表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

入部希望

初めまして!

かねてより温めていたお話をこの場を借りて形にしていこうと思います!

本格的に執筆するのは初めてですが、優しく見守っていただけると幸いです!

 四月の風はどこまでも澄んでいて、しかし陽の暖かさを宿している。

 午後にもなれば冬の厳しい寒さの名残はなく、草木や花の香りを僅かに含み、様々な物語の始まりを気配を漂わせるようである。


「ふぁーあ。」


 白石燈夜は教室の窓にもたれ、大きく欠伸をした。目に涙を浮かべながら、窓の外を眺める。商店街を自転車で駆け抜ける主婦や下校中の小学生などを横目に、どうやってこのまま掃除をサボろうか考えていた。


「おい、燈夜!大変だ!入部希望用紙の締切、今日までだぞ!まじで何部がいいと思う!?なぁ!何部が1番モテるんだ!?」


 せっかく人が空気となって窓際でサボりを決め込んでいたのに、大声を出しながら近づいてくる男を燈夜は恨めしげに睨んだ。

 入学から1週間が経ったばかりだというのに制服のあちらこちらを崩して着こなし、茶色に染めた髪をこれまたあちらこちらへと跳ねさせているのは近江煌雅である。

 平成のチャラ男をそのまま呼び出したかのような見た目に、さらっと伸びた長い手足と整った容姿が相まってなかなか様になっている。

 しかし、その口から出る言葉はどれも残念なものばかりである。


「煌雅。この世で1番モテるのは家庭科部だ。家事能力が高い男は評価されやすい。それにその見た目で文化部というギャップにやられる女子が続出するに違いない。」

「天才だ!早速用紙を提出してくるぜ!」


 そして残念なのは煌雅だけではない。走り去る煌雅を見送るこの男もまた、冷静に分析している風だが世の常識を捉えられていないのである。

 良いことをしたと満足そうな燈夜は、ぴょこぴょこと動くピンクの髪がこちらへ近づいてきているのに気がついた。


「確かに家庭科部の男子はモテるよね〜。燈夜くんも家庭科部に入るの?」


 ピンク色の髪をした少女は燈夜の前まで来ると、上目遣いで燈夜を見上げながら尋ねた。白い肌にくりっとした大きな目が印象的である。


「いや、俺は入らない。」

「そうなの?じゃあ何部に入るの?」

「あのな、桃。なんでお前そんなに俺に構うんだよ?」


 少女の名前は桃原桃。愛嬌のある顔立ちと言動ですっかり学年のマドンナ枠の1人として数えられている。特徴的な腰まで伸びたピンク色の髪は、どういうわけか地毛らしい。


「えー、いいじゃん!私燈夜が入る部活に入りたい!」


 そして燈夜は、この桃にどういうわけかまとわりつかれていた。

 パンを咥えて走っていたところでぶつかったわけでもなければ、暴漢から颯爽と助け出したわけでもない。入学してそうそうに、課題のあれこれや授業前の準備など、あらゆる場面で燈夜に絡んでくるのである。

 学年のマドンナに好かれて嫌がる男子などいないのだが、そのせいで入学してから一週間も経たずして、他の男子から距離を取られるようになってしまったのである。

(せっかくの俺の青春が、、、!!)

 これが燈夜にとってはいい迷惑であった。


「ねえいいじゃん〜教えてよ〜」


 実を言えば、燈夜は桃に入る部活を教えたくなかった。しかし入部の締切は今日で、しかも受付はあと20分で終わってしまう。

 ぱぱっと掃除を終わらせた燈夜は、仕方なく後ろをついてくる桃を引き連れて部室棟へ向かった。

 部室棟には燈夜たちと同じように入部希望用紙を持った一年生で溢れかえっていた。特に運動部の部室が多い一階は人が多く、人気であることがわかる。

 燈夜たちは2階のさらに1番奥へと進む。文化系の部活が多い2階にはほとんど人がいない。

 いよいよ目的の部屋の前に着くと、桃は意外そうな顔をした。


「歴史研究部、?」

「そう。ここでやらなきゃいけないことがある。」

「じゃあ私も入る!」


 非常に迷惑そうな顔をしながら、燈夜はドアノブへと手を伸ばした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ