表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
竜海日記  作者: 梅子
17/19

12月24日 いずみさんの話す竜海

12月24日

 今日は、クリスマスイブということもあり、都合が悪いのではと思いましたが、構わないというので、「施設の人」に会いに、彼女の家に行きました。彼女は、60代後半から70代前半に見えました。しかし、実際に話を聞くと、80歳を過ぎていると言われ、驚きました。もともと中学校の校長先生をしていたそうです。その人は、定年後に、パートのような形で、施設で働いていた時に、竜海と出会ったと言いました。彼女は、竜海を「竜海君」と呼びました。

 竜海君はね、本当に大人しい子でしたよ。前評判がとっても悪かったでしょ。どんな子が来るのかなって思ってたら、静かで頭が良くて、礼儀正しい子が来たから拍子抜けしたくらいですよ。それにしても、看護師さんが実のお母さんっていうのには、驚きましたね。あの看護師さんね、愛想はないけど、真面目な人だったわ。きっと何か深い事情があったんでしょうけど、施設から強引に竜海君を引き取ってしまって……。うまくいくのかなー、うまくいってくれたらいいなーなんて老婆心に思っておりました。お医者さんでお金持ちのおうちって聞いたからね、きっと環境だけは、良いわよねって。

 だけど、案の定と言うか、こんな言い方は無責任ね、でも何となく予想していた通り、竜海君、家を飛び出してしまったみたいね。ある日、施設に来て、私を呼ぶんですよ。私が、「竜海君、どうしたの?」って聞いたら、重そうなリュックを私の前に置いて、「ここに、3000万円入ってる。」って言うんです。冗談かと思ったけど、平気な顔しててね。どうも本当だって分かりました。私、心配になって、「どうしたのよ。そんな大金……、おうちの人は知っているの?」って聞きました。そしたら、竜海君、「母親の夫から貰ったんだ。これで僕は、もう誰の子供でもないんだよ。」って言って、小さく笑いました。私が説明を求めようとしたら、竜海君、「いずみさん(私の下の名前です)にはお世話になったから。挨拶だけはしようと思って。」と言って帰ろうとするんです。よく見たら、歩く時、足を引きずっているじゃありませんか。「待って」って、私、言いました。「足どうしたの?」「もう治らないんだ。この3000万を貰った理由だよ。」って、また平気な顔で言うんです。本当は、施設の人間が、子供とあんまり個人的な関わりをしてはだめなんだけど、こんな子ですよ。心配でしょ。しかも、私なんて、もうおばあちゃんで、首になってもねぇ、関係ないでしょう。だから、私、自分の電話番号を、竜海君の手に握らせましたよ。「竜海君、私、心配だからさ、気が向いたらでいいから、困った時に連絡してよ。」って。そしたら、竜海君、一瞬そっぽを向いて、何か独り言を言いました。よく聞こえなかったけど、多分、「親でもないのに。」と言ったんじゃないかしら……。私、竜海君に施設に戻らないかも誘いましたよ。竜海君、「もう施設はごめんだよ。」って言いました。意思の固そうな顔でね。私、よっぽどこの家に泊めてやろうかしらと思いましたよ。大金持って、ふらふらされるのは、心配でしょう。でも、「行く当てがあるの?」って聞いたら、「まあ、いくつか」って言うから、ここで強引に引き留めても、どうせ出て行くだけかなって思って、送り出しました。

 それから、1週間後、竜海君から連絡が来ましたよ。ある女の子の家で暮らしているって。また、母親の夫に許可だけ貰って、通信制の高校に通っているってね。


続く


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ