第四十三章:緋色の傷跡と閃光の時
広間には、もはや疑念や質問の余地はなかった。
ジン・ヴァリオは金属の壁の前に立ち、手を振ると鋭い真紅の光が灯り、
壁は輝く傷口のように開いた。
そこから、ヴァル・オリン城の立体的な地図が現れた。
地図上の火と稲妻の線は、怒れる血管のように輝いていた。
ジンはきっぱりとした声で言った。
「城の心臓部は、液体化した火の源であるイネール区だ。
だが、我々は今、稲妻の反乱が勃発している閃光の街へと向かう。」
地図上では、青い点が赤い火の線と衝突し、
炎のディストラと稲妻のゼーリックの間で内戦が繰り広げられていた。
ジンは輝く領域を指差しながら続けた。
「アーカムはこの紛争を隠れ蓑にしている。
ニーブリム同士を戦わせ、その間に内部からシステムを掌握する。
イネールの心臓部への直接ルートは閉ざされているが、
閃光の街こそが我々の唯一の突破口だ。」
カイレンは顔を上げた。
その赤い瞳は地図の輝きを映し、まるで炎が自らを読み取ろうとしているかのようだった。
「閃光の街?つまり、我々は処刑場に入るということか。」
ジンは火のような冷徹さで答えた。
「その通りだ。レンジ、お前の父親が稲妻の血を穢した罪で処刑されたのと同じ場所だ。
そして今、我々はそこを自由への道にする。」
レンジは拳を握りしめたが、その顔は平静を保っていた。
彼はもはや過去を恐れておらず、それを盾として利用し始めていた。
カイレンはジンを見て言った。
「我々は憤怒と傲慢の間... 火と爆発の中を進むことになる。
一歩間違えれば、我々は消滅するだろう。」
ジンは奇妙に軽く笑った。
「だからこそ、お前たちがここにいる。
稲妻と炎の混沌の中で、誰も虚構に気づかない。
そして、均衡が完全に崩壊する前に、我々は動かねばならない。」
やがて地図は光を失い、
真紅の光だけが顔を照らした。
まるで広間そのものが、最後の息を吸い込んでいるかのようだった。
ジンは静かに座り、火の鎧の一部を外した。
すると皮膚の下で、真紅の微かな輝きを放つ長い裂け目が現れた。
「英雄として話すつもりはない... 汚点として話そう。」
光が彼の顔に差し込み、その傷跡がはっきりと見えた。
「イネールの血と人間の血が混ざると、**真紅の者**が生まれる。
我々は憤怒の火ではなく、バランスの火を運ぶ。」
レンジが問うた。
「だから、彼らはお前を追っていたのか。」
「そうだ。彼らは人間の部分を取り除こうとした。
失敗したが、この傷跡だけは残った。」
ジンは目を閉じた。
「だから私は姿を消し、アーカムの注意を逸らすために、
お前たちにアリオンを残した。」
静寂が流れた。
三人の息遣いだけが響いた。
ジンは再びカイレンを見て言った。
「イネールの罪は憤怒。アーカムの罪は虚構。
その間に、お前の灰がある――
まだ歴史に記されていない、第八の罪だ。」
カイレンの心臓が激しく脈打った。
「俺が... 罪だと?」
「そうだ。灰は火の終わりではない。記憶だ。
だからこそ、お前だけが虚構を浄化できる。」
ウリエルが進み出た。
「でも、もし彼がその力を乱暴に使ったら?」
「その時、灰は魂なき死灰になる。」
ジンの声は静かだが、燃えるように強かった。
彼は小さな炎を灯し、
「殺さずに、これを吸収してみろ。」とカイレンに言った。
カイレンは灰の石を掲げた。
炎は静かに彼を試すように揺らめいた。
最初は消えた。
だが、再び目を閉じたカイレンが怒りを忘れた時――
灰は炎を包み込み、光を吸い取った。
火は消えなかった。
ただ穏やかに消え去った。
カイレンの瞳が銀の輝きを放った。
ジンは微笑んだ。
「やったな。
痛みを消すのではなく、理解したのだ。」
その瞬間、地面が揺れた。
青い稲妻が天井を突き破り、轟音が鳴り響いた。
ザールが叫んだ。
「閃光だ!ゼーリックが攻撃を開始した!」
ジンはすぐに立ち上がり、隠し扉を開けた。
鉄と灰の匂いが流れ込む。
「これは古い補給トンネルだ。
ここからイネールのエネルギー・センターに向かう。」
カイレンは輝く灰の石を握りしめた。
「行こう。火と稲妻の間を通り抜ける。」
一行は闇へと進んだ。
ジンの真紅の炎が、狭いトンネルを照らす。
壁には古代ニーブリムの紋章が刻まれ、
外の戦音が遠くにこだましていた。
カイレンがふと立ち止まる。
暗闇の奥――そこに歪んだ笑みを浮かべる顔が見えた。
「アーカムだ。」
ジンはうなずいた。
「警戒を怠るな。虚構はお前の記憶を攻撃する。」
そして、彼らは再び歩き出した。
闇の奥へ――
ヴァル・オリンの地獄と、真実の中心へ。
★★★
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