこの時、竜海本人が電話をかけてきているのかと、一瞬思いました。でも、こんな感情的な言葉遣いをするタイプの人ではないとすぐに気付いて、打ち消しました。でも、本当に、ほんの一瞬だけ、私は、竜海と話せているのでは、と期待してしまったのです。
私「彼氏?」
男「そうだよ。」
私「……。いつから、杏菜ちゃんと付き合っているんですか?」
男「はぁ?何でそんなこと聞くんだよ。」
私「竜海……、知ってますか。」
男「……。」
私「話、聞かせてもらえませんか。私、竜海のこと、知りたいんです!」
男「何なんだよ、ほんと。やっと、あいつと離れられたと思ったのに。そもそもお前、竜海とどういう関
係なんだよ!」
私「友達です。」
男「嘘だな……。お前、俺のこと、覚えてないのかよ。」
私「えっ?」
男「駿だよ。竜海と同じ小学校。」
「駿」。私は、その名前をどうにか思い出しました。そうです。あの「駿」です。杏菜ちゃんのストーカーのようだった男。中学受験に失敗して、竜海を恨んでいる風だったあの人。駿は、私とも知り合いでした。小学生の時、塾で、一時期同じクラスだったのです。いつも、成績トップの子の悪口を端の席で言っている、そんな少年でした。その人が、どうして今、杏菜ちゃんの彼氏になっているのでしょうか。噂の子供とは、どういう関係なのでしょうか。駿は、「お前みたいなやつは、竜海って人間を誤解している」と言いました。その「誤解」を解消するためなら、会ってやってもいい、とも。
とりあえず、週末、駿と会います。
続く




