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竜海日記  作者: 梅子
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12月23日 罪と竜海③(内省を通して)

12月23日

 私は、竜海の罪について考える時間が必要だと思っています。昨日、あまりに長く竜海の母親の話を聞いて、それを記録したので、私の中で混乱が生じているのは、間違いありません。でも、ここで肝心なのは混乱しているという事実より、それをどう立て直すかです。

 もともと、私は、竜海を愛しているから、このような日記を書き始めました。竜海の理解者であろうと思うする面が多分にあります。だから、竜海びいきをやってしまいます。でも、竜海の罪を理解する必要があると思います。竜海の罪も含めて受け入れることが、竜海を理解するということになると信じています。

 まず、真珠ちゃん。これについては、完全な竜海の罪が認められるでしょう。まず、大前提として、真珠ちゃんは、竜海と関係を持たされた時、中学生になったばかりです。しかも、竜海のことを嫌悪しています。ああ、私はつい、思ってしまいます。竜海と同じ家に住んでいたなんて、妹として、当然竜海の側にいられたなんて、羨ましくて仕方ないと。でも、だめです。真珠ちゃんは、竜海を全く人間として嫌っていたのです。そんな人に、しかも一応、兄である人に迫られた怖さ、誰にも言えなかった孤独。そう、私は、もっと考えるべきです。

 次に、香織ちゃん。彼女だって被害者です。たくさん浮気をされていますし、完全に体目当ての関係を結ばされていたと言えるでしょう。香織ちゃんは、純粋に竜海が好きだったのだと思います。好きな先輩にバレンタインのチョコをあげて、文化祭に誘って、本当にかわいらしい普通の女の子のやることです。竜海が、真剣な考えもなくもてあそばなければ、もっと甘酸っぱい青春の思い出を作ることができていたかもしれません。

 杏菜ちゃん。彼女だって、体目当ての関係に耐えられず、壊れてしまったと言えます。竜海を騙して子供を産んだことは、彼女の罪かもしれませんが、そう追い詰めたのは竜海であると言えます。杏菜ちゃんは、そのために中学受験で勝ち取った生活さえ、失っているのです。しかも、駿と竜臣君を育てている今でさえ、竜海のこと片時も忘れ得ないのではないでしょうか。(本題とは離れますが、私もここまで、人のことを云々するなら、言わなくてはいけません。私は、杏菜ちゃんに嫉妬しています。竜海の子供を妊娠して、出産して、育てるというのは、どういう気持ちがするのでしょうか。杏菜ちゃんは、ずるいことをしました。でも、結果として、竜海の特別な人になったのです。私も、竜海の子供を産んでみたいなんて、思うこともあります。恥じるべきことですが、竜海の罪を明らかにするものとして、自らの罪も告白しました。)

 そうだ、忘れてはなりません。あとは、私が話を聞けなかった子たちもいます。この子たちも、竜海に消費されていながら、噂にもならず、竜海の退学とともに、どれくらい気を揉んだでしょうか。私は、分かる気がします。だって、直接的な関係のない私でさえ、竜海中毒になって、こんなことをするほどなんですから、もしかしたら、未だに竜海を忘れられずに苦しんでいる人が、私の他にも、少なからずいるのではないでしょうか。竜海の母親の話に出てきた、水筒の少女だって、どうして切られた髪をそのままにしていたのでしょうか……。そうだ、塾の講師だって、きっと仕事を追われたでしょう。他の塾の子だって、お金をもらうなんてことで、竜海のいない空白を埋めることができたでしょうか……。

 以上、竜海の罪は、明らかでしょう。それは、人を不幸にすることです。竜海さえいなければ、普通に保たれていた秩序を、いとも簡単に壊して、取り返しのつかない傷を負わせることです。そう、竜海さえいなければ、何の苦しみも生じなかったのです。誰も加害者にも被害者にもならずにすんだでしょう。

 でも、私は、やはり竜海を愛します。そして、探し続けます。竜海だって、実母や、育ての親や、欲望や、拒絶の被害者なのです。でも、もしかしたら、私の本当の罪は、竜海を愛し、記録することなのかもしれません。

 もう今年も終わってしまいます。今年中に何とか、竜海の母親から聞いた、施設の人に、話を聞いてしまいたいと思っています。


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