第四十四話:憤怒の炎と傲慢の稲妻
ジン・ヴァリオが彼らを導いた秘密の通路は、燃えるヴァル・オリン城の熱とは正反対に、湿っていて冷たかった。
最後の金属の扉にたどり着いたとき、ジンは一瞬立ち止まり、その真紅の瞳で周囲の最後の緊張感を捉えた。
「閃光の街は単なる紛争地帯ではない。二つの罪が同時に放出される場所だ。」
ジンは扉の取っ手に手をかけ、ささやいた。
「火の憤怒と、稲妻の傲慢。
混沌こそが我々にとって唯一の隠れ蓑だが、最大の危険でもある。」
ジンが扉を開けると、焼けたオゾンの匂いが充満した熱風が押し寄せた。
外の光景は、さながら幾何学的な地獄のようだった。
彼らは閃光の街の端にいた。
城のエネルギーを調整するはずの金属の塔と巨大なコンデンサーで満たされた地域は、今や恐ろしい無秩序の中で爆発していた。
青銅の鎧をまとった炎の兵士、イネールの兵士たちは巨大な炎の弾を放ち、一方、稲妻のゼーリックの跳躍は青い閃光へと変わり、その後ろには爆発的な電荷の輪が残された。
前線も後方もなく、戦闘はあらゆる角で繰り広げられていた。
「バランスの領域に留まれ!」
ジンは大きな声で命令し、腕を上げて前方に突進した。
彼が胸に負った真紅の傷跡から、独特なバランスの炎が放出された。
それは攻撃的な炎ではなく、チームを囲む静かな真紅のエネルギーの狭いフィールドだった。
この炎は調整器として機能し、イネールの炎の熱を軽減し、彼らのそばを通過するゼーリックの電荷の速度を遅らせた。
「ザール、第三の目となってくれ。」
カーンはささやき、その赤い瞳は冷静にエリアをスキャンした。
「純粋なニーブリムはジンのお前のバランスの炎を好まない...
それは彼らの弱さを思い出させるからだ。長くは続かないぞ。」
ザールは警告のトーンで答えた。
彼らは爆発の間で慎重に歩みを進め、混沌の中をゆっくりと進んでいた。
彼らが発見されるのに時間はかからなかった。
変形した金属のバリケードの後ろに立てこもっていた巨大な炎の兵士、イネールの兵士が、ジンの真紅のフィールドを見て叫んだ。
「見つけたぞ!裏切者め!バランスの火に邪魔されるな!」
兵士は、カーンに向かって直接、三つの巨大な炎の球を連続して放った。
「レンジ!ウリエル!」
ジンが叫んだ。
「二重の盾だ!今だ!」
レンジは信じられないほどのスピードで前方に飛び出した。
それは単なる肉体的な速さではなく、彼の血管を流れる純粋な稲妻によって推進された速さだった。
彼は青い閃光に変わり、カーンの前に立ち、炎の球に短く集中した雷撃を打ち込み、空中で爆発させたが、完全に止めることはできなかった。
同時に、ウリエルは体内の水のエネルギーを変換した。
彼女が手を振ると、濃密で奇妙な霧がチームの周りに広がった。
それは普通の霧ではなく、水のエネルギーが染み込んだ湿った霧であり、炎の熱を吸収し、電気の電荷の影響を減衰させる役割を果たした。
炎の球の残骸は湿った霧に衝突し、その激しさを大幅に弱めた。
これにより、ジンは影響を受けることなく、バランスの領域を彼ら全員を包むように広げることができた。
「良いぞ!」
ジンは彼らを前進させながら言った。
「カーン!この先、道が遮られているはずだ!」
これは、彼らが初めて真のチームとして、お互いの強みに依存して機能した瞬間だった。
レンジは迎撃の力として、ウリエルは絶縁のカバーとして。
しかし、この霧は、より強く、より危険な注意を引いた。
突然、霧が裂けた。
火や爆発によってではなく、絶対的な速度によって引き裂かれたのだ。
彼らの前に、巨大で恐ろしい存在が現れた。
イリア、ゼーリックの血統であり、稲妻の反乱のリーダーである。
彼の体は凍結した雷のような黒い鎧で覆われ、その目は燃えるようなネオンブルーに輝いていた。
「レンジ!」
イリアは轟く声で叫んだ。
「この汚物は何だ?穢れた稲妻の血が、火の半混血を守っているのか?お前たちはディストラの恥だ!」
レンジはすぐにそのトーンを理解した。
あらゆる混血を汚点と見なす純粋な傲慢のトーン。
それは、彼の父親に死刑を宣告した声と同じだった。
「イリア!彼らに近づくな!」
ジンが介入し、バランスの炎を使って彼の輝きを鎮めようと突進した。
しかし、イリアの方が速かった。
彼はジンに向かって手を伸ばし、彼の胸の真紅の傷跡、つまりジンの力の人間的な部分が最も弱い場所に向けて、純粋な青い稲妻を放った。
ジンはそれを完全に防ぐことができなかった。
彼は押し殺した叫び声を上げ、強く後退した。
彼は膝をつき、真紅の傷跡はわずかに出血し始め、弱く危険な光を放っていた。
チームを囲んでいたバランスの領域は完全に消えた。
「純粋さだけが存在するに値すると言っただろう!」
イリアは、レンジに向かって手を上げながら言った。
「まず、この穢れた者を殺し、それから堕落した火の血統を殺す!
これがゼーリックの裁きだ!」
レンジは凍りついていた。
イリアの言葉に含まれる純粋な傲慢が、彼のアイデンティティの核心を直撃し、彼の稲妻の速度を使う能力を麻痺させた。
カーンはすぐに危険を察知した。
ジンは負傷し、レンジの盾は感情的な葛藤の重みで崩壊した。
怒りや思考のための時間はなかった。
「ザール!」
カーンはささやいた。
「傲慢の稲妻だ!何を浄化すべきだ?」
「それは優越性への絶対的な信念だ、カーン!
傲慢そのものだ!お前が殺すのは力ではなく、意図だ!」
ザールが答えた。
カーンは一歩前進し、灰の石に全てのエネルギーを集中させた。
心臓は激しく鼓動していたが、彼の心は白いページのように冷たく澄んでいた。
彼は殺意ではなく、信念を止めたいと願った。
彼の赤い瞳は、今学んだばかりの純粋な銀色の灰の光で輝いた。
彼はイリアに直接、白い灰で攻撃しなかった。
代わりに、非常に薄く集中した灰色の雲を、イリアを囲む稲妻に向かって放った。
灰色の雲は、輝く青い稲妻に接触した。
衝突して爆発する代わりに、奇妙なことが起こった。
稲妻の色が徐々に薄くなり始めた。
それはイリアの周りで収縮し始め、まるで傲慢の源である速度を失っているかのようだった。
稲妻はもはやランダムな閃光で動かず、彼の体の周りに遅く、閉じ込められた。
まるでカーンが速度の意図を傲慢から浄化したかのようだった。
イリアは痛みからではなく、衝撃から叫んだ。
カーンの力は彼を殺しているのではなく、彼の傲慢への絶対的な依存を剥奪していた。
彼は膝をつき、優越感を与えていた速度を使うことができなくなった。
「何だ、これは?」
イリアはショックを受けてささやいた。
「どこへ...稲妻はどこへ行った?」
「稲妻は残っている、イリア。」
カーンは感情のない声で言った。
「だが、それを導いていた傲慢は...忘れられた。」
ウリエルはジンの方へ駆け寄り、水の力を使って彼の傷跡で燃える真紅の炎を鎮めようとした。
「動くぞ!」
ジンはかすれた声で叫んだ。
「バランスは休養なしには戻らない。
イリアは我々を殺さないが、散らばったイネールの兵士が集まってくるだろう!」
レンジは倒れ込んだイリアに向かって素早く突進したが、彼を殺さなかった。
彼はイリアの頭に素早い閃光を打ち込むだけで、意識を失わせた。
それはレンジのアイデンティティを証明する瞬間だった。
彼は純粋な傲慢の者でも、殺人者でもない。
チームはジンが示した別の秘密の通路に向かって突進した。
彼らは通路にたどり着いたが、それは古い岩のトンネルへと続いていた。
しかし、通路は塞がれていた。
彼らの前には、壁と一体化した巨大な茶色の岩の扉が立ちはだかっていた。
それは打ち破れない岩のように見え、その古代の様相はそれがアルカル(地/巨人)の世界のものであることを示唆していた。
「これはアルカルの罠か?」
レンジは神経質に尋ねた。
「これはアルゴン自身の力でしか動かせない固体だ!
お前が話していた場所ではないぞ!」
ジンは負傷した手を伸ばしたが、バランスの炎はかろうじて燃えていた。
「いや、ここにあるはずがない。
このトンネルは安全だったはずだ!」
カーンは一歩前進し、岩に手を置いた。
彼は熱も電気も感じなかった。
しかし、彼は別の何かを感じた。
岩の声を聞いたのだ。
彼の心の中で、深く巨大な声がささやいた。
「ここが終わりだ。逃げ場はない。大地がお前たちを飲み込む。」
カーンは目を閉じた。
彼の赤い瞳の周りで銀色の灰が輝き始めた。
「これは岩ではない、ジン。」
カーンはささやいた。
「これは音だ。」
「アーカムが我々を監視している。
これは物質的な罠ではなく、音の虚構の罠だ。」
アーカムは今、新しい方法で彼らを試していた。
彼はもはや偽の体を使うのではなく、音の虚構を使って、
彼らがアルカルの力(強欲の罪)に直面していると思い込ませ、
彼らを遅らせ、疲弊させ、過度に力を使わせようとしていたのだ。
「音に耳を傾けるな!」
カーンは断固とした声で命令した。
「ウリエル、湿気を使って音を拡散させろ!
レンジ、お前の速度を使って今すぐ扉を開けろ!」
その瞬間、誰もが理解した。
アーカムとの戦いは、もはや肉体的なものではなかった。
それは知覚を巡る戦いなのだ。
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