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竜海日記  作者: 梅子
13/19

12月22日 新しい子と竜海

 ここまで話して、彼女は、白いハンカチで口を拭って、黙ってしまいました。私は、もはや彼女に何か話しかけるのはやめて、彼女の言葉を待ちました。彼女は、何回か意味のない小さな咳払いをしてから、話を再開しました。

 一緒に暮らし始めた時の竜海は、本当に素直だったの。でも、竜海は、またあの乱暴な子に戻ってしまった。竜海が、変わってしまったのには、明確な理由があるの。でも……。すべて仕方なかったの。私たち夫婦は、ずっと子供を持つことを望んでいたし……。

 私は彼女が急に取り乱すので、また少し驚かされました。彼女は、今度は、ハンカチで目を覆いました。泣いているのかどうか、私には、よく見えませんでした。

 あの子が私たちの家に来てから、数か月した頃、私は気分が優れなくなって、もしかしてと思って調べたら、お腹に子供がいることが分かったの。夫はとても喜んで、何かにつけてお腹の子の話をして、いろいろな服とかおもちゃとかを、毎日、買ってきたわ。竜海を迎えることに反対していた、まあ、そもそも私との結婚にも反対していた義父と義母も、やっぱり孫はかわいいんでしょうね、一旦休戦という感じになって、よく家に来るようになった。

 今思えば、竜海がこの時、どんな気持ちでいたか、誰一人、気にかけていなかったの。私は、体調の変化で心も不安定になっていたし、それにお義母さんたちの相手もしなくてはならなかったし……。もしかしたら、竜海は、私たちが気付く前から既に壊れてしまっていたのかもしれないわね。

 受験も差し迫っていた、ある日、竜海が同じクラスの女の子と、塾の授業を抜け出してしまったという電話が来たの。夫は仕事でいなかったから、私が電話をとった。私は、何だか嫌な感じがして、いても立ってもいられなくて塾に行ったわ。取り敢えず、講師に何があったか聞いたけど要領を得なくて、私もう不安で、塾の周りを歩き回った。夫の電話も通じなくて、私、本当にパニックみたいになってたの。寒い日だった。途中で、お腹が痛くなって、私は、救急搬送されたの。

 お腹の子は無事だったけど、夫は、激しく怒ってしまった。竜海は、結局、夜遅くなってから家に帰ってきたのよ。でも、私も夫もいなくて、携帯に入っていた私の留守電と、夫の書き置きをようやく確認して、病院に駆け付けたの。病室に竜海が駆け込んできた時、どんなにほっとしたか分からない。でも、夫がすぐに、竜海を連れて部屋の外に出てしまった。その後、夫の大きな怒鳴り声が聞こえてきたところまでは覚えているの。でも、私は、竜海の姿を見たら気が抜けて眠ってしまったから、そこからのことは知らない。聞いた話によると、夫は、竜海を殴り飛ばしたらしいの。しかも、竜海の実の父親のことまで引き合いに出して、竜海のことをさんざん罵って、竜海の存在を否定するようなことを言ったんですって。竜海は、決してやり返さなかった。夫のことを看護師さんが何とか抑え留めさせて、その場は何とか収まったと聞くわ……。

 ねぇ、その後、私は、夫から竜海が施設に戻されたと聞いたの。だから、もう何も心配はいらないって。安心して僕たちの子を育てられるって。でもね、違ったのよ……。

 竜海は、夫に殴られ、罵倒された後、4階の病院の窓から飛び降りて、意識不明のまま、ずっと同じ病院のベットで寝ていたんですって!

「それで、竜海はどうなったんですか。竜海は無事なんですか。」

私は、気付いた時には立ち上がり、そう叫んでいました。


続く


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